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2020年10月17日05:53

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鉄とニッケルで出来た小惑星プシケの謎(前編):純粋な鉄・ニッケル隕鉄は先史人にも利用されていた

 木星と火星の間に、金属で出来た天体がある。「プシケ(サイキ)」という(想像図)。

◎鉄が大半でニッケルがその5分の1
 小惑星帯の中では13番目に大きな天体で(直径は253キロ)、それだけに今日、この頃見つかるような微小小惑星ではなく、もう1世紀半前になる1852年に発見された。
 その意味では変哲もない小惑星だが、プシケが惑星科学者の関心を引くのは、大半の小惑星と異なり、プシケが鉄とニッケルで出来ている金属天体らしいからだ(鉄が84%、ニッケルが16%の組成と見られる)。ちなみに有名な4大小惑星(セレス、パラス、ジュノー、ベスタ)も、さらに日本の小惑星探査器が探査したイトカワもリュウグウも、すべて岩石天体である。
 つまりプシケは、希有な小惑星と言える。

◎地上に届いた隕鉄はその片割れか
 プシケが他の小惑星と異なり、鉄・ニッケルで出来ているのは、惑星形成初期に重い元素である鉄・ニッケルがコアに集まったものの残存核であるからのようだ。表面に近いマントルは、小惑星同士の衝突で吹き飛ばされたものらしい。
 ただ鉄・ニッケルで出来た小惑星は、プシケの分身かもしれないが、微小なものは存在する。その一部が、地球の引力に引かれて、燃え尽きずに地上に到達したものが、「隕鉄」である。

◎重さ66トンもあったホバ隕石は8万年前に地球に到達
 隕鉄では、有名な例にホバ隕石がある(写真)。1920年、ナミビアのオチョソンデュパ州で、農耕の際に地中に埋もれた本体が見つかった。2.7×2.7メートルの四辺形に近く、厚みは0.9メートルある。
 発見時は66トンほどあったらしいが、サンプル切り取りや窃盗行為などで1割ほど減って、それでも60トンもある。単体としては世界最大の隕鉄だ。
 ホバ隕石は、8万年前頃に地球に到達したと考えられている。南部アフリカには、すでにホモ・サピエンスが分布していたから、彼らは空を輝かせた巨大隕鉄の衝突を目撃したことだろう。
 ホバ隕石の起源は分からないが、プシケが他の小惑星と衝突した際の破片の一部かもしれない。

◎古くから先史人に利用された隕鉄
 これ以外に、小さな隕鉄なら世界各地で見つけられている。
 一部は、先史人にも利用された。
 隕鉄は、ほぼ純粋な鉄なので、鉄冶金が発明されたヒッタイト文明以前から、人類に利用されていた。ただ隕鉄自体、珍しいから極めて貴重であったのは間違いない。
 例えば考古学の草創期の北米で、先史インディアンが鏃に鉄を用いていた例が注目された。北米では、白人が入植してくるまで、いかなる製鉄技術もなかった。それでも鉄製の鏃があったのは、隕鉄の利用、と考えられた。

◎ツタンカーメン王墓の副葬品にも
 古代エジプトでは、隕鉄を利用して装身具や武器(実用品よりも高貴な人物の象徴品)が作られた。有名なツタンカーメン王の棺に納められていた鉄剣(写真)も、隕鉄の利用である。ツタンカーメンが埋葬された紀元前14世紀に、エジプトにはまだ鉄冶金術はなかったし、2016年にイタリアの研究グループが、実際にこの剣が隕鉄から作られたことを実証した。
 では、その起源であると思われるプシケは、なぜ直径250キロがまるまる鉄・ニッケルの塊なのだろう。
(この項、続く)

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昨年の今日の日記:「核ミサイルを実戦配備した? ミサイル発射実験を続ける北朝鮮ならず者集団のそこに迫る脅威」

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