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2018年08月15日16:58

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日本の一番長い日

毎年この時期になると「日本の一番長い日」という映画が放映される。
だからだいたい毎年この映画を見ている。
今年はどういうわけか1月末にもこの映画(旧版 岡本喜八版)の放映があった。
そのことを日記に書いた。
 mixi.jp/view_diary.pl?id=1964984691&owner_id=39904538

 
そのときリメーク版も見てみたいと思っていたら、今回は先日(8月6日)2015年のリメーク版原田眞人監督のものが放映された。
(8月6日は奇しくも広島に原爆が投下された日だ。)
これまでは1967年度版岡本喜八監督のものしか見たことがなかったので、新旧どのように違うか大変興味があった。
出演者は鈴木貫太郎首相と阿南陸相は旧版が笠智衆と三船敏郎に対し新版は山崎勉と役所広司となっている。
結論から言うと、リメーク版はつまらない面白くなかった。(と、私は思った)

旧版は戦争終結前日から8月15日玉音放送までの非常に緊迫した状況の1日を描いているが、新版はそこに至るまでの東京大空襲や広島長崎の新型爆弾投下などの説明がある。
何より違うのは新版では”苦悩する昭和天皇”や鈴木家、阿南家の家族のドラマが描かれている。
戦争末の真夏なのにみんな汗もかかずきちんとした服装をしているのがリアリティを感じない。
延々と続く御前会議で閣僚たちも憔悴しきっているはずなのに普通の会議のようだし、陸軍将校たちがクーデターを起こそうとするところも、時間が無く切羽詰まった様子で事を進めていくところもさしたる緊張感が感じられない。
玉音放送の録音盤を奪うために捜索するところもさらっとしか描かれていない。
クーデター首謀者の一人である畑中少佐は旧版では黒沢年男が演じ、新版では松坂桃李が演じているが黒沢年男のほうが血走った目で何かにつかれたように駆けずり回っているのが非常にリアリスティックだった。

新版では戦後70年たってもはや太平洋戦争は歴史となっているのだなと感じられた。
日本の一番長い日という材料で描かれているのは天皇の苦悩や家族のドラマで、戦争の終結という大変重いテーマがあまり感じられなかった。
戦争の是非などではなく人間ドラマといった感じだった。

やはり旧版のほうが1967年という時代でまだまだ戦争体験者も多く、昭和天皇も存命中なので太平洋戦争というのが実態としてあるなかで作られた映画なので見ていても緊張させられる。

これはたぶん監督の岡本喜八が戦争経験者で原田眞人が戦後生まれということもあるのかもしれない。
つまり岡本喜八には戦争の実感があり原田眞人にはそれが無い。

私が年寄りで、まだそこここに戦争の影がある時代に子供時代から青春を過ごしたことも関係しているかもしれない。太平洋戦争は書物に書かれた歴史ではなく、子供の頃は周りにたくさんあった。
母方の従兄はシベリアへ抑留され辛うじて生きて帰ってきた。中学の担任の先生は兵隊としてフィリッピンから引き上げてきていた。
最初に就職した会社には兵隊上がりの人が数人いた。
私自身満州からの引揚者だ。

私にとっても戦争はドラマではなくさまざまな実感がある。
両方の映画を見たとき、ドラマではなく実態として感じられるほうに惹かれる。


岡本喜八には戦争を描いた作品がいくつかあるが、なかでも「肉弾」は非常に印象に残っている作品だ。
主演は寺田農で大谷直子が女学生役で出ていた。
あらすじはここにある。
  http://home.f05.itscom.net/kota2/jmov/1996_03/960327.html

大谷直子のヌードが初々しくたいへんまぶしかった。
この映画はもう一度見たいし、今の人たちにぜひ見てもらいたい。
一見ちょっぴり喜劇じみた映画であるが、戦争のおろかさ滑稽さ残酷さが突きつけられる。



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