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2023年09月01日23:24

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ソグドからウイグルへ―シルクロード東部の民族と文化の交流 汲古書院 – 2011/12/1 森安 孝夫

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p.292
(74)…さらに片山章雄氏は、この諸部族がウイグルのいわゆる「九姓」と対応することを明らかにした。つまり、甘州ウイグルにも東ウイグル可汗国時代の九姓がすべてそろっていたことになる。「亡命政権」といえる甘州ウイグル政権に、なぜ九姓がそろっているのかはわからない。「ウイグル可汗国」としての体裁を整えるために、名前だけを漠北時代どおりにそろえたのかもしれない。
p.305
U4921では梵天(=Skt. Brahmā)、帝釈天(Skt. Indra)の他、那羅延天(=Skt. Visnu)、大自在天(=Skt. Mahesvara)、Skandhakumāra、Kapila、Manibhadra、Mišan、Sar...、など特別な神々にも功徳が回向されている。
p.353
ウイグル人マニ教徒にとって、この「罪の赦し」を示す術語が、パルチア語起源でソグド語を経由して借用されたkrmšuxun / krmšuhnであり、「罪の赦し」を乞うための決まり文句がやはりパルチア語に由来するmnastar xirzaとyztan astar xirzaであった。
 mnastar xirzaの原語やPth. Man āstār hirzā!であり、その意味が「私の罪を赦したまえ!」であることは、学界では周知の通りである(15)。これは一般マニ教徒用の懺悔書であるフワーストヴァーニーフトXuāstvānīft(Sogd. Xw'stw'nyβt; Uig. Xwastwanivt)でも頻繁に使われる最もポピュラーな決まり文句である。
p.357
これは元来、仏教の「六波羅蜜」の1つであるSkt. ksānti「忍辱・堪忍」に由来する言葉であるが、ウイグル仏教ではこのkšantiという語は「忍辱」の意味で使われることはほとんどなく(それはウイグル語のsärinmäkに取って代わられたから)、もっぱら「(罪の)赦し、容赦」並びに「懺悔、罪の告白」の意味で広く使われるようになった[cf. BHtB, pp. 407-408]。アスムッセンによれば、Skt. ksāntiがウイグル語に入って「(罪の)赦し、容赦」の意味で使われるようになるのは、途中でトカラ語を経由した際に、その意味に変化したためであるという[Asmussen 1965, pp. 146, 153]。…

 いずれにせよ、kšantiを挨拶表現に用いたウイグル語の手紙の実例はまだひとつも見つかっていない。それに対して、実際にウイグル仏教徒が手紙に使った独特の表現はUig. buyanという術語を含むものなのである。このウイグル語はサンスクリット語Skt. punyaに由来するもので、"blessed virtues, religious merits; all good deeds, meritorious deeds; the blessing arising from good deeds"という意味を持っている(25)。
p.362
öngはülüg/ülüšと同義であり、öng ülügという類語重複で「分け前」を意味していることにもはや疑問の余地はない(28)。…
…そしてそれと同時にortuqに先行するのは常にbuyanであって、ädgü qïlïnčでないことにも注意を促しておきたい。あくまでbuyan ortuqという複合語であって、決してbuyanとortuqに分けられず、従ってbuyan ortuqlayuの場合も複合語として解釈せねばならない(30)。
p.380
キャラヴァンのことを古代トルコ語ではarqïš(46)、漢語では「般次」という。
p.382
キタイxïtay/qïtayとタヴガチtavγačの使い分けに注意すべきである。タブガチは元来は鮮卑系拓跋氏の建国した北魏を、次いで北朝・隋唐帝国を指したが、この時代は疑いなく宋朝を指している。…一方、カラハン朝のもう1つの文献遺産であるカーシュガリーKāšγarīの辞書には、yirāq yēr sāwin arqiš käldürür「キャラヴァンが遠くの土地の情報をもたらす」[CTD, I, p.129]とあるだけでなく、宋代の四川地方で特産となった高級絹織物の「鹿胎/緑胎」が、laxtāy "A red Sīnī brocade with yellow spangles"[CTD, II, p.274]として載録されている。さらに同じく当時の高級絹織物であるジュンキムžunkim「絨錦/戎錦」についても、カーシュガリーの辞書にzünqüm "A type of Sīnī brocade"[CTD, I, p. 360]とあり、カラハン朝で流通していたことが分かる。
p.385
仮に絹1匹を10万円で計算しても10億円になるから、その商品がいかに巨額であり、そのキャラヴァンがいかに大規模であったかがしのばれよう。…もしかするとほぼ同時に移動していた2〜3組のキャラヴァンの構成人数だったかも知れないが、400人で1つのキャラヴァンだった可能性も低くはない。
p.389
これらウイグル語・ソグド語の手紙において、安否確認や発信の日付が月日のみで年が明記されていない事実からも、当事者同士には月日だけで十分だったということ、換言すれば手紙の宛先である土地との間でキャラヴァンが1年に何度も往来することを当然の前提としていたことが見て取れるのである。
p.400
それは上述のソグド語=ウイグル語2言語併用の手紙[DTSTH, Texts E, G]のみならず、同時期の純粋ソグド語の手紙[TuMW, Letters A, C; *So 21009 in 吉田 2011c, pp. 23-28]においても、本稿で縷々その重要性を述べてきた術語であるキャラヴァンを指す用語として、312-314年に遡るソグド語の「古代書簡」で使われていたサルトsartではなく、なんと古トルコ語のアルキシュarqïšが使われているのである。
p.401
その一方で、キャラヴァン=リーダーを表すサルトパウsartpauは、ソグド語s'rtp'wからウイグル語に借用されていて、10〜11世紀という最古層に属するウイグル仏典にも見えているのである。
p.403
(18) ウイグル語のマニ教文献に見えるNom qutïは多くの場合、マニ教の神格であるVahman神(=Great Nous「偉大なる智恵」)を指す[cf. 森安 1991, pp. 201-202=GUMS, p. 244]。
p.451
記されていたもののうち、李氏が思い出せるものは「思力」「阿蘭」「春花」の3人で、森安は思力は古代トルコ語Siligの音写に違いなかろうと示唆した。
p.560
それにしても「兄弟」の複数形として通常期待される綴りはβr'trtであり、本来の綴りからすれば余分なアレフを添える形式はウイグル語の表記の影響と言えるかもしれない[Y. Yoshida, in:Indo-Iranian Journal 36, 1993, p.368]。
 wnx'an-cwrというマニ教僧侶の名前はベルリンにあるトゥルファン出土のマニ文字で書かれたパルティア語文献にwnh'ncwrという綴りで現れている。…

