「物語」について。
ところで、ご存知かと思いますが、ジノサン墓地=イノサン墓地であり、英語のイノセンス、すなわち「無垢」あるいは「幼児」をあらわします。墓地にあったとされる絵の下方に「Comment les inocens furent occis par le commandement du Roy Herodes」と大書された題名からも分かるように、この絵の主題は「無垢な者(幼児)達がヘロデ王の命により、いかに殺されしか」であろうと思います。
先ほど書きました銘刻文の近くには三枚に分けられた、ヘロデ王による幼児虐殺の絵を見ることが出来ます。3枚に分けられていることも重要なのですが、ここではそれをおいておいて、よく知られているようにこの絵がキリスト教における最初の殉教者とされる人たちの絵であることを思い起こすべきであると思います。そして、このレリーフに書かれた数字(ローマ数字とアラビア数字。この数字は説明のための便宜上のものであろう)を無視していただいて、この絵の真上を見ていただきたいと思います。そうしますと今度は「3人の人が土と墓から蘇っている図」に出会うことになります。この人たちは「白い衣」を着ているそうですから、完全に「精神」あるいは「魂」の象徴です。そしてその「魂」は上昇するわけですが、なぜそれが分かるのかというと、そのすぐ上に二人の天使が描かれており、その天使は楽器を携えているからです。天使の楽器は錬金術的含意のある「リュート」と「ミュゼット(バグパイプ)」ですが、それはともかく「天界の音楽」とは「最後の審判」の時に奏でられる音楽です。すなわち、魂の救済を表しますが、その意味を補強してくれるのが他ならない、2天使の上に立つ「救世主(キリスト)」です(人間の魂はキリストによってのみ救済されるものですから)。救世主の左右にある天使の携える巻物には「O Pater omnipotens(おお、全能の父よ)」「O Jesus bone(おお、善きイエスよ)」とあります。そして、救世主の上にある天使が「至高の冠」を救世主に授けている場面が描かれているわけです。
「至高の冠」に関する意味もここでは省きますが、その上の絵が「薔薇園」であることが重要です(当然「哲学者の薔薇園」を意図しているのでしょう)。救済された魂は、「薔薇園」へと上昇し、導かれるわけです。そう考えると、救世主の左右にある聖ペテロが携える「鍵」と聖パウロの持つ「剣」の意味もおのずと分かるわけですが、それはともかく、この図は「下から上へ」と物語として読み進むことができる絵であることがいえると思います。
そしてその解釈は、ヘルメス学における「下にあるものは上にあるものが如し」という考え方と少しも矛盾することなく、描かれていることも重要でしょう。
ざっと検索してみたんですが、彼の錬金術関係の本は和訳されている二冊だけのようですね。『The Golden Game』が『錬金術図像大全』、『Alchemy: The Secret Art』が『錬金術 精神変容の秘術』の邦題で訳出されているようですね。
ペーパーバックなら英語ですけど、安く買えそうですね。
アマゾンで買ってみようかなぁ。チェコへは発送してもらえるのでしょうか(ドキドキ