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俳諧師:近江不忍コミュの7、五日 發句集『草の笛』より

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この作品は自作の詩や小説、隨筆などを讀んで戴く時に、BGMとして流さうと思ひつき、樣々なヴアジヨンを作らうとした内のひとつで、今囘は、

『YAMAHA QY100 Motion1(Mirror) &(Substance) 柿衞文庫(KAKIMORI BUNNKO)
Takaaki Mikihiko(高秋 美樹彦)』

で作つて見ました。




     發句集『草の笛』


     五 日


 餘りの寒さに目の開くなり。
 今年の正月は朔日より暖かきゆゑ、それのみを樂しみをれど、予の氣がつけば、窓の外に雪のチラと降りたるを見る。

   初雪やまづ一番に鼻の上

 けふは大阪へ歸る日にあり。
 早朝に古和浦を立つと雖も、午後になりたるを予が家の慣例とす。
 風強く、空を見遣るも、雪荒るるは明らかなる可し。
 予らは古和浦の人々と別れてより、父の運轉したる自動車に乘りて大坂へと向ふなり。

   初雪や道二筋に分かれけり

 鈴鹿峠に近くなりて、雪、形ありしものを虚像と化し、元の姿を止どむる所を不知。
 鈴鹿峠に到りて、自動車にタイヤチエエンを必要とす。
 山道の端々に轉落したりし幾つかの車を認め、あるいは岩壁にぶつかりたる車もあり。
雪の中を走りたる予らが車の車體は氷りつきて、氷柱をも見えたり。
 雪は勢ひを弱めずして、強くなりたるばかりなり。
 その情緒風景は絶なれど、ひとたびこの寂たる樣の恐ろしさを秘めたるを見るは容易(たやす)きかな。

   降り初むる雪のさだめも風まかせ


   見渡せば林を前に雪吠えぬ


   峠より雪にけぶれる街の影

 鈴鹿峠を越ゆれど、雪、いまだ斜めに流れたり。
 車多くして、田畑に轉落したるも見るあり。
 予が父はなにを恐るるに足らん、と車を從はすなり。
 雪降りて空暗くあれども、いつか陽の出でたるを見る。
 今、越え來たる鈴鹿峠を振返りて見やれば、

   太陽にひかり散り初む峰の雪


   太陽と雪のまぶしき刹那かな


   降りしきる雪や人なき道の上


   雪けむり人の住みたる情けゆゑ


   うつせみの街しろくして雪の影

 かかる雪の激しき街なれば、人の姿は絶えて、その街の靜かなりしたたずまひは、いにしへの心を偲びたるが如し。
 予は、この街に如何なる由緒のありしかを不知。
 また、この街の名は雪に埋れたるが如く、予に知らしむる術のなかりしぞ、と早くも街を過ぎ行くなり。

   雪野路を汽車の行手や明渡り


   入相の鐘の音洩る春の雪


   雪の街外れて人に逢ひし息


   例外の墓場もやがて銀世界


   戒名も埋れて見えず雪の外


   雪降りて探られさぐる佛心情

 寺のある街にて、とは予の空想にある。


   空想の雪降るごとにふるごとに

 この句はむしろ一茶的と言へる句にあり。


   初雪や命ふるへて湯を啜る

 車の中にて走り去る景色を眺めもせず、水筒に入れてありし湯をひとり呑みたり。
 寒さなほも甚だしき。

   雪觸れて消えて命の幾許ぞ


 やがて甲賀の忍者屋敷なども見えたり。
 浪漫に富みし國なり。

   夕映えや雪の甲賀へ獨り消ゆ


   雪や春空想の句を五七五

 泉の如く發句の湧き出づる一日なり。
 さて、栗東に來たれば雪もまばらにて、名神高速道路に入りたれば雪に別れんとするのみ。
 かくて大坂へ車を走らせるなり。
 大坂に着いたれば眠るばかりなり、と車の中にて寢てゐたり。






     續きをどうぞ

八、六 日 發句集『草の笛』より
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=65016347&comm_id=4637715



     始めからどうぞ

1、序 發句集『草の笛』より
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=64361399&comm_id=4637715



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