mixiユーザー(id:2083345)

2019年04月22日11:02

705 view

4/19 ドービニー展プレス内覧会

損保ジャパン日本興亜美術館のプレス内覧会は今回で2回目。1回目は昨年の「巨匠たちのクレパス展」で、この展覧会はこの年のbest10入りとなったほど面白かった。
フォト
今回はドービニー。近代西洋画展や印象派展の中で「新しい絵画の夜明け」として、ミレーやコローなどと共に1、2点紹介されることはあるが、クローズアップされることはなく、どちらかというと地味。どんな画風だったかは漠然と思い出されるが、代表作は思い浮かばない。画家のこともあまり知らない。ただ、いいなぁ、こういうところが上手いなぁ、とため息をついたことだけは確か。だから、ギャラリートークを拝聴できるのは楽しみだった。
フォト
スケジュールは
4月19日(開幕前日)12:45受付開始
13:00〜14:30自由観覧
13:15〜13:45 主任学芸員小林晶子氏によるギャラリートーク
※掲載の写真は、美術館より特別に撮影の許可を頂いたもの。

以下は、小林主任学芸員のお話から。

ドービニーの本格的回顧展は国内初である。ドービニーはバルビゾン派と括られることが多いが、実際のところはバルビゾン派の“端っこ”の立ち位置。バルビゾンにはそんなに長く滞在していないのだ。なので、つい忘れられてしまうのだろう。
しかし、バルビゾン派のコローと深く親交した。一緒に旅をしたほか、ドービニーのアトリエの壁画をコローが描いたほどの親密さ。また、印象派の画家たちに大きな影響を与えた。
一つは、リアリズムの画家としてサロンに入選、審査員まで務めるほどであったが、同時に保守的な批評家たちからは「荒ら描き」「未完成」などと批判された。これは、逆に印象派の画家たちにとっては大いに励みになったはず。実際、ドービニーは、印象派の画家がサロンに落選したことに抗議し、審査員を辞めてしまっている。印象派という新しい画風を自らも取り入れ、サロン審査員でありながら理解があったのだ。
もう一つは、現場主義。生涯あちこちに旅をして、自然と直接向きあって絵を描く。ボタン号、ボッタン号という船を持ち船上で描くというスタイルは、睡蓮連作を描いたモネに大いに影響を与えているのだ。
ボタン号模型フォト

右《ボッタン号》フォト  
実際に揺れる船上で描くことができたかどうかはわからないが、少なくとも重い画材を楽に運べるので、描きたい場所で絵を描くことができたし、視点も大いにひろがったはずである。特にゴッホはドービニーを敬愛していたそうだ。(1階にある紹介アニメーションが面白い)
フォト
直接的な影響としては、のちに印象派画家たちの経済的支援者となる画商ポール=デュラン・リュエルをモネに紹介したことがあげられる。
フォト
ドービニーの凄さは、素早いタッチ、少ない筆跡でちゃちゃっと表現できること。引いた風景の中で小さく水鳥の群や泳ぐ人を描いている。この表現力はすごい。単眼鏡で見つけると小躍りしたくなる嬉しさ。
その凄さは、小さな絵を大きく拡大プリントしても細部まで決して遜色ないことからもわかる。
フォト
「水辺の画家」と評されるようにドービニーはオワーズ河畔を描いた同じような構図の絵が多い。だからなんとなく流れて見てしまうのだが、これは当時から人気があった証拠、きっと需要があってのことだろう。連休中、クリムトなど見るのも良いが、ここでドービニーに大いに癒されてくださいと小林氏の弁。

序章では、ドービニー同時代の画家、コローやルソー、ベーニャ、デュブレ、ラヴィエール、ドーミエ、クールべも紹介。特にデュブレの作品がお気に入り。
デュブレ《リラダン辺りの眺め》(左)《水飲み場の動物たち》(右)
フォト

また、ボッタン号の船旅を日記風に描いた版画集《船の旅》が現版とともに展示。これが意外にも面白かった。カエルや水鳥、魚たちがユーモラスに描かれていて、ドービニーの油彩から受ける生真面目な印象を良い意味で裏切ってくれる。
フォト

チケットを頂いたので、夫と再訪した時に各作品の感想を書こうと思う。
展覧会概要は以下の通り。6月30日まで。
フォト
「シャルル=フランソワ・ドービニー展」
会 期: 2019年4月20日(土)〜6月30日(日)
休館日: 月曜日(ただし4月29日、5月6日は開館、翌火曜日も開館)
会 場: 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館

https://www.sjnk-museum.org/program/5750.html

19世紀フランスを代表する風景画家、シャルル=フランソワ・ドービニー(1817〜1878)の国内初の本格的な展覧会です。刻々と変化する水辺の情景を素早いタッチで描いたドービニーは、印象派の画家たちの指針となり、モネやファン・ゴッホなど、次世代の画家たちに大きな影響をあたえました。本展覧会では初期から晩年まで、ドービニーによる作品約60点、ならびにコロー、クールベ、ドーミエ、デュプレ兄弟、息子のカールといったドービニー周辺の画家たちによる作品約20点を展示いたします。フランスのランス美術館を中心に、国内外各地の美術館・個人が所蔵する作品で構成されます。

序章:同時代の仲間たち
第1章:バルビゾンの画家たちの間で
第2章:名声の確立、水辺の画家
第3章:印象派の先駆者
第4章:版画の仕事

フォト
11 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2019年04月>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930