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2014年10月03日21:41

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豊中市史跡巡り９　御獅子塚古墳　／　瑞輪寺

　21日日曜日は、東光院参拝を終えた後、東北へ向かい、豊中市中枢部に展開する桜塚古墳群〔史跡〕を目指しました。
　桜塚古墳群は、豊中台地の中央、標高約20～25ｍの低位段丘上に立地する古墳群で、阪急宝塚線岡町駅を中心に東西1.2㎞・南北1㎞の範囲に分布します。
　４世紀と６世紀の二時期に亙って形成されたと推定されており、明治７(1874)年・明治12(1879)年・明治14(1881)年に大規模な調査が行われて、「壱日三捨六墳全図」「三十六墳所在総図」「諸墳略図面書上」等の絵図が編集・保存されています。
　昭和10年代に実施された土地区画整理事業により、狐塚古墳・北天平塚古墳・南天平塚古墳等の発掘調査が進み、北摂最大の中期古墳群として周知されるようになりました。
　絵図の36基に、近年の調査によって発見された桜塚第37号墳から第44号墳までの八基を加えた合計44基の古墳が確認されましたが、宅地開発に伴い39基は破壊され、現存する五基が史跡指定されています。
　桜塚古墳群は、大まかに次の四群に区分されます。
・西群　大石塚・小石塚古墳を中心とするグループ
・中央群　荒神塚古墳・桜塚古墳
・東群　大塚・御獅子塚古墳を中心とするグループ
・南群　阪急曽根駅の北東部を中心とした近年確認されたグループ

　先ずは東群の最南端に位置する南天平塚(ﾐﾅﾐﾃﾝﾋﾞﾝﾂﾞｶ)古墳です。

　昭和10年代の土地区画整理事業に伴う道路計画によって、四分の三が破壊される事となったため、昭和12(1937)年に発掘調査が実施され、円筒埴輪列を伴う二段築成、東西長27.2ｍ・南北長18.0ｍ・高さ5.5ｍの円墳である事が明らかになりました。
　南東部では、円筒埴輪列で囲まれた突出部が検出され、方形区画の作り出しが付設している事も判明しました。四分の三が道路によって破壊された後、平成３(1991)年に四分の一の残りの部分を豊中市教育委員会が再調査を実施した結果、一段目のテラスの埴輪列の上に幅７～８ｍの周壕を有する事が明らかになりました。そして、墳頂の下2.5ｍから二個の割竹形木棺が発見され、それと共に、彷製六獣鏡・鉄刀・鉄剣・短甲・衝角付冑が副葬され、棺蓋の上には革盾を載せた形跡が認められました。また、木棺の両端外側には鞍・鐙（ｱﾌﾞﾐ）・轡（ｸﾂﾜ）・杏葉（ｷﾞｮｳﾖｳ）等の馬具一具を置き、北側外側には鉄槍一筋を横たえ、赤・黒とりどりに彩られた弓数張が添えられていました。槍は木質部が腐朽したにも関わらず、柄の表面の糸巻きが漆で固められた被膜となって遺存していたため、槍先から石突まで3.3ｍにおよぶ全形を確認出来たそうです。

　
　南天平塚古墳の北方には御獅子塚(ｵｼｼﾂﾞｶ)古墳があります。

　御獅子塚は南面する前方後円墳で、東西長21.9ｍ・南北長49.0ｍ・高さ3.6ｍ・周濠を含めた全長は70ｍと、東群では大塚古墳に次ぐ規模です。この古墳も昭和10年代の土地区画整理事業で後円部東側の一部は削除されたものの幸運な事に大部分は保存されました。

　その後、南桜塚小学校体育館とプール建設に際し、後円部西側の一部と前方部周濠部が破壊され、自然崩壊も激しかったので、昭和60(1985)年と平成２(1990)年に史跡整備事業と共に発掘調査が実施されました。墳丘は二段築成で二段目斜面のみ葺石を施すという特異な外観を持ちます。円筒形埴輪が密に樹立、中には須恵質の物も含まれます。形象埴輪片が数多く出土しており、種類は家・蓋・靱(ﾕｷ)・盾・動物等が存在、初期須恵器の高杯(ﾀｶﾂｷ)片も出土しています。