 myrparnは、かつてHenningが研究したマニ教ソグド語の人名表に現れる[cf. W. B. Henning, Sogdica, London, 1940, p.6]。
p.561
 1行目はqutluγ「幸福な、幸運な」で始まっている。



■ウイグル、チベット、香港を超えて…「台湾は核心的利益の中の核心」 中国がけん制発言を強める理由
(まいどなニュース - 06月07日 21:40)
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国際政治や安全保障に関わる人間にとって、大きなイベントが週末にシンガポールで開催された。英国国際戦略研究所(IISS)が毎年主催するアジア安全保障会議、通称シャングリラ・ダイアローグが先週金曜から3日間の日程で開催され、各国の国防関係トップらが一堂に会した。今年の会議の中で筆者が最も印象的だったのが、出席した中国軍幹部が台湾を“核心的利益の中の核心”と強調したことだ。中国は台湾をウイグルやチベット、香港と同じく核心的利益と呼んできたが、それら3つを超える重要な利益と位置づけたのである。

中国の李尚福国務委員兼国防相は4日、台湾問題について言及し、「台湾は中国にとって核心的利益中の核心であり、平和的統一に向けて最大限努力するが、中国から分裂させるような動きがあれば自らの主権と領土を守るため武力行使を排除しない」と米国や台湾を強くけん制した。近年のシャングリラ・ダイアローグでは米中が双方を強く非難する演説が続いているが、今年の会議では米国のオースティン国防長官が李国防相との直接会談を打診したが、中国はそれを拒絶するなど強気の姿勢を前面に出している印象を与えた。最近も台湾海峡や南シナ海上空では、中国軍が米軍に対して異常接近するなど挑発的な姿勢を示しているが、これらと直接会談拒否との連動性も気になるところだ。 

さて、ここで気になるのが、なぜ中国は最近になって核心的利益の中の核心という言葉を使うのかだ。今年4月、習近平国家主席は中国を訪問したEUのフォンデアライエン欧州委員長と会談した際、「誰かが1つの中国問題で不満を示せば、中国政府と中国人民は絶対に許さない、台湾問題は中国の核心的利益中の核心だ」と強くけん制した。また、日本の林外相が同月北京を訪問して秦剛国務委員兼外相と会談した際、秦氏は日中間で対話を継続する姿勢を示したものの、「台湾問題は中国の核心的利益の核心であり、日本は手を出してはいけない」とクギを刺した。

その背景は、大きく2つある。まず、米中対立の最前線としての台湾だ。日本国内でも台湾有事を巡って懸念が広がっているが、西太平洋への影響力拡大を目指す中国、それを抑えたい米国の双方にとって、今日台湾は軍事的最前線となっている。習政権の野望は台湾統一に終わらず、そこを軍事的最前線として西太平洋へ進出することにあり、米国としては何としても台湾を防波堤とする必要がある。台湾は自由主義と権威主義の戦いの最前線でもあり、中国としては何が何でも台湾を影響下に置く必要があり、それが台湾を「核心的利益の中の核心」に持ち上げているのだ。

また、台湾は、中国が掲げる核心的利益の中で唯一残された課題と言える。中国が位置づける核心的利益には、台湾の他に香港、新疆ウイグル、チベットなどがあるが、新疆ウイグル自治区では当局による人権侵害だけでなく、厳しい監視の目が行き届いており、チベットとともに習政権にとっては「平和で安定した秩序」がそこにある。国家安全維持法が施行された香港では、施行前には自由を求める人権活動家、民主派などによる抵抗が暴力という形で表面化したが、今日それは当局によって完全に封じ込められ、香港の中国化が進んでいる。習政権にとって香港も既に解決された問題となっており、今日、「ウイグル、チベット、香港が解決した。次は台湾だ」という形だ。唯一「解決していない」核心的利益を巡る問題、台湾を巡って、習政権のボルテージは上昇気流に乗っている。こういった事情により、台湾は核心的利益の中の核心になっているのだ。

◆治安太郎(ちあん・たろう) 国際情勢専門家。各国の政治や経済、社会事情に詳しい。各国の防衛、治安当局者と強いパイプを持ち、日々情報交換や情報共有を行い、対外発信として執筆活動を行う。


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