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2020年05月03日21:08
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東方キリスト教の歴史 アズィズ・S. アティーヤ 教文館 2014年05月23日
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第二次世界大戦中のエジプトにクレオパトラ現る、真鍋譲治新連載などがキスカに
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p.87
コンスタンティノポリスのギリシャ修道院の敬虔な院長エウテュケス(Eutyches:ca.378-454)は、ネストリオス主義への反論で、受肉後の両性合一は、唯一の神性にあるとの見解を表明した。
p.89
今日までコプト教会は、カルケドンの悲劇を痛みを以て銘記しているし、エウテュケス主義者との断定に抗議している。コプト教会司教団は新旧ともども、ネストリオス主義教理を論破したエウテュケス主義の基本原理を拒否している。コプト教徒はキリスト両性の存在を否認したことは全くなく、その合一を主張したのである。
p.90
コプト教会は自ら単性説派と称したことは全くないが、この言葉はエウテュケス主義者に対する悪意的用語で、ギリシャ人やローマ人たちが、コプト教会とその仲間のヤコブ派教会、エチオピア教会、アルメニア教会の面目を失墜させるために捏ち上げた用語である。しかし不思議にもコプト教会はこの新奇呼称に関する論争を避け、両性説派(diophysite)と区分するための徴として、あえて受け入れたようだ。
p.91
聖アントニオスは四世紀半ば頃東方砂漠を奥へ奥へと進んだが、偶然一一三歳の瀕死の隠修士聖パウロスを見つけたという。アントニオスは若き日より砂漠での独住暮しに「完徳の生」(perfect life)を見出していた。
p.92
もうひとつの集団は聖者パラモン(St Palaemon)の隠遁所に近いテーベ地域(Thebaid)のケノボスキオンで、聖大パコミオス(St Pachomius the Great)はここで修道生活を伝授された。
p.93
第三の施設はスケティスにあったが、ニトレア南東の人跡未踏の荒野で、聖大マカリオス(St Macarius the Great)は三三〇年頃この地に修道院を建立した。
p.97
この修道会はアトリペの聖シェヌーテ〔シノウダ〕(St Shenute(47))に関係するが、彼の叔父プゴール(Pgol)は三八三年に古代パノポリスの町からナイル川を越えた新たな町スハージ郊外に、「白修道院」(White Monastery)を建設した人物で、彼はその後継者だった。シュヌーテは四五一年あるいは四六六年に没しているが(48)、その間、厳格な禁欲生活と厳しい肉体労働を課す規則を展開し、少なくとも六五年以上統率していた。彼は上エジプトの侵入者ブレミー人の逃亡兵士(49)に食料供給のため、大量の麦を穀物庫に貯蔵した。…彼は上エジプトの古代異教建造物や神殿破壊のため、修道士の武装部隊を指揮した。またこの時代は「公会議時代」(oecumenical councils)でもあったが、四三一年のエフェソス公会議に大キュリロスは恐らくシェヌーテを同伴している。四五一年のカルケドンの悲劇は、コプトのいわゆる単性説派問題に発展したが、これがシェヌーテの民族感情を激しく駆り立て、ギリシャ的概念を基本とするあらゆるコプト典礼ならびに文書を一掃する運動を計画的に推進した。
p.108
すなわちコプトはキリストの人性は神性に完全に飲み込まれたとする提言を常に異端とし、両性(神性と人性)は、混交なく、転化なく、秘儀においてひとつに合一されたとする両性教義を明確に支持した。厳格な伝統的教会の指導者たちは、ニカイア信条ならびにキュリロス定言に聖書的根拠を見出しているが、一方重要な相違点は解釈上の次元にとどめてきた。反対陣営の人々による二次資料を用いての教理研究ではなく(1)、コプト語とアラビア語の両方のコプト資料を読む者には(2)、政治権力か教会権力のどちらかの問題が存在するだけで、今も不自然に誇張される二つの信条間に相違などない。
