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哲学の塔コミュの第五章1

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 刹那の出来事だった。
森の中に消えたシルエットが現れ、マシュー・ハワースに拳銃を向ける。
そこに居たのは、さっき首が切断されて死んだはずのロズウェル・アンダーソンだった。
青い髪をたなびかせ、青い済んだ瞳がこちらを無表情で見ている。
マシューはその人物を目撃し、言葉を失ったと同時に、銃声が深い森に鳴り響く。
銃声が鳴り響いた刹那、第3者のシルエットが目の前に現れ、血しぶきが舞う。
血しぶきが舞う刹那、そのシルエットは馬と共に、地面に崩れ落ちる。
崩れ落ちる刹那、拳銃を発砲したシルエットは、また深い森の闇に姿を消した。
マシューと、彼の乗っていた馬の背中に、おびただしい血を浴びる。
彼の代わりに弾丸の生贄となったその人物は、左腕を押さえながら、マシューを見上げ
る。そして一言、呟いた。
「よう、目立ちたがり屋の留学生、マシュー・ハワース。お前はシロだな。」
それは昨日の登校時、マシューに卵を投げつけ、喧嘩を吹っかけてきた貴人組の問題児、
ドム・ウィンブルドンだった。
「な!なんで君がここに!」
「お前の後をつけてきた。正確に言うと、奴の後をつけてきたんだ。」
「そ…そう。いや、それより大丈夫かい?腕を撃たれたのか?」
ドムはたいした怪我じゃない、と首を振り、マシューの差し伸べた手を弾き返した。
「仲良し子良しはご免だ。」
そんな怪訝な表情をするドムに対して、マシューは以前の彼に対する怒りはなくなって
いた。
そして、以前クリス叔父さんが言っていた言葉を思い出した。
“彼は天才だ。そして、君と同じ留学生。
彼の存在はきっと君の助けになるはず。”
確かに、助けになった。もし、ドムが居なかったら、間違いなくマシューは死んでいた。
「恩にきるよ。ありがとう、ドム。以前の暴言は許すよ。」
ドムは怪訝な顔をしていた。
「暴言?覚えが無いし、許すだと?思い上がるな、留学生!」
「な!覚えが無い?君は卵を僕にぶつけたんだぞ?」
「記憶に無いし、興味も無い。」
ドムは鋭い目つきで吐き捨てるように言った。
「それに、俺はお前に今死なれたら困る。」
「どうして?」
「“哲学の塔”の謎を解きたいからな。この灰色の頭脳がうずくのさ。」
ドムは愉快に笑っていた。そして付け加えた。
「それに兄貴に先を越されたら、ムカツクからな。」
「兄貴?」
マシューはますます訳が分からなくなると、聞き返した。
「おいおい、お前、あのクリスって教授の隠し子だろ?何も聞いてねぇのかよ。」
「か…隠し子じゃない!親戚だ!クリス叔父さんに何の関係があるんだ?」
ドムは興味なさそうに首をかしげると、また謎を吹っかけてきた。
「“ミネルヴァの梟”の事もひょっとして知らないのか?お前、とんでもない家庭に養子
 に入ったんだな。はははははは!」
「よ…養子でもないよ!居候させてもらってるだけだ。ミネル…バー?」
「は?お前馬鹿?お前馬鹿なのか?」
ドムのその人を見下す態度にマシューも怒りがこみ上げてきた。
「なんなんだよさっきから!訳が分からないし。」
ドムは溜め息をつくと、ポケットから煙草を取り出し、吸い始めた。
マシューは静かに注意した。
「森で煙草はまずいんじゃない?」
ドムはめんどくさそうに、マシューの顔を見る。
「誰も俺の存在には気付かないさ、森の生物すらな。」
そしてゆっくりと語りだした。
「ミネルヴァの梟は、クリスティーヌっていう“仏のクリス”の娘の異名。あの女、子供の
 頃から父親と一緒に事件を裏で捜査していたらしいぜ。そして解決してきた。
 兄貴が言ってた。誰って?“ロンドンの切り札”ウィザード・ドイルだ。馬鹿。」
「はぁーーーーーーーー!!」
森にマシューの叫び声が響いた。
「あの一味で馬鹿なのは、お前とあのアイルランド娘だけだ。ははは。」
その言葉にマシューは心の中でほくそ笑んだ。
僕には“クロエ・W・ウィスパー”が居る。
しかし、その瞬間思い出したように慌てだした。
今、彼女とは交信ができないでいるのだ!
「お前さっきから、何一人で叫んだり、にやけたり、慌ててるんだ?頭も可笑しいのか?」
そして、携帯電話もどこかで落としてきてしまった事にも気づく。
マシューは、“禁断の書”の1ページをちぎると、汚い字で何かメッセージを走り書きし、
乗ってきた黒い馬の背中と馬具の間にその紙切れを挟んだ。
すると、黒い馬は歩き出し、こちらを一度振り返ると、そのまま走って行った。
蹄の音が深い森から消え、再び静寂が戻ってきた。
「兄貴は幽霊だ、人の意識から消えることのできる、男だ。死にはしない。くくく。」
「あの兄に、この弟か。はぁ…。」
その瞬間、ドムのボンバーチョップがマシューの後頭部に炸裂した。

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