3つの質問に答えるだけ
by マット・エイブラハムス
翻訳 前田 雅子
2024.03.19
コミュニケーションを効果的にする単純なフレームワーク
master1305/Getty Images
サマリー:現代社会においては、あらゆる会話や交渉、売り込みの影響力が高まっている。そうした中で明確で簡潔なメッセージを発信できれば、コミュニケーションの目的が達成しやすくなる。本稿では、さまざまな場面で欠かせな... もっと見る
コミュニケーションの目的を達成するフレームワーク
急速に進化する現代社会においては、あらゆる会話、交渉、会議、売り込みが個人的な成功や仕事上の成功に影響を与える可能性がある。そのため、効果的なコミュニケーションは、かつてないほど重要になっている。明確で簡潔かつ論理的な方法でメッセージをまとめると、コミュニケーションの目的が達成しやすくなる。
本稿では、即席のやり取りから重要なビジネスのプレゼンテーションまで、さまざまな場面で欠かせないツールとして役立つ、3つの質問から成るフレームワークを紹介する。まずは体系化されたアプローチを持つことがなぜ有用なのかを説明したい。
コミュニケーションにおけるフレームワークの有用性
体系化によって、ロードマップを得ることができ、伝える側と聞く側の双方を導く、論理的なアイデアのつながりを提供してくれる。入念に練られたストーリーや、うまく構成されたレシピのようなものだ。そして、それを使うメリットは豊富にある。
・明快さ:体系化することで、曖昧さがなくなり、メッセージがわかりやすく、簡単に理解できるようになる。
・記憶:体系化された方法で提示されたアイデアは記憶されやすく、コミュニケーションのインパクトを高める。私たちの脳は、体系化された情報を符号化し、記憶するようにできている。
・説得力:論理的なフレームワークがあると、意見を一つひとつ展開でき、オーディエンスを理路整然とした議論に導くことで、説得力が高まる。
・効率性:体系化することで時間と精神的エネルギーが節約され、複雑なアイデアを消化しやすく、実行可能な要点に単純化することができる。
・不安の軽減:あらかじめ定義されたフレームワークを持っていると、言うべきことをどう伝えるかがわかり、内容を忘れにくいため、コミュニケーションの不安が大幅に軽減される。
「事実、意味、行動」のフレームワーク
多機能性と信頼性で知られるスイスアーミーナイフのように、このフレームワークは柔軟性があり、さまざまなコミュニケーションの場面で使うことができる。フレームワークは次の3つのシンプルな質問で構成されている。
・事実(What):現実、状況、製品、立場などを説明し、定義する。
・意味(So What):オーディエンスにとっての意味や重要性、関連性を論じる。
・行動(Now What):質問を受ける、次のミーティングを設定するなど、行動のきっかけとなるものや次のステップを説明する。
このフレームワークは、あなたが考えを整理するのに役立つだけでなく、オーディエンスにとって道標の役割を果たし、情報が追いやすくなり、それに従って行動がしやすくする。
フレームワークの実践例
フレームワークの実践
このフレームワークは、実践の場でどう機能するのか。例を3つ挙げよう。
1. 紹介
人や物の紹介は、とりとめがなく、混乱しがちだ。このフレームワークを使うことで、これから何が起こるかが明確になり、期待値を設定できる。
人を紹介する時
・事実:クラーク博士をご紹介できることを光栄に思います。愛着理論に関する博士の知見をお話しいただきます。
・意味:博士の研究は、多くの人々の日々の決断の仕方を変化させてきました。今夜ここを出る時には、みなさんもきっと考え方が変わっていることでしょう。
・行動:さっそくクラーク博士をお迎えしましょう。
物を紹介する時
・事実:当社の製品の最新バージョンをご紹介できることを嬉しく思います。今回のリリースでは、多くのユーザビリティを向上させ、スピードも改善しました。
・意味:お客様はより簡単にタスクを完了し、時間とお金を節約することができます。
・行動:このカンファレンスを終えたら、ぜひ本日中にインストールしてください。
2. 質問に答える
質問をされたら、このフレームワークを使う絶好の機会だ。たとえば、面接でこう聞かれたとしよう。「なぜあなたはこの仕事にふさわしい存在といえるのですか」
・事実:私は顧客と接する仕事で12年以上の経験があり、新しいシステムへの移行や新しいプロセスの導入などに取り組んできました。
・意味:こうした経験は、御社のお客様に質の高い成果を提供すると同時に、御社の導入プロセスの合理化を支援するのに役立ちます。
・行動:私の適性について、私の元クライアントにお尋ねいただければ幸いです。
3. フィードバックを与える
筆者は、建設的なフィードバックを提供する必要があるクライアントには、このフレームワークを使うよう指導している。たとえば、期限内にリポートを仕上げられなかった同僚がいるとする。
・事実:あなたのリポートが、決められた期限内に提出されていないようですね。
・意味:ピッチの練習に支障をきたし、クライアントとのミーティングが台無しになるかもしれません。
・行動:明日の朝までにリポートを完成させてください。私に手伝えることがあれば教えてください。
結論として、体系化されたコミュニケーションをマスターすることで、メッセージをつくり上げ、伝える内容に優先順位をつけることができると同時に、オーディエンスもあなたの情報を消化し、記憶することができる。「事実、意味、行動」のフレームワークを使えば、さまざまなコミュニケーションの状況を乗り切ることができ、あなたのメッセージが相手に届くだけでなく、確実に内在化され、行動に移される。
"A Simple Hack to Help You Communicate More Effectively," HBR.org, January 04, 2024.
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