…東方側、厳密にいえばコプト教会のアレクサンドリア師父たちが、初期三回の重要教会会議を主導し、これ以上推敲の余地ない明確な結論で導いたといえる。
p.109
しかし事態の深刻さが明らかになったのは、ローマ総督が北アフリカのヴァンダル人との戦闘、テーバイドでのブレミー人との戦闘で紛糾している機会をとらえ、アレクサンドリアの民衆が無防備で不運なプロテリオス〔皇帝派総主教〕を急襲して暗殺し、遺体を町中引きずり廻して焼却し、その灰を空に散布した事件だった。総主教座はテモテのみとなり、彼の立場は強化されたが、四七五年皇帝ゼノンは強力な単性説派支持のバシリスコス(Basiliscus)〔王位簒奪者〕により首都から追放された。…間もなくゼノンは皇帝座に復帰したが、ティモテオス・アイルーロスはやがて死去したので皇帝の罷免から免れた。ゼノンの新候補者はティモテオス・サロファシオルース(Timothy Salophaciolus)だったが、対抗馬に挙国一致で選出されたペトロス・モンゴス(Peter Mongos)がいた。テモテは四八一年に死去したので、コプトは皇帝にペトロス・モンゴスを唯一の総主教にするよう嘆願した。不本意だった皇帝は、代わりにローマの支持を受けた有力なオーソドックスの司教ヨアンネス・タライア(John Talaia)を指名した。民衆は追放されたペトロスの後継者にヨアンネス・タベンナ(John Tabenna)を選出したことで、混乱の度合いはいっそう増加した。
p.110
キリストは人性と結合しても、御父の性と同質であると宣言された。勅令「ヘノティコン」の言葉づかいには、単性または両性という明瞭な語法は注意深く避けられた。…カルケドンは公然とは拒否されていないが、「統一令」の用語は単性説派の考えに非常に近かった。…
…ギリシャ側が単性説派に譲歩するのは難しかったし、アレクサンドリア側もカルケドンが公然と破棄されるとは考えなかった。
p.111
その後のコンスタンティノポリスの司教たちは、彼らの叙階時に「ヘノティコン」に署名することで、単性説寄りの傾向はコンスタンティノポリス総主教ティモテオス時代ならびに皇帝アナタシウスが死去する五一八年まで続いた。正確には、アンティオキアのセウェロス(Severus:512-18)が、彼の有名な単性説神学論文で代表的な論客になった時期だった。
p.112
「三章」(Tria Kephalaia)で有名な、モプスエスティアのテオドロス(Theodore of Mopsuestia)、キュルスのテオドレトス(Theodoret of Cyurs)、エデッサのイーバス(Ibas of Edessa)の三人である。…
…皇帝派(メルキタイ)は帝国軍隊によって支援され、単性説派は彼ら自身の修道士軍団を保有した。…帝国総督は内政面では民族主義者の単性説派に悩まされ、国境付近ではペルシャ人、異邦人、ブレミー人たちが、禿鷹の如く徘徊していた。
p.113
皇帝は五四一年にアレクサンドリア総主教座にアポリナリオス(Apollinarius)を任命した時、同時に総主教が世俗権力に依存することなく武力で宗教政策を推進できるよう総督軍隊を賦与した。…実際悲劇は司教アポリナリオス時代から開始されたといわれ、彼は激怒する単性説派の集団を大衆の面前で虐殺し、弾圧した。
p.114
六一三年ホスローはダマスカスに入城、六一四年エルサレムは陥落し、「聖十字架」ならびに受難聖具などを首都クテシフォンに持ち帰り、彼の妻ヤコブ派キリスト教徒女帝シーリーン(Shirin)に贈った。
p.115
この単意説神学は、キリストの単性と両性に関する白熱の論議を回避し、キリストの人意と神意とは一体で、すなわち両意志は同一で、変わりなく、調和していると考えた。…これを受け入れた重要人物には、アンティオキア総主教アタナシオス(Athanasius:621-29)と、ローマ教皇ホノリウス一世(Honorius:625-38)がいた。しかし興味深いことに、アンティオキア内で最後までこれを受け入れたのはレバノンのマロン派のみで、ホノリウスの方も西方司教たちの頑強な反対に遭った。
p.116
