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2016年08月28日05:36

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画期的新薬が医療保険制度を崩壊させるか? オプジーボという「怪物」

 画期的抗がん剤が保険行政を揺さぶっている。小野薬品工業が開発し、2014年にまず悪性黒色腫(メラノーマ)に、15年末に非小細胞肺がんに保険適用が認められ、近く腎臓がんや血液がんの一種の治療にも認められる予定の「オプジーボ」である。

◎一部の患者に著効も目の玉が飛び出るほど高い薬価、1人年間3500万円も
 従来の抗がん剤はがん細胞を直接たたいた(同時に正常細胞にもダメージを与えた)が、それと作用機序が根本的に異なり、がん細胞が邪魔する免疫の働きを強め、それでがん細胞をやっつけるという薬だ。
 免疫の働きを助けるだけなので、副作用は少ない。そのうえ、一部の患者には劇的な効果がある。末期がんで、他の治療手段のない患者には神の薬とも言える可能性のある抗がん剤である。
 問題は、価格が飛び抜けて高いことだ。たった100ミリグラムで73万円もする。標準的な投与法だと、患者1人当たり3500万円もかかる。3500円ではない、3500万円である。

◎1つのがんで年間2兆円弱
 これだけ高いと、使用が手控えられると思われるのだが、今の保険制度では患者負担の上限が決まっていて、所得にもよるがせいぜい月8万円程度の負担で済む。つまり価格抑制効果はほとんどない。したがって保険適用のがんの種類が増えるごとに、使用患者が急増し、つれて薬剤費が急カーブで増えていく構図になっている。
 ちなみに非小細胞肺がん患者は、年10万人強。このうち、仮に5万人がオプジーボを1年使うとすると、薬代だけで年1兆7500億円もかかる計算になる。日本の年間医療費約40兆円だが、このうち薬剤費は約10兆円。それを2割近くも跳ね上げる。

◎医療予算増を主張する日本医師会も警戒
 このまま保険適用が広がると、健保財政は破綻する。それどころか医療費や薬剤費は約4分の1が国費でまかなわれているから、国の予算をも圧迫する。一部の患者にとっては光明だが、全体的には「亡国の薬」とも言える。
 これには、日頃から医療予算の充実を求める日本医師会も「適正使用に向け、対策が必要」と、警戒の立場をとる。この言葉の裏には、不適正使用でオプジーボが安易に使われている、という疑いがある。いくら劇的特効薬でも、著効を示すのは3割程度という見方がある。後は効かないか、効果が定かではない。

◎国家予算も揺るがしかねない
 日本医師会は、現行の出来高払いの健康保険制度で最も恩恵を受けている開業医主体の医師団体だ。無駄でも不要でも、検査や治療をすればするほど儲かる。
 それが、オプジーボで保険制度が破綻すれば、日医にとって大痛手になる。だから彼らの危機意識は強い。逆に言えば、日医が危機意識を抱くほど、オプジーボの薬剤費が国家を揺るがすほどの問題になり得るということだ。
 先に明らかになったが、日本の医療費は世界でも高額で、保健医療支出の対GDP比でアメリカ、スイスに次いで、世界第3位となった。これが天井知らずとなる恐怖。

◎投薬制限もやむなし
 当面の対策は、来年の薬価改定で本来は2年に1度の改定(切り下げ)をオプジーボに限って1年で価格切り下げを行うことだが、それでも一挙に半額にできるわけではない。それ以上に保険適用患者が増え、使用が増えればパンクは明らかだ。
 早急に手を打たないと、健康保険制度の行き詰まりがすぐにやって来る。
 例えば非情なようでも高齢者には使用を認めないとか、事前に効果の有無のスクリーニングをして効果の期待できない患者には使用不可にするとかしなければならなくなるだろう。

昨年の今日の日記:「世界の金融市場の激しく揺れた1週間、スターリニスト中国の動揺を力強く跳ね返す;経済」
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