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p.37
カレンシー・ノートが引き出されるには、そもそも諸銀行のイングランド銀行預け金(「銀行家預金」)が存在していなければならない。銀行がイングランド銀行からカレンシー・ノートを引き出すと、イングランド銀行は当該銀行の預け金残高から同額をカレンシー・ノート償却勘定に移転するからである。…そして、銀行が次の引出しをするには、当該銀行のイングランド銀行預け金残高が回復していなければならない。
p.43
要するに1928年法は、カレンシー・ノート債務とその債務に対応する資産をイングランド銀行に移転し、それにともなって同行の保証準備発行額を増加させ、同行券との交換でカレンシー・ノートを回収することによって、カレンシー・ノートのイングランド銀行券への吸収＝統合を達成しようとするものだったのである。
p.50
経済の外部から銀行券を増減させうると考える外生説が想定しているような統制は実現していないのである。外生説は、金本位制になれば金準備増減によって兌換銀行券流通額が調整されるという通念とともに葬り去られるべきではないだろうか。
p.52
金本位復帰＝金輸出解禁・兌換維持によって銀行券統制と外為相場安定を図ったはずなのに、為替操作による外為相場安定によって金本位維持＝兌換維持を図る。文字通り本末転倒ではないか。この転倒した事態のどこに、金準備による銀行券統制の成功があるのだろうか。どこに外生説が成立しているのだろうか。
p.53
また、兌換を停止すれば「中央銀行は金準備の増減を顧慮することなく貸出を拡大し、銀行券発行を増大させることが可能となる」16)とか、「兌換停止下では中央銀行はいくらでも銀行券――不換銀行券――を発行しうる〔以上、いずれも傍点引用者〕」17)等々、同様の説明は枚挙に暇がない。しかし、その説明には何の根拠もないことは図3−3に明らかである。経済の実態はそのような外生説的認識が現実化しないことを示したのである。
p.55
1931年の金本位放棄は、イネスが述べたように、銀行券が金兌換によって支えられていたわけではないことを白日のもとにさらしたのである。銀行券は経済の外部から(金準備によって)増減させうると考える外生説の崩壊は明らかではないだろうか。
p.56
図3‐4は、銀行が保有する文を除いた現金および一般銀行の預金、すなわちM1と呼ばれるものにおおむね相当するものをマネーストックとみなし、それと金準備の変動を対比したものである。
p.57
イングランド銀行券と市中銀行のイングランド銀行預け金との合計をマネタリーベースとみなし、これを上述のマネーストックとみなしたものと対比してみても、マネタリーベースがマネーストックを統制しているとみてとれる状況は現れない。
p.60
当時、低額面券は過剰発券をもたらす一因とみなされて、5ポンド未満のイングランド銀行券は発行されていなかったので、低額面通貨は金貨しか流通しておらず3)、そもそも不足していた。それゆえ、銀行券全体としては発行元への還流が始まっても、5ポンド未満券は還流してこなかったのである。
p.61
この事態は、銀行券というものが、たとえ発行銀行によってでさえ、経済の外部から恣意的に増加・減少させられるものではない、ということを示しているはずである。
p.62
低額面券が必要とされる領域では、高額面券が使用される領域での経済状況が活況か低調かにかかわらず、独自に取引量が変動する場合もあるに違いない。それゆえ、貨幣量は外生的に供給されるものとして把握されえないのである。
p.65
金融政策や財政政策には実体経済への作用を通じて間接的に貨幣流通量を増減させる方法・手段や能力があるとしても、貨幣流通それ自体はあくまで経済内部で行われる活動の結果であるというしかない。すなわち、貨幣は内生的に供給されるのである。
p.66
この光景を目のあたりにしたケインズは、5ポンドないし10ポンド程度を引き出そうとしているだけの顧客にさえ、株式銀行がイングランド銀行券をもたせようとして金貨での払戻しを渋ったことを「自殺的政策」であると非難し、イングランド銀行本店のあるスレッドニードル街に出現した、銀行券の兌換を求める行列を「恥ずべき光景」と称したのである7)。
セイヤーズ(Ricard S. Sayers)は、この時に株式銀行が金貨を出し渋ったのは自行内に金を確保しておこうとしたためではなく、銀行家たちは金準備の相当部分をイングランド銀行に渡すことを考えていて、その場合に金プールへの貢献を大きくできるようにするため金保有を図っていたのではないかと推測している8)。たしかに、イギリスの主要銀行集団である手形交換所加盟銀行(Clearing Banks)は、緊急時におけるイングランド銀行への協力方法を数年来議論していた。また、セイヤーズも指摘しているがケインズも後からそういった事情を知ったのか、株式銀行批判をのちに弱めている。
