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哲学の塔コミュの第二章6

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 翌日の土曜日、マシュー・ハワースの悪い予感は当たった。
「僕は…観覧車が、子供の時から、苦手で…う、気持ち悪い…」
そんなマシューの言葉も虚しく、アリスとクリスティーヌは、景色を眺めて楽しんでい
る様子だ。クリス叔父さんが心配そうに、腰掛ける彼をなだめていた。
「恐怖を取り除きなさい。」
「違うんです、高いところというか、この圧迫感が、落ちるんじゃないかって恐怖心が。」
「マシューがロンドン・アイに乗りに行かない?って誘ったんじゃん!馬鹿じゃーん!」
アリスが可笑しく、笑っている。そして、無理矢理彼の腕を引っ張り、全面ガラス張りの
乗り物のガラスに、彼の顔面をめり込ませ、
「ほら、国会議事堂があんなに小さく見える。あっちに学園が見える!ひゃっほい!」
白目を向きながら、マシューは必死に耐えていた。
ロンドン・アイは、世界一大きく、高い観覧車で、20人は入るんじゃないかという広さの
中に、日本人らしき観光客や、イギリス人が何人か乗っており、マシューたちを愉快な動
物でも見るように見学していた。
そのうちの小さな女の子が、変なお兄ちゃんと言って、ガラスの外の光景を興味津々に
眺めていた。全面がガラス張りになっており、中央に座席が配置され、どこからでも、外
の景色を鑑賞できるつくりになっていた。
その座席に寝転び、仰向けになったクリス叔父さんが、「パンツは見れないんだね。」と、
真顔で言っていたので、僕は慌てた。
相変わらず、小さな子供は、はしゃいでいた。大きな子供アリスも同じだ。
哲学者の言葉を全て信じきっていた、無神論者になった少年、サイロン教授の小さい頃
も、こんなふうに色々な目に見える不思議に目を輝かせていたに違いない。
そして、哲学者の言葉を信じて、神がかりな出来事も…
私立探偵ドイルの言葉を思い出していた。まやかし、詐欺…
空が落ちてくる?
僕はとっさに鞄から本を取り出し、ペンを探したが、“金の梟”のペンはなくしたんだと
思い出し、別のペンで昨日の最後の言葉がまだ残っているページに書いた。
『ロンドン・アイに乗った。いったいどういう事なの?』
しかし、全く反応がない。おかしい…
『おい!ねぼすけ妖精クロエ!聞いてる?』
もしかして…“金の梟”のペンじゃないと効果がないのかもしれない、と蒼白になった。
あと一歩で、真相に近づける気がしたのに。君の解を示して欲しいのに…。
すると、同じく蒼白になっているクリス叔父さんが、携帯の画面を凝視していた。
「君たち、僕は今から大学に向かう。教授が殺された…。」
その言葉にアリスもマシューも驚いた。クリスティーヌは不思議そうな顔をしていた。
事件は、思わぬ方向に転がりだした。

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