第一段階が行われたのは六三〇年のことで、皇帝は「単意説」草案初期の支持者で一人で黒海に近いコーカサス地域のファシス(Phasis)司教キュロス(Cyrus)を思い出したが、彼はもともとネストリオス派で出生も不明だった。…キュロスは六三一年の初めアレクサンドリアに到着し――後に彼の名はアラブ資料でアル・ムカウカス(al-Muqauqas)として有名で――、自らの計画を有無を言わさず強行した。
p.118
(1) …The Christological Teaching of the Non-Chalcedonian Churches (in Arabic and English; Cairo, 1962); Kirollos El-Antouny(現在はArchbishop Basileus of Jerusalem), The Age of the Ecumenical Councils (in Arabic; Cairo, 1952), pp.172ff.同書第九章「ヤコブ派」の注二六、インドのFr. V.C.Samuelに関する文章を参照。彼はエール大学での論文に"Christology of Severus of Antioch"を著したが、用語'Monophysitism'は誤用で、結合を意味する'Meaphysitism'だったとする。
p.121
苦境に立たされたキュロス(Cyrus)〔皇帝派総主教〕は、――アラブ側は彼をアル・ムカウカス(Al-Muqauqus(5))と称しコプトと誤解していたが――、要塞明け渡しの道を選択し四五一年四月六日の聖金曜日に実行した。
p.123
一〇年間皇帝派から逃亡犯として追跡されていた単性説派総主教ベンヤミンは民衆の前に再び姿を現わし、アムルは彼の教会業務遂行が平和裡に遂行されるよう身の安全を保障した。総主教はキリスト単意論者に脅迫され背教した聖職者を許し、多数の教会や修道施設を再建した。
p.124
三人とは下エジプト総督メナス(Menas)、リーフ総督サヌティオス(Sanutius)、アルカディア(ファイユーム)総督フィロクセノス(Philoxenus)である(11)。
p.129
しかしファーティマ朝時代にコプトが誇れるのは、著名な『エジプト教会総主教歴代記』(History of the Patriarchs of the Egyptian Charch)であるのは当然だが、同著は悪明高いカリフ・ハーキム(al-Hakim bi-Amr Allah:996-1024)と同世代の、アシュムナイン(al-Ashmunain)の司教サウィーリス・イブン・ムッカッファ(Sawiris ibn al-Muqaffa')によって、種々の修道院、特にニトレア砂漠の聖マカリオス修道院の古いコプト語資料から編纂されたものだ。サウィーリスは他にも神学の諸問題に関する著作を残している。
p.130
ついにハーキムはダラーズィ(al-Darazi, 一〇一九年没)――ドゥルーズ派は彼の名に因む――が布教したイスマーイール派教義を信奉し、自らを地上でのアッラーの受肉と宣言し信奉者から崇拝されることを望んだ。…真相は恐らく、彼の姉妹シッタル・ムルク(Sitt al-Mulk)の組織的陰謀によって殺害されたということだが、カリフ自身も彼女の人柄と歩みに不満をもち彼女の生命を狙っていたのだ。
p.136
特にこの卓越した学者たちの中に、アウラード・アル・アッサール(Aulad al'Assal,アッサールの息子たち)がいた(48)が、彼らは一三世紀半ばに活躍した。
p.140
(5) 問題の多いキュロスの人間性、人物像については、Butler, Appendix, C, pp.508-26で、詳細に論じられている。彼はコプトではなく、その名前からおそらくコーカサス地域の出身と思われる。
…
(11) Butler, pp.362-3. サヌティオス(Sanutius)はギリシャ人ではなくコプトで、シェヌーダ(Shenuda)またシェヌーテ(Schenute)の名前だったといわれているが(Kamel Salih Nakhla, pp.106-7)、彼は総主教ベンヤミンとアムルとの関係樹立に、重要な役割を果たした。
p.142
