スタニスワフ・レム
本作は存在しない本の書評集という体裁をとっている。それぞれの書評に評者の記名はないから全てレムによる評と考えていいだろう。そのうえ巻頭は「完全な真空」そのものの書評というメタ構造。レムは他に「ソラリスの陽のもとに」「砂漠の惑星」を読んでいる。前者は映画で見たこともあって内容を覚えているが、後者はまったく。そして本作もずっと読み返していない。多様だが難しい短編集という印象だけ覚えている。
その印象は間違っていなかった。内容は大きく分けて三種類。(1)パロディ、パスティーシュ、嘲笑、(2)大作の概略を示す草案、(3)実現することのできない夢、とレム自身が冒頭で教えてくれる。衒学的。自宅に所蔵するSF作品の中でレムがもっとも衒学的なのではないかと思える。自身のアイディアをひけらかすという意味では「時間衝突」のベイリーに並べてもいいのかもしれないが、レムが読者に要求する知的レベルについていけない。読んでいて楽しいが理解できているとは言えない。
存在しない本の書評集というだけに、これを裁断してスキャンしてPDF化して物理的な実体を失わせるというのは躊躇わられる。でも整理しなくちゃならないし..
ログインしてコメントを確認・投稿する