　後円部墳頂では主体部が上下で直行する二体検出されました。
　第一主体部では、鋲留め技術導入期の試行製品と思われる三角板鋲留短甲(ｻﾝｶｸﾊﾞﾝﾋﾞｮｳﾄﾞﾒﾀﾝｺｳ)や小札鋲留衝角付冑(ｺｻﾞﾈﾋﾞｮｳﾄﾞﾒｼｮｳｶｸﾂｷｶﾌﾞﾄ)など歴史的に貴重な遺物の外、農耕具や馬具類・漆塗り革製盾が良好な状態で出土したほか、勾玉などの玉類も約400点出土しています。
　第二主体部では、甲冑と頸及び肩甲の付属物を伴う一組・大刀一口・槍三口・鉾四口・鉄鏃（ﾃﾂﾔｼﾞﾘ）184本・鎹（ｶｽｶﾞｲ）・盾等が出土しました。これらの鉄製武器・武具類は、大陸系技術導入期の様相を如実に表している貴重な資料であるのみならず、革製盾の全貌が明らかにされた稀有な例で、取り上げ保存された唯一のものです。

　御獅子塚古墳の北隣の公園内に大塚古墳があります。

　桜塚古墳群の東群を代表する古墳で、昭和10年代に周辺一帯に施された土地区画整理事業により北と西の裾部を一部削除されました。昭和50年代に入り、墳頂部に副葬遺物が露出するようになったため、昭和58(1983)年に緊急性を重んじて掘調査が実施され、平成２(1990)に史跡公園として整備されました。

　高さ約18ｍの三段築成の円墳で、東西長56.0ｍ・南北長46.9ｍで、幅12～13ｍの周濠を含めると直径約80ｍに達します。造成は５世紀初め頃と推定され、墳頂部には南北方向に主軸を採る並列された三体の主体部が存在しました。主体部は大きく分けて東槨（ﾄｳｶｸ）と西槨と呼ばれ、東槨は拳大の石で棺の両端を取り巻くように充填させる特異な構造ですが、その殆どが既に流失していました。西槨は盗掘により既に大きく損壊していましたが、長さ7.1ｍにも達する長大な割竹形木棺が二つ南北に並べられていたとされます。

　東槨木棺内部からは、鏡・鉄製甲冑・鉄製剣・盾などの副葬品が出土し、調査発掘後、これらは重要文化財に指定されて、豊中市教育委員会に保管されています。

　特に三角板革綴襟付短甲(ｻﾝｶｸﾊﾞﾝｶﾜﾄｼﾞｴﾘﾂｷﾀﾝｺｳ)は保存状態が良く、貴重な考古資料となっています。

　大塚古墳から西北へ向かうと、江戸時代後期建築の奥野家住宅〔登録文化財〕があります。

　この一帯は江戸時代には、桜塚村と呼ばれ、武蔵国岡部藩(現埼玉県深谷市)安部(ｱﾝﾍﾞ)家の飛び領地となっており、奥野家は代々庄兵衛の名で庄屋を務めていました。明治時代には村長となっています。屋敷地は能勢街道と箕面街道を繋ぐ脇街道沿いにあり、面積1680㎡の敷地の中に主屋・門長屋・土蔵５棟・附属屋・中門・露地門等が建ちます。

　平成７(1995)年の阪神大震災によって内部の建物群は大きな被害を蒙りましたが、大半が修復されました。

　奥野家住宅から北方へ進むと、黄檗(ｵｳﾊﾞｸ)宗雪峰(ｾｯﾎﾟｳ)山瑞輪(ｽﾞｲﾘﾝ)寺があります。

　瑞輪寺は元来桜墳(ｵｳﾌﾝ)山善光寺と呼ばれた真言宗の寺院で、原田神社の神宮寺として大きな境内を持っていました。本尊が平安時代後期の作なので、その頃の創建と推定されます。

　室町時代には臨済宗の僧一休宗純(1394～1481)が20年余り在住し、境内の墓地には一休の子岐翁紹偵（ｷﾞｵｳｼｮｳﾃｲ）の墓と伝えられる僧塚があります。

　しかし、天正７(1579)年の荒木村重の乱で焼失してしまい、元禄年間(1688～1704)に再興して現在の寺号に改めた際、禅宗の一派黄檗宗に転向しました。

　瑞輪寺の本尊は木造漆箔(ｼｯﾊﾟｸ)薬師如来坐像〔豊中市指定文化財〕です。像高89.5cm、膝張75.5cmの桧材寄木造りの身金色像で身部以外には後補の泥絵具が施されています。法衣を偏袒右肩（ﾍﾝﾀﾝｳｹﾝ）に着し、左手には薬壷を請け、右手は施無畏印（ｾﾑｲｲﾝ）に作り、結跏趺坐（ｹｯｶﾌｻﾞ）しています。平安時代後期の注目すべき古像ですが、乳首と部分的な泥絵具による着色は後補によるものです。