p.73
楔形文字による記録の多くは金融に関するもので、たとえば地代や手数料などの負債が記録・計算されていたのである。負債は銀で計算されていたが、銀貨は存在していなかった。…また、そのころのメソポタミアでは、都市にある諸々の物品も銀で評価されており、いわば銀建て価格をもっていたのであるが、市場で売買されていたわけではなく、すでに述べたように銀貨は存在していないので、銀貨が交換媒介手段として流通していたわけでもなかった11)。
p.75
16) 以上に関しては、宇野[1998]に加えて、田中・金関ほか[1998]；国立歴史民俗博物館編[1998]；歴史学研究会編[1999]；鈴木[2002]；今村[2015]等々を参照。なお、考古学・古代史・人類学・民俗学等々における貨幣研究は、通常の経済学と異なり、貨幣を単なる交換手段や支払手段としてのみ捉えるのではなく、その呪物性・記号性(象徴性)などの側面、あるいは贈与物・副葬品としての使用といった多彩な機能を考察に取り込むことで、貨幣認識の充実に大いに貢献してきた。ただし、本書の視点からは、古代の貨幣を検討するに際して「信用」を問う意識が若干薄いのではないかと感じられる面が皆無ではない。もちろん、その状況を招いた責任は物々交換神話に支配されてきた経済学の側にある。しかし、そうは言いつつも、「経済学の神話に影響を受けていたのだから仕方がない」で片づけるのは惜しいと思われる場合がある。たとえば、文書による支払の例が確認されたとき、それはすでに貨幣が存在していることを示すと解釈されている場合がある(田中・金関ほか[1998]46頁参照)。この例に関してはその解釈が正しいのかもしれない。いうまでもなく筆者にはその当否を判断する能力はないので、この解釈を批判する意図は毛頭ない。したがって、以下はあくまで一般論として述べることであるが、仮に、信用取引かもしれない実態を捉えているのに、物々交換神話に呪縛されていたため、文書支払を貨幣の先行的存在を前提に解釈してしまう(文書は貨幣によって保証されていると断定してしまう)としたら、それは非常に残念なことである。信用先行の実例にせっかく遭遇したのに、すなわちわれわれの認識を深める契機となるかもしれない歴史的現実が目の前に現れているのに、それを経済学に根強く残る物々交換神話に沿って解釈してしまう、ということは避けるべきである、と考える。
p.79
そこで、神話の呪縛を解いていく試みの一環として、大きな石貨(英語ではstone money、現地語の音に近いカタカナ表記は「フェ」または「ライ」)で知られるヤップ島における決済の実情を一瞥しよう。…
…つまり取引から生じる債権と債務が記録され、債権と債権、債務と債務が相殺され、相殺後に残る差額は繰り越されて次の取引に使用された。石貨が決済のために運ばれて移動することは皆無だったとはいえないようだが、基本的には石貨は人々の家の近くや道端などに置かれたままだった。また、石貨はヤップ島から約500キロも離れたパラオ諸島の島のひとつから切り出されたもので、ヤップ島に運ばれる途中で嵐に遭って海底に沈んでしまった場合もあったが、人々は海底にあって誰も見たことがないその石を、通常は持ち主の家の壁などに立てかけられているものと同じく石貨として認めたという。
p.80
なお、本書の性格上、詳しく立ち入ることは控えるが、ヤップ島の石貨は、ここで述べているような信用取引の決済手段であるというよりは、お祝い、お礼、お詫びなどの気持ちを表すのに使われるもののようであり、信用取引における債権・債務を示すという役割もそのような全体的な文脈から理解すべきかもしれない。…
…たとえば、ケインズは1915年にファーネス(William H. Furness)の『石貨の島(The Island of Stone Money)』に関する論説において、「金準備に関する現代の実務はヤップ島のより論理的な方法から学ぶことが大いにある」32)と述べている。かなり後になるがフリードマンも、ヤップの島民は、貨幣とは信用取引をしてそれを清算するシステムのことであると理解している、と評価した33)。
なお、ケインズは1914年に、イネスの1913年論文への批評において、信用の方が貨幣よりもはるかに古いというイネスの主張に関心を示している34)。
p.93
