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超自然芸術研究所コミュのARTERY TEMPO 展

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2010.7.14


 欧米の現代美術界で著名なアーティスト奈良美智が彼の地元弘前市の吉井煉瓦倉庫で2002年に造り上げた個展には数万人が訪れた。それはむろん全国的に報道され、数えきれないほどのボランティアが関わり、奇跡の展覧会とも言われた。

 しかしその影で地元のアーティスト16名によるグループ展が開催されていたことを知る者は少ない。最初の発起人は弘前の某アーティストKで、彼がこの年、グループ展をやるという初夢を見たことから、彼の提案に乗る形で参画者として私も責任をもつようになった。

 16名とはいえ、実質、事務的に動いていたのは私を含めた3名と若である。Kと、名義上の館長 Hさんと私だけであった。他にも多くの人々に協力をお願いしたものの、奈良美智展とその物理的スケールは比べものにならない。しかし、「ボランティア」という誤摩化しがきく用語を我々は使わなかった。会期を通してカウントした人数は1500人ほどであるが、奈良展のおこぼれ効果はさほど感じず、ARTERY TEMPO展に来たのはほとんど地元の若い人々が中心であった。

 私はここでハッキリ言わなければならないが、この展覧会の意味合いは奈良展を凌駕していた。比較にならないほどの低予算、少人数ではあったが、地方作家に光を当て、地元の可能性を示すという大義を果たすことができたからである。奈良さんは一回だけ、ARTERY TEMPO 展を見に来てくれたが、3分ほど見て回ったあと、何も言わずに忙しそうに出て行った。「奈良さんがこう言ってた。」と語りぐさになるのを避けようとしたのか。


 私は長く弘前に住んでいたが、奈良アートが好きだという地元の人にほとんど会ったことがない。とくに真剣に生きている人ほど、「奈良美智は、なんもイイと思わない。」と発言する傾向がある。例外的に奈良アートが好きという女性一人に会ったことがあるが、彼女は「みんな好きって言ってる。」というだけで、何がどのように、どうして好ましいのか説明することはなかった。

空き店舗を活用したARTERY TEMPO展というタイトル以前に、アーティストKによって当初考案され頑固に押し通されそうになっていたものがある。その名も「Welcome back! Mr Nara Yoshitomo 展」それを目にしたとき私はぎょっとして、なんというセンスのないタイトルだろうと恥ずかしかった。Kは単に大きいものに寄りかかりたいだけだったのである。このコバンザメ根性は私にとって大きなストレスになり、「Welcome back! Mr Nara Yoshitomo 」ををなんとか使わせないようにするために、ARTERY TEMPOという言葉を提案した。しかしそれでもKは奈良展にすりよる発想を棄てようとせず、ついにそれが奈良さん本人の耳に入り、彼はこうコメントしたらしい、


「やるな、とは言わないけど、関係ないとこでやってね。」



この奈良さんのコメントがK本人を諦めさせることになり、「Welcome back! Mr Nara Yoshitomo 展」は却下され、ARTERY TEMPO展が正式な展覧会名称になったのである。


 この弘前現代美術館はまだ看板をつけたまま、いつでも展示ができる状態のままにしてある。奈良展の副産物であるNPO harappaの関係者に、使ってみてはどうか、と何度か促してみたものの、この古めかしい大正時代の物件はあれ以降、誰にも使われていない。

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