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哲学の塔コミュの第五章5

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 “哲学の塔”の地下で、ベテラン探偵二人による推理劇は繰り広げられていた。
クリス・グリーンウィッチは怪訝な表情で、聞き返した。
「もっと恐ろしい真実、ですか?」
その言葉に、クローバー警部は答えた。
「この事件の裏に居る存在だよ。それに俺は、最初の事件にこそ、協力はしたものの、その
 後は一切関わってはいない。全て、奴らの仕業だ。」
「奴ら?複数、という事か。」
ウィザード・ドイルは冷静に繰り返した。そして続けた。
「最初の事件の時、示し合わせたお前と、ロッド・シルバーフィールドは、トリックの舞台、
 密室の“哲学の塔”を用意した。同時に、トリックを立証するための観客もな。」
クローバーは床を眺めていた。
「準備を整えたロッドは、トイレに行くと言い、一度塔から離れ、塔の中のエレベーター
 を地下に移動させた。例のごとく、防音設備の整った塔外部からは、何も気づかない。」
クリスも静かに聞いていた。
「屋上が、地上よりも低い場所に移動した時、青い髪の青年、ロズウェル・アンダーソンが
 塔の入り口から入っていった。当然、事の顛末を聞いていたお前は、彼をそのまま通し
 た。まさか、その直後、彼が塔入り口から、地下に下がった屋上に転落する事など知る
 よしもなかったんじゃないか?」
クローバー警部は蒼ざめていた。的を射ていたのだろう。
まさか、自分が間接的にせよ、ロズウェル・アンダーソンを死に追いやる役目を担ってい
たとは知らされていなかったのだろう。共謀者、ロッド・シルバーフィールドに。
「ロズウェルが塔入り口に入っていったのを確認したロッドは、エレベーターを元の位
 置に戻し、何食わぬ顔でお前の元に戻り、塔の入り口に入っていく。通常の位置に戻っ
 ていたのだから、当然、ロッドが屋上に落下する事はなかった。彼は再び中から鍵をか
 け、“哲学の塔”を密室に戻した。」
クローバー警部は強張った表情で、答えた。
「ロッドに、自分の死体には誰も近づけないでくれ、と言われていた。だから、俺は奴の死
 体の傍を離れなかったし、事件の後も、奴の遺言どおり、死体を屋上に放置していた。
 そのうち死体は忽然と消えると言っていたからな、だからこれは何かのマジックのト
 リックなのだと思っていたよ。だが、だがあの死体は本物だった。そしてあれはロッド
 の死体だ、間違いない!俺はプロの殺人課の警部だ。」
「確かに、本物の死体さ。しかし、ロッドではなく、ロズウェルのな。」
「馬鹿な…!見間違えるはずが…」
クローバーは呆気にとられていた。
「ロッドとロズウェルは双子です。貴方は見間違えたんですよ。」
クリスは、ゆっくりと口を開いた。
「…双子だと?」
「勿論、証拠はとってある。彼らは双子のマジシャンだったんだ。二人一役の人生を今ま
 で歩んできたため、表舞台には決して明かさなかった事実だ。
 ロッド・シルバーフィールドの奇抜な衣装に、化粧にも訳があった。派手な格好に身を
 包む事で、お互いの些細な違いすら、秘密の花園に覆い隠したのさ。
 用意周到な男さ。屋上に落下して死んだロズウェル・アンダーソンの死体に、自分の身
 につけていたロッド・シルバーフィールドの格好をさせ、その後、ロズウェル・アンダ
 ーソンになりすまし、“哲学の塔”を脱出した。
 こうして、密室の塔の屋上に、ロッド・シルバーフィールドの落下死体が現れたのさ。」
クローバー警部はうなだれていた。
「俺は、完全に騙されていたのか…。」
「なぜ、お前があの男に協力したのかは知らないが、これが事件の真相だ。
 エレベーターのトリックのヒントは、マーク・サイモンから貰ったものだ。」
あの、頭のイカレタ男か?と言うような怪訝な表情をするクローバー警部。
「唯一、塔の壁をよじ登っていた男は、エレベーターが作動している瞬間、塔の微妙な振
 動を感じていたのだ。あの男の奇天烈な存在が、この事件の謎を紐解く鍵になるとは、
 なんとも皮肉なものだが。」
一気に推理を捲くし立てた私立探偵ドイルは、一服と、煙草を取り出した。
クローバー警部は、ひとつ疑問に思い、質問をした。
「塔から脱出した、と言っていたが…どう脱出したんだ?」
私立探偵ドイルはめんどくさそうに火をつけた煙草をくゆらせていた。
「さぁな。」
「おいおい、それじゃ、解決には至らないだろう。」
クローバー警部は呆れた表情になった。
「ロズウェルを死に導いたのはお前だと分かったが、共犯者の脱出経路はだな。」
その言葉にクローバー警部は、気を重くしていた。
「ドイル、この警部さんが嫌いなのは分かるが、あまり苛め過ぎるのも可哀想だよ。」
私立探偵ドイルは心外だな、という顔で答えた。
「私は、ただ、事実を羅列しただけだが、クリス。」
クリスは苦笑いすると、クローバー警部の方を見て言った。
「その謎も、マーク・サイモンが教えてくれましたよ。」
「またあの男がか!なんたる奇縁…。」
「彼は言っていました、塔の裏側に目立たない取っ手がある、と。塔の壁を削るように、窪
 んだ部分が下まで続いていた。でも下からは発見されないんです。」
それは謎かけのような答えだった。
密室の塔からの脱出経路。

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