この視点のもとでは、銀行券は振替決済と関連をもちえず、結局、発券後には売買に使われ流通していくものになるのである。銀行券が流通手段として把握されてしまうと、外生説的認識が入り込む。銀行券は信用関係の形成によって生まれ、信用関係の清算によって消滅することが軽視されてしまうからである。「近代的商業信用」の理論は、商業手形振出と銀行券発行をことさら重視する一方で、信用の先行性あるいは振替決済がもつ根源性が問題意識になかったため、銀行券を発行者の債務として信用システムの中で捉えられなかった。それゆえ、そのような意図はなかったとしても結果的に、銀行券を流通手段として把握する道を開き、外生的把握の普及を助長したかもしれないのである。
p.94
この学説は、�，之从兒鏝Φ罎砲弔い峠劼戮燭里汎瑛諭⊂Χ伴蠏然箘�によって発行されるものとした点では銀行券を内生的に把握しているように思われるが、銀行券と振替決済の関連を十分に問わないので、発券後の銀行券を結局は流通手段にしてしまうたとえ一般的流通に入って流通手段として機能していても銀行券はあくまで発行銀行の債務であり、信用関係の先行的生成によって生まれ、信用関係の清算によって消える、すなわち銀行券は外部からコントロールされえない、という銀行券の内生性をあいまいにしてしまったのである。銀行信用は発券から始まり預金通貨創出へと展開していった、と逆行して考えるこの貨幣信用論研究も、発券それ自体に巨大な意義を付与した経済誌研究と同様、外生説的認識を生む恐れを内包していたように思われる。銀行券流通から預金通貨決済へ、つまり貨幣から信用へ、という現実とは逆の順序を固定観念として大前提にしなければ、銀行券を流通手段として捉える傾向も避けられたのではないだろうか。決済システムのなかで口座残高を増減させるものとして銀行券を位置づけられなかったのも、信用先行視点を欠いた帰結であるといえよう。
p.96
預金にせよ現金(銀行券)にせよ、それが生まれるには先行して信用取引が行われていなければならない。逆にいうと信用取引が先行して行われていれば貨幣は生れる、という信用先行視点が保持されていた場合、流動性ジレンマ論などという見解は生れなかったのではないだろうか。流動性ジレンマ論は信用先行視点を欠いたからこそ生まれえた見解である。そして、国際収支赤字が流動性を形成するという認識は、金融システムにおける信用の機能を考慮に入れていない、外生説なのである。
p.97
本章第3節で同様のことをすでに述べたが、信用取引が先行し、そこから生まれたイマジナリー・マネーによって決済がなされていく世界では、1ドル兌換紙幣は1ドル金貨によって保証されているので1ドルとして通用するわけではない。1ドル金貨の方も1ドル紙幣の価値を裏付けるためにあるものではない。1ドル紙幣も1ドル金貨も信用取引を決済する＝債務を消滅させるイマジナリー・マネーとしては同一である。貨幣は信用取引を決済していたイマジナリー・マネーから生まれたものであり、債務を消滅させられればそれで任務完了、とは考えないで、貨幣は金属価値によって支えられていると捉えてしまうと、金属が多くあれば貨幣も多く発行できるということになるだろう。それはすなわち外生説である。
…アメリカは大量の金を保有していたのでドルが国際通貨だった、というわけではないことが証明された。それは貨幣の内生性の証明につながるのではないだろうか。
p.105
こうしてB氏の最初の信用供与(A氏振出手形の買取)甲貨1.0は甲貨1.2に増えて戻ってきたわけである。
この場合、B氏が実質的に利子を得ることができたのは、上の設例において甲貨の相場が乙地より甲地において高いからであるが、これは、説明に都合のよい仮定を恣意的においているのではない綿密な実証研究にもとづき大黒俊二の指摘した条件、すなわち「基点貨幣が基点地において従点地におけるよりも高く評価される」12)に従って設定したものである。
p.107
とくに、ロスチャイルド(Rothschild)商会、ベアリング(Barings)商会などをはじめとする、名声を確立した有名なマーチャント・バンカーは、貿易手形の引受業務(本来の債務者宛の為替手形をマーチャント・バンカー宛に振り出すことを認める信用供与)を大々的に行なった。そして、それにともなって世界の輸出入の大部分がロンドンのマーチャント・バンカーから貿易信用を受けるようになったので、ほとんどの為替手形がロンドン宛に振り出されることになったのである。
p.108
重ねて指摘しておくが、ポンドで決済されるということは、ポンド金貨やポンド紙幣で支払・受取が行なわれるという意味ではなく、ポンド建て預金の振替で清算が済むという意味である15)。
p.111