(23) ある伝説はつぎのように述べている。即ちイブン・キルリスはコプトを困らせようとして、カリフ・ムイッズにマタイによる福音書(一七章二〇節)の箇所に注目するように促した。この箇所でイエスが「もしからし種一粒ほどの信仰があるなら、この山にむかってここからあそこに移れといえば、移るであろう。このように、あなたがたにできないことは何もないであろう」と述べている。そこでカリフは総主教を呼び、この言葉を信じているなら信仰が真であることを証明するために、奇跡を行なえと命令をした。総主教と教会は三日三晩寝ずに祈り続けたが、聖堂の中で総主教がまどろんだとき、聖母が夢の中でひとりの無学だが敬虔ななめし革業者を差し示した。かくして総主教は信仰の人を見いだし、聖職者と信徒たちが神の憐れみを賛美している間にムカッタムの丘は絵を見るように移動したが、その讃美する背後にあの貧しく謙遜ななめし革業者がいた。
もうひとつの伝説は、カリフがこの出来事にことの他感動を覚えキリスト教を系統的に研究しはじめ、ついにその真理を確信するに至り、洗礼を受け後半の人生を息子に座を譲り、その後修道院で瞑想の日々を送ったという。この物語は前コプト博物館長の故マルコス・スマイカ・パシャにより再現されたが、著名なムスリム作家、アハマド・ザキ・パシャならびにアブダッラー・エナーンによって厳しく否定された。
p.145
(48) これらの中には、al-Safiy Abu al-Fada'il,al-As'ad Abu al-Faraj Hibat-Allah,al-Mu'taman Abu Ishaq Ibrahimらがいる。
p.151
ナポレオンが上エジプト征服を完遂するためデゼー(Desaix)将軍を派兵した時、将軍はヤクーブを副官に任命した。…
…ナポレオンは帰国し、クレーベルが資金不足のまま受け継いだが、ムスリムはフランスの政策に懐疑的だった。
p.152
彼の遺体はその官職に応じ「武将棺」に納棺され、一八〇一年一〇月一八日軍隊葬としてフランスのマルセーユの地に埋葬された。
p.156
例えばエジプト首相になったブトロス・ガーリ・パシャ(Boutros Ghali Pasha)などは有名だ。
p.197
そうではなくて、王国はあなたがたの直中にある。…そして、あなたがたは知るであろう、あなたがたが生ける父の子らであることを。…」」(新井献訳「トマスによる福音書」『ナグ・ハマディ文書�� 福音書』一八頁)。…一九三〇年ファイユームで発見されたコプト語マニ教パピルスは、四世紀のスムイス司教セラピオン(Serapion, bishop of Thmuis)の「マニ教反駁」と関連があるに違いない。
p.208
アクスム国王カレブ(Axumite King Caleb)は、五二二年ナジュラーン(Najran)のキリスト教徒を迫害したズー・ヌワース(Dhu Nuwas)王を撃破するため遠征し、殉教した族長アル・ハーリス(al-Harith, アレタ)の息子を、ヒムヤル(Himyar)王国の王座につけた(4)。伝説によるとエチオピア総督アブラハ・アシュラム(Abraha al-Ashram)は、預言者ムハンマド誕生直前にマッカ(メッカ)攻撃準備を進めていたが、当時アラブ人はエチオピア同盟国のビザンティン人に根深い敵対意識をもつペルシャ人に援軍を求めたという。クルアーン(コーラン(5))に記述される「象(al-Fil)の戦闘」が起こり、イエメンでのエチオピア支配は終わった。
p.210
聖母の左手に抱かれる幼児イエスを描いた彼の絵画は、アビシニア聖職者の騒動を引き起こすことになったが、それは彼らが柔弱な左腕で主を抱くことは重大な罪と考えていたからで、ただ王のみが教会挙げての抗議を鎮めることができた。
p.213
しかしこのカンダケはアビシニアの女王ではなく、ヌビアのメロエ出身の女王(Meroitic queen)の呼称で、セム語の「エチオピア人」という言語は、「浅黒い肌」を意味し(アラビア語のハバシ[Habashi])、真っ黒の肌ではない。
p.238
福音宣教の輪は使徒トマスやマール・アッダイ(Mar Addai: St Thaddaeus,聖タダイ)の働きで次第に東方に広大し、エデッサ、ニシビス、さらに遠方マラバールまで広がったが、七〇年のエルサレム陥落によりユダヤ人キリスト教徒のアンティオキア移住が急増した。…聖エウオディオス(St Euodius)は皇帝ネロ(五四−六八年)時代に殉教したといわれ、その後偉大な殉教者聖イグナティオス(St Ignatius)が継いだが、彼は聖ペトロか聖パウロ少なくとも使徒職を担う者から叙階されたと思われる。…一行にはシリアから随行した執事フィロン(Philo)がいたし、スミルナではポリュカルポス(Polycarp)やエフェソス司教オネシモス(Onesimus)の歓迎を受けた。
