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哲学の塔コミュの第五章4

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 深い森から出てきたマシュー・ハワースと、ドム・ウィンブルドンは、“哲学の塔”に向
かい、ヒースの丘を歩いていた。
ドムの腕からは、血が滴り落ちていた。
「ドム、君、本当に大丈夫なのか?」
ドムは怪訝な表情をしながら、言い返した。
「俺の心配より、お前、自分の頭を心配した方が良いんじゃないか?」
「な!…なんだって!失礼な人だね、君は…」
二人が言い争いをしていると、“哲学の塔”の方角から誰かが勢いよく走って来た。
「マシューーーーー!!」
アリス・ブラックウェルは勢いよくマシューに抱きつくと、ふたりは倒れ、ヒースの丘を
転がった。
マシューは悲痛な悲鳴をあげながら、草原を転がり続けていた。
ドムが、愛想無く言った。
「何やってんだ、お前?馬鹿みてぇだな。馬鹿なのは知ってるが。」
アリスはドムの存在に気づくと立ち上がり、敵意剥き出しで噛み付いた。
「あんた!マシューに卵ぶつけた頭ツンツンな奴!何、許可もなく、感動の再開を見てん
 のよ!」
「はぁ?好きで見てんじゃねぇよ、そばかす!それになんだ、その幼稚で、教養のない表
 現は?どうやら、お前も馬鹿みたいだな。」
ドムは素っ気なく答えた。
アリスはますます憤慨したが、そっぽを向き、マシューのもとに駆け寄った。
「ごみん。私のせいで、マシューを危険な目に遭わせて…。」
アリスは、両手を差し出した。その掌には金色の梟のペンが乗っていた。
マシューは、そのペンと、今にも泣きそうなアリスを交互に見ると、微笑んだ。
「ありがとう、アリス。君、あの手紙を読んだんだね。」
アリスは声もなく頷いた。
「探してくれたんだね。僕のために、…心配をかけて本当にごめん。」
アリスは、泣き出すのを堪えながら、唇を噛み締め、頭を左右に何度も振った。
「実は私の鞄のポケットに刺さってたみたいで、私、全く気づかずに…馬鹿みたいに探し
 てたら、変な初老の紳士が…そう、なんだか初めて会った気がしない…。」
「?」
マシューは、考え込むアリスを見て、首をかしげた。
すると、アリスの背後に見える“哲学の塔”の屋上に、赤い何かが浮遊しているのが見え
たので、立ち上がり叫んだ。
「リンゴだ!重力に逆らって浮上するリンゴ!」
アリスもドムも、“哲学の塔”を振り返る。
ドムは双眼鏡を取り出し、それを見ていた。
「あれはリンゴじゃない。あれは…」
「赤い風船よ!さっきも見た!あれが哲学者の言った、浮上するリンゴの正体!」
アリスが叫ぶと同時に、ドムは溜め息をついた。
「まるで茶番だな。三流マジシャンがやるような詐欺で、哲学者は無神論者の子供を騙し
 ていたのかもしれない。何のこともない。所詮こんなものか。退屈だ。」
「いや、まだだ。」
マシューは険しい表情で答えた。
「まだ、密室の屋上の落下死体の謎が残ってる。
 それに、空が落ちてくるという意味、そしてこの事件の真犯人の正体。
 まだ、何も終わってなんかいないんだ。」
ドムは珍しく関心したようにマシューを見ると、もう一度“哲学の塔”を睨んだ。
「誰かが屋上に居るみたいだな。」
3人とも、しばらくゆらゆらと浮遊する赤い風船を眺めていた。
するとマシューは、鞄から、古びた焦げ茶色の本を取り出し、無造作にページを開いた。
最後に交信をしたのは、昨日の夜。
そのページには、こう記されていた。
『ねぼすけ妖精とはどういう意味だ?このマヌケ留学生。』
マシューの口元に笑みが浮かんだ。
クロエ・W・ウィスパーとの交信が復活した。
『ロンドン・アイに乗って、気づいたろう?
 空が近づいてきた錯覚を、覚えなかったのか?』
マシューはその言葉に首をかしげた。
『何も気づかなかった。でもね、クリス叔父さんはパンツは見えないんだな、ってさ。』
『マヌケな。愚かな。不埒な。そして馬鹿だ。
 ロンドン・アイ。あれは確か、観覧車。観覧車の軌道は、円だ。
 しかし、“哲学の塔”の軌道は、垂直の上下。巨大なエレベーターだったのだ、君。』
マシューはその事実に言葉を失った。
「まさか…、そんな。」
アリスとドムは、不思議なモノを見るようにマシューを眺めていた。
「どうしたのマシュー?」
「頭のネジでも…いや、悪い、もう既に外れていたな、くく。」
マシューは、二人を眺めながら素っ気無く言った。
「あの“哲学の塔”は、巨大なエレベーターだったんだ。」
二人は驚いていた。マシューはゆっくり歩き出した。
「歩きながら話そう。“哲学の塔”の屋上で、真実が待っている。」

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