本書でも、内生説を解く銀行実務家の信用創造論を取り上げつつ、何度か説明してきたことであるが、振替決済システムがあるからこそ、銀行による顧客口座への数字記入が信用供与すなわち預金通貨の提供(貨幣創造)になるのである。…
…詳細は省くが、第5章においても述べたように、アムステルダム銀行に口座をもつ者は、一定重量の金額貨幣に結び付けられてはいない、帳簿上にのみ存在する預金通貨であるバンク・マネーで決済を行なっていたのである。
p.114
もしB氏がF氏に引受信用を供与しなかったら、いったい何個の取引がそれぞれ別々に決済されねばならなかっただろうか。
p.117
このように考えると、近年は忘れ去られたようにも感じられるが、かつて八木紀一郎などが提起していた銀行業務と貨幣取扱業務を一元的に把握する必要性を説く議論は、意外に重要な提起だったと気付かされる34)。銀行業務と貨幣取扱業務を統一的に捉えれば、物資の取引の前に先行して信用取引があること、したがって中心地に為替手形と決済が集中し、口座振替で多角的に決済が完了されていくシステムこそ近代的銀行であることを理解できたのではないだろうか。貨幣を信用システムから捉えていなかったので、貨幣取扱業務が銀行業務(貸借業務)の付随物ではなく、振替決済システムを形成する中軸だったことが見えなかったのであろう。
p.124
本書においてすでに何度も述べてきたことであるが、金融機関同士の振替決済を行ないうるシステムができれば、個別金融機関の与信には現金は要らず、顧客の口座への記帳で貨幣を創造できる。記帳した数字が預金通貨として機能する。信用取引の先行によって貨幣(預金)は生まれるのである。逆に、先行する信用取引がなければ、預金は生まれず、預金引出しによって起こる銀行券発行(発券)も起こりえない。資本主義的金融システムにおいては、信用の先行がなければ貨幣(預金・銀行券)は生まれないのである。ロンドンのゴールドスミス銀行によって、しかも預金受入・貸付という銀行業務ではなく、出納・決済代行サーヴィスのような貨幣取扱業務を基盤にして構築された振替決済システムは、信用の先行がなければ貨幣が生成しないこと、すなわち貨幣は内生的にしか供給されえないということを示しているのではないだろうか。
p.126
イングランド銀行が生まれ落ちたのはそのような世界だった。預金を受け入れ、さまざまな支払指図を認めて決済の便宜を提供せねば、銀行として生き残れなかったと思われる。…そして、すでに何度も述べてきたように、われわれはそこに信用の先行を見出し、それをもって資本主義経済における貨幣の内生性を実証しようとしているのである。
p.133
誕生日と死亡日が並んでいて寿命が一目瞭然になっている償却済み一覧表が雄弁に物語っているように、手形(銀行券)は債権・債務関係の発生とともに発行され――あるものは途中で金額を減らしつつ――、還流して(支払われて)債権・債務関係を消滅させるのである。
p.138
ランニング・キャッシュ手形(銀行券)は、預金、手形割引、貸付等々何らかの信用取引が行われて初めてイングランド銀行の債務として発行され、経済の内部に入っていくのである。信用関係の形成が先行していなければ、発券は生じない。
p.139
34) 「狭義の振替決済」という表現を用いる理由を説明しておく。「ある預金口座の残高を減らして他の預金口座の残高を増やす」際に、債務者が何らかの支払指図手段を用いて銀行に振替を指示する場合と、みずからの口座から銀行券を引き出して支払う場合をともに「(預金)振替決済」と呼ぶことは不適切かもしれない。狭義には前者のみが「振替決済」とされるべきであろう。しかし、後者の場合も、決済にとって口座が前提となっており、債務者が支払った銀行券が――さらに何人かの手を経たとしても――誰かによって口座に入れられるならば、債務者の預金が有していた対銀行債権が――銀行券を介在させてではあるが――別の口座に移転されたという点で前者の場合と同じである。そうした意味で、本書では「振替決済」を基本的には後者を含む広い意味で使用してきたが、以下、前者のみを指す場合には「狭義」と付す。
p.140
つまり、銀行預金の増減あるいは銀行券の流通とは、先行して行なわれた信用取引によって生まれた預金を前提にして、先行して生じている債権・債務を解消するために預金残高を増減させる動き(振替決済)なのである。いうまでもなく、振替決済システムが形成されていなければ、預金は預金通貨として機能できない。これが、信用システムから捉えた貨幣像である。
p.148