p.239
初期のアンティオキア司教はユダヤ人キリスト教徒だったが、そのことは一三五年の総主教ユダの時期まで明確である。彼が最後の「割礼司教」(Bishops of the Circumcision)として記録されている。次にアンティオキア教会史において画期的なのは、司教テオフィロス(Theopilus)時代で、彼は教養ある聖職者で異教思想や初期シリア・グノーシスの異端思想を論駁した多数の著書を著わした。…
…その後一〇年間に、アンティオキア神学者セラピオン(Serapion)なる人物が出現し、一九九年司教になり二一一年死去した。彼はまた一連の書簡や著書をギリシャ人たちに、また特定の人物カリカス(Caricus)、ポンティウス(Pontius)、ドムニヌス(Domuninus)といった人々に宛てて著わした。…
…聖バビラス(St Babylas)は、二四〇年から二五〇年までの一〇年間アンティオキア司教座にあった。
p.240
このバビラスの生涯と対比されるのが、二六〇年から二七〇年のアンティオキア司教で有名な異端指導者サモサタのパウロス(Paul of Samosata)である。…彼は若き日のパルミュラ女王ゼノビアの保護を受け、若き日の女王の家庭教師だった。彼はネストリオスの先駆者として、イエスの両性に関するキリスト論に土台を築いた最初の人物で、彼の教説を弾劾した司教たちとの論争で、有名な「ホモウーシオス」(Homoousios)を用いたのは彼だった。…
その名はルキアノス(Lucian)で、神学者にして殉教者だった彼は三一二年ニコメディアで殉教したが、この年はキリスト教徒に市民権が賦与された「ミラノ勅令」の前年だった。彼は偉大な聖書学者で「七十人訳聖書」と福音書を改訂した。
p.241
アレイオスがかつてこの学派の有力な一員だったこともあり、アレイオス主義的思考が彼の学派に見られるといわれるが、これは彼がサモサタのパウロスの弟子だったとの主張がいつの間にか強く浸透していることからきている。…ルキアノスの後継者ディオドロス(Diodorus)は、ヨアンネス・クリュソストモス(John Chrysostom)やモプスエスティアのテオドロス(Theodore of Mopsuestia)の教師であり、一方このテオドロスは有名なコンスタンティノポリス総主教ネストリウスや、著名な神学者で歴史家シリアのキュルス司教テオドレトス(Theodret, bishop of Cyrrhus in Syria)らを教えた。
p.242
第一はエウセビオス派でニコメディア司教やカイサリア司教が加わった。換言すればコンスタンティヌス大帝も認めたくなかったニカイア会議の決定を公に反論せず、黙してニカイア協議を骨抜きにしていく派である。…第二はエウスタティオス(三三〇年死去)派で、ニカイア信条と規則に堅く立脚し公に正統派の立場を表明したが、アレイオス主義が宮廷内にも拡大し結果的に同司教はトラキアに追放されその地で没した。第三の派はニカイア信条信奉の立場で、些細な違いや原則的対立に殆ど関心を払わず、司教に従順で敬虔な良民の群れだった。厳密にいって神学者たちの率直などの発言にも異端的思想と覚しき萌芽が存在していたといえる。エウスタティオスでさえ、サベリウス主義者として告発されたが、彼のキリスト論はネストリオスのキリスト論の先駆と見られた。
…三六〇年のアンティオキア司教メリティオスの就任は、ニカイア支持派にもアレイオス支持派にも歓迎された。…彼は正統派内部の分裂に関心を払わない孤高の人物だったが、エウスタティオスの弟子たちは彼の神学に疑問をもち三六二年にパウリヌスなる人物を対立司教として擁立した。
…「黄金の口」(クリュソストモス)でさえ、時代の鉄腕から逃れられなかった。
p.243
エルサレムには聖キュリロス(St Cyril: ca. 315-86)が司教座にあり、ニシビスとエデッサにはシリアの聖書注解者大エフライム(the great St Ephraem: ca. 306-73)がいて、東方キリスト教文書の遺産価値を高めた。…
