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2019年10月21日23:01

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「真実」

是枝裕和が全編をフランスで撮影した作品だ。
そして作品自体も、ヨーロッパ映画を是枝監督が撮った、という作りになっていた。

フランスで名の知れた女優ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は自伝を出版することにした。
そしてその出版記念に、娘で脚本家のリュミール(ジュリエット・ビノシュ)と売れない役者の夫ハンク(イーサン・ホーク)、幼い娘の3人がアメリカから駆け付けた。
しかし実際には、出版前に原稿を見せてくれるという約束を母親が破ったため、リュミエールは本の内容を確認しに来たのだった。

自伝のタイトルは「真実」だが、内容は真実ではなかった。
女優業で忙しかった母の代わりにファビエンヌの面倒を見ていたのは、母の親友の女優サラと、マネージャーのリュックだった。
しかしその二人の話は自伝の中に1行も出てこない。
リュックは、ファビエンヌはサラの事を忘れたわけではなく、今撮影を行っている映画もサラの生まれ変わりと言われたマノンが共演者と聞き、出演を決めたという。
しかしそのリュック自身も、自伝に自分が登場しないことにショックを受けマネージャーを辞めてしまう。

仕方なくリュミエールがファビエンヌのマネージャー代わりとなり、撮影現場に同行する。
だが母は往年の演技ができず、本人もいら立ちと戸惑いを感じていた。

こう言っては失礼だが、ストーリーは典型的なヨーロッパ映画である。
人間関係に重きを置き、明確なメリハリが存在しない。
そこに是枝監督特有の機微が入ってくる。
カトリーヌ・ドヌーヴ演じるファビエンヌは、日本で撮影されたら樹木希林が演じていただろう。
仕事への情熱は素晴らしいが、そのため人に迷惑をかけるのも平気、注意されれば逆切れして毒舌を吐く。
少女時代にほとんど母親からの愛情を受けていない娘と、女優でプライドの高い母親の長年の関係が、冒頭からラストまでクッキリ浮き上がって見える。
多くの観客がイメージに持つ「一人娘を持つ大女優」というステレオタイプを、カトリーヌ・ドヌーヴに見事に演じさせた。

リュミエールの父親が無心に表れるのだが、母親はすでに新しいパートナーと一緒に住んでおり、そのパートナーも普通にリュミエールの父を迎え入れたりする。
そのあたりもフランスっぽい感じがした。

ただ、個人的にははっきり言って、是枝監督がフランスで撮影を行う意義がよくわからなかった。
手堅くフランス映画を製作しているが、このテイストならば日本人の監督がわざわざフランスに行って撮影しなくとも、フランス人の映画監督で十分制作できたと思う。

是枝監督の、日本制作の次回作に期待だ。


129.真実


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