「安物買いの銭失い」を地で行った形だ。
当初有力視された日本の新幹線案の採用をやめ、途中から「安い」スターリニスト中国製の高速鉄道に乗り換えたインドネシアの失敗である。
◎日本プランに横から割り込んで
インドネシアは、首都ジャカルタとそこから東南140キロの古都バンドンを結ぶ高速鉄道を計画していた。植民地時代に敷設された鉄道では所要時間が4時間弱もかかるから、高速鉄道を建設して45分で結ぼうという計画だった(写真=下は模型を前に中国当局者から説明を受けるインドネシアのジョコ大統領)。
当初は、総工費6000億円のうち、日本がODAで4500億円を、金利0.1%(!)、償還期間40年という好条件で供与し、新幹線方式で建設するプランが有力だった。プランでは、完工は2021年、とされた。
そこにスターリニスト中国が横から割り込んだ。安い建設費で、日本案より早い18年完工、しかもインドネシアの国費負担一切無しの甘い条件を提示して。
ところが、インドネシアとスターリニスト中国が同高速鉄道建設に総工費55億ドルで2015年9月に合意したのに、スターリニスト中国側はなかなか起工しなかった。
◎着工も遅れ、建設費は試算ごとに膨張
起工式が行われたのは、合意後1年もたち(本格着工はさらに遅れる)、その間、スターリニスト中国の側はほったらかしだった。そして起工式後の5年の今年1月、見積もり直すと総工費は60.7億ドルに膨らんでいた。完全に、当初の日本案を上回った(写真=大幅遅れの建設工事)。
ところが、それで済まなかった。インドネシア国鉄も資本参加する事業主体の「インドネシア中国高速鉄道会社」(KCIC)があらためて費用を精査すると、少なく見積もっても79.7億ドルにもなることが判明したのだ。
当初見積もりの55億ドルから25億ドル近い超過である。
ここに至って、インドネシアの政府負担一切無しは、反古になった。同国のジョコ大統領は6日、国費の投入を可能にする改正大統領令を公布する羽目に陥った。
こうなったのは、スターリニスト中国が甘い建設見通しで、高速鉄道計画を日本から奪ったことにある。
インドネシアは、その罠にはまった。まさに甘い蜜には毒がある、である。
◎まるで悪徳不動産業者のよう
現在、高速鉄道工事の進捗率は、まだ79%に留まる。開業は、早くて22年末とずれ込む。日本案より1年以上も遅れ、さらに総工費は4割以上も高い水準に膨らんでいる。
むろん日本案でも、多少の費用の上振れや工期後ずれの可能性はあったろうが、ODAは日本の税金を使うから、追加費用の発生を避けるため、綿密に事前調査してコストを見積もる。スターリニスト中国ほどのコスト膨張はあり得なかった。
インドネシア政府とジョコ大統領は、スターリニスト中国に一杯食わされたわけだが、これまでのスターリニスト中国の海外工事のなどのトラブル続きの事情を見れば、それを見通せなかったのは甘い、と言わざるを得ない。
「債務の罠」に加えて、甘い見通しで安いコストを提示し、後から費用を上乗せするという悪徳不動産会社のようなスターリニスト中国の手口を、途上国はもっと学んだ方がいい。
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