…この人物こそネストリオスだが、彼はアンティオキア校でのモプスエスティアのテオドロス(Theodore of Mopsuestia)の有名な弟子で後にコンスタンティヌス総主教になったが、イエス・キリストの両性に関する賛同不可能な彼の強力な発言により、四三一年皇帝テオドシウス二世召集の第三回エフェソス公会議の開催をもたらした。…アンティオキアはキリスト単性説に立つアレクサンドリアに同調したので、「東シリア人」(East Syrians)は追放されたネストリオスの立場を選択し、最終的にネストリオス派教会となった。
p.244
もうひとりの異端主唱者コンスタンティノポリス修道院院長エウテュケス(Eutyches: ca. 378-454)は、ネストリオス派キリスト論論争の火に油を注ぐ、強硬な反対論者だった。エウテュケスはイエスの神性と人性との完全な融合を主張したため、コンスタンティノポリス総主教フラウィアノス(Flavian)は彼の誤りを阻止しようとしたが無駄だった。…この後継者がアンティオキアのドムヌス二世(Domnus II)だが、彼はアレクサンドリアの熱烈な単性説派ディオスコロスに対立し、ローマのレオ一世と同じ主張にみえたが、ディオスコロスはエウテュケスを支持し、コンスタンティノポリスのフラウィアノスはエウテュケスを追放して断罪した。
p.245
カルケドン会議の矛盾は、キュリロス神学を弾劾しながらキュリロスを讃え、一方キリスト両性説(Diophysitism)を支持しながらネストリオスを断罪したことにある。
次に深刻な段階に発展する出来事は、皇帝ゼノン(Zeno: 474-91(25))時代に到来したが、皇帝の教会一致への情熱はコンスタンティノポリス総主教アカキオス(Acacius)と、アレクサンドリア総主教ペトロス・モンゴス(peter Mongus)起草の提言を受け入れさすことだった。これが有名な四八二年皇帝発布の「ヘノティコン」すなわち「統一令」で、ネストリオスとエウテュケスを破門(アナテマ)しながら、「単性」「両性」の言及を避け同時に正統説と単性説の両者に対する威圧的表現も避けている。…
…他方アンティオキアの司祭たちは大多数の信徒と共に単性説への伝統的傾向を益々鮮明にし、ついに単性説派総主教座の登用を強引に成功させた。…四六五年アンティオキア総主教になった「洗い張りのペトロス」(Peter the Fuller)の生涯は、この動乱期の様相を物語っている。単性説ゆえに彼は二度追放されたが、最終的に皇帝ゼノンの「ヘノティコン」を受け入れ総主教座に復位できた。さらにペトロスの名が特に想起されるのは、「聖なる神、聖なる勇毅、聖なる常生の者よ、我らに恵みを給え」と唱する古代東方礼典「第三詞」(Trisagion)の中に、単性説派の主張句「我らのために十字架につけられた」を挿入したことである。
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第二次世界大戦中のエジプトにクレオパトラ現る、真鍋譲治新連載などがキスカに
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真鍋譲治「パトラと鉄十字」、佐保「コイビトは鬼の姫」の新連載2本が本日5月8日発売の月刊キスカ6月号（竹書房）で開始した。
「パトラと鉄十字」は、エジプトの女王・クレオパトラが第二次世界大戦の時代に現れたことから始まる物語。第1話では、攻め込んできたローマの軍勢を前に、クレオパトラが捕まることを拒否して自害する。時は流れ、スエズ運河の制圧を目指すドイツ・アフリカ軍団とそれを阻止したいイギリス連邦第八軍が攻防戦を繰り広げる1942年のエジプトで彼女は目を覚ます。
「コイビトは鬼の姫」は、幼い頃に鬼と結婚の約束をした男子・颯斗が主役のラブストーリー。鬼と約束をしてから颯斗は、女子に近づくとハプニングが起こる不思議な体質となってしまい、異性への苦手意識が芽生えていた。物語は、彼が18歳の誕生日を迎える前日から始まる。
またキスカ6月号には財政ろろによる「放課後ゆるゲー部」が掲載。美少女ヒロインのゲーム部入部を巡る騒動を描く。
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