序章で紹介した、「「初めに預金ありき」という前提は不必要なのである」11)という板倉譲治の発言に対しても、もはや何の疑問も浮かばないであろう。「貨幣がまずあって、それが貸借されるのではなく、逆に貸借関係から貨幣が生まれてくる」12)のである。
p.150
銀行間の決済が口座振替で行なわれるシステムが形成されているなら、「信用の先行」にもとづいて貨幣は内生的に供給される、という見解の正しさは何の影響も受けない。
p.151
通貨学派には発券の次元しかみえていなかったのに対し、銀行学派には信用の次元がみえていた。銀行学派は、発券を集中する事には実質的な意味はなく、金融危機に際しては信用を供与することこそ必要であり、そのために準備金確保が重要であることを理解していたのである。すなわち、銀行学派が認識していたのは、発券を独占した銀行の必要性ではなく、金融パニック時に徹底的に信用を供与する銀行、またそのために平時から準備金維持に配慮する銀行の必要性である。となれば、必要なのは発券の集中ではなく、準備金の集中であろう。そして、銀行学派は、イングランド銀行が好むと好まざるとにかかわらず実態として「金融システム全体の準備金保管者」になりつつあるのを認識し、同行はその立場を自覚した行動をとらねばならないと考えていたのである。
以上のような銀行学派の見解から分かるように、振替決済システムを安定させるために必要なものとは、「銀行の銀行」なのである。
p.155
ちなみに、連合王国レベルでならイギリスは今日でも発券集中は完成していない。
p.158
図8‐2に示された事態は準備金集中の進展を表しているのであり、イングランド銀行は市中銀行の準備金の保管者として「銀行の銀行」になったのである。
p.163
モーガン(Edward V. Morgan)は、「銀行預金は、もしも要求されるならば銀行券で支払われるが、イングランド銀行が同行の銀行券に対して支払うことができる手段は他の紙券を除けば何もない」と述べ、「ポンド券には依然として「……持参人に支払うことを約束する」という記載があるが、厳密に言えば、これは「私はこの紙片が汚れたらそれを同様に刷られたきれいなものととりかえるであろうことを約束する」と読むように改められるべきである」30)と主張している。
p.165
そしてその時にイングランド銀行は、「イギリスに銀行口座をもっているなら最も間便で最も迅速な交換方法は旧券を預金することである」と広報していた34)。
p.167
不換化した券に支払うと書かれているのはどういう意味か、何を払うのか、ということを問うその前提にある認識は、不換通貨ドルの流通根拠を問う前提にあった認識と同じだったのではないだろうか。
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■住宅ローン、固定型引き上げへ＝長期金利上昇、財政圧迫も
(時事通信社 - 09月12日 09:01)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=7558936
債券市場で進む長期金利の上昇は、家計や企業活動にも影響を及ぼす。住宅ローン金利は、固定型のさらなる引き上げが不可避で、企業の資金調達環境も変化しかねない。政府では国債の利払い費が膨らみ、財政運営を圧迫する恐れがある。
７月の日銀による金融政策修正以降、大手銀行は住宅ローンの代表的な「固定期間１０年」の基準金利を２カ月続けて引き上げた。住宅ローン金利の参考指標となる長期金利の上昇が続けば、「固定型金利を引き上げる可能性が高い」（大手銀行）との声は多い。
一方、住宅ローン利用者の７割が選択しているとされる変動型金利は短期金利の動向に連動する。日銀の審議委員からは最近、マイナス金利政策の解除時期を巡る発言が出ており、植田和男総裁も一部報道機関のインタビューで今後の「選択肢」として言及した。「実際に解除されれば、変動型金利の上昇は間違いない」（ニッセイ基礎研究所の福本勇樹金融調査室長）といい、変動型の利用者にも影響が及びそうだ。
長期金利の上昇は、先進国で最悪水準の日本の財政状況も圧迫する。財務省の試算によると、１０年債の利回りが今年１月時点の想定より１％上昇した場合、借金に当たる国債の利払いや返済に充てる「国債費」は２６年度に３．６兆円膨らむ。金融政策の追加修正があれば長期金利に上昇圧力が加わり、国債費がさらに上振れする可能性もある。政府予算で１１０兆円を超す一般歳出総額に占める国債費の割合は、４分の１程度に達する。利払い費の負担が重くなれば、重要な政策経費に予算を振り向ける余地が一段と狭まることになる。
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