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俳諧師:近江不忍コミュの七、倒裝法に就いて 『發句雜記』

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七、倒裝法に就いて 『發句雜記』

 倒置法(たうちはふ)と同じやうな利用價値のある技巧の一種に、倒裝法(たうさうはふ)といふものがある。
 これは漢學(かんがく)からの轉用(てんよう)であるらしく、筆者もこれを芥川龍之介の、

 『芭蕉雜記』

から知つた事を白状しておく。


 どういふ方法かといふと、

   風散つてゆふべには吹く雪の宿 不忍 

 これが、その倒裝法の一例であると言へよう。


 これを尋常に言ひ下すと、

   風吹いてゆふべには散る雪の宿

 となつて、味はひは動詞を顛倒(てんたう)する事によつて、渾然(こんぜん)とした雰圍氣を表現出來る事にあると言へるだらう。
 

 この方法は先にも述べた通り、古人がすでに試みてゐて、あまりにも柳の下の泥鰌(どぢやう)を狙ひ過ぎかも知れないが、一つには、句作をする態度に柔らかさを持つて見るといふ意味で、ここに述べて見る事にしたのである。


 では、倒置法(たうちはふ)での例題の句をもつて、倒裝法を當て嵌めんとすると、どうなるであらうか。

   月吠えて眞冬の犬はおとろへぬ

 斯(か)くの如くで、これでは「月」も「犬」も、兩方「おとろへ」てしまつた感がある。


 生憎(あいにく)、筆者自身の考案になる他の方法も思ひつかないので、かういふ結果となつてしまつたのであるが、あるいは筆者などのいふ事より、もつと善い他の方法を考へつかれた人がをられるかも知れない。
 ただ教へを待つばかりである。


一九七五年昭和五〇乙卯(きのとう)年睦月(むつき)九日午前二時半




八、發句の形式に就いて 『發句雜記』より
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=62835336&comm_id=4637715

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