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2019年04月01日08:14
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『Das Orchester』 by パラドックス定数
3/28(木)＠シアター風姿花伝
19：30〜21：40
作・演出の野木萌葱さんが､22年前､19歳の時に書いたという！
前出の｢U-18｣の脚本家といい､
早熟の天才って現実に居るんだよね〜。
22年経って､野木さんが、
｢その拙さに愕然とし､恥ずかしさに悶絶し｣ながらも
改訂し公演したいと思った作品！
心して客席に納まった。
ナチ政権下のドイツで、
ベルリンフィルとおぼしき楽団が追い詰められてゆくさまが
鮮烈に映し出される。
でもね！
固有名詞は出ないの。
登場人物は、
指揮者／秘書官／事務局長／ｳﾞｧｲｵﾘﾝ奏者／チェロ奏者／
新聞記者／宣伝相／将校 とだけ。
楽団も､迫害の対象である人々の呼称も使われない。
それだけに、過去の歴史上の理不尽な物語、としてではなく
我々の未来のいつどこにでも起こり得る､
芸術を利用しようとする政治とそれに抗う芸術家たちを描く物語
と心に響いてくる。
｢言葉｣は統制可能だが｢音楽｣を統制するのは＜厄介＞だと
宣伝相は言う…
なるほど… ｢聴覚｣は
＜判断＞という関門を通らず脳を直撃するものなんだ。
そのもたらす感動は何をしても止めることはできない。
だから、宣伝相は背景に鉤鍵十字の旗を飾らせ､
指揮者に総督との握手を強要した。
楽団の天才的指揮者も事務局長も、
秘書官やｳﾞｧｲｵﾘﾝ奏者､チェロ奏者をはじめとする楽団員の3分の1の
｢劣等人種｣を守るため、また､補助金を得て楽団そのものを守るため
断腸の思いでその要求に屈した。
そんな流れの中、
登場人物たちの想いは､単純なものではない。
将校は職務に忠実だが､音楽を愛している。
新聞記者は政権に批判的だったが､脅え揺らいでいる。
楽団の事務局長は宣伝相と指揮者との板挟みで懊悩している。
秘書官は愛する楽団と指揮者のため自らの誇りを笑顔で棄て去る。
ラスト！
指揮者は演目をベートーベンの｢第９｣に秘密裏に変更し、
自分の主張を新聞に公開し、抵抗を試みた。
舞台はコンサートホールの舞台袖〜舞台裏。
そこで交わされる台詞だけで芝居が進む､硬質な会話劇。
ともすると､途中に不要な息抜きのような場面を作り､
かえって芝居がダレてしまったりするのだが、
本作は130分間緊迫感が途切れることなく、観客を圧倒した。
あの小さなキツキツの客席､椅子は硬いパイプ椅子、
幾度か､客席の静寂を破らないようこっそり座り直しつつ
良く耐えたな〜 自分…(笑)
｢指揮者｣のモデルは､独指揮者フルトベングラー。
旗を掲げ総統と握手したことで非難された｢指揮者｣は言う。
｢私は確かに＜愛国者＞だ！
しかし私が愛する国とは､
ベートーベンやワーグナーが産まれ愛した国だ｡｣
1945年､戦時中のナチ協力を疑われ演奏禁止処分を受けたフルトベングラーも
きっとそう抗弁したことだろう。
音楽は脳を直撃する主張…
この言葉は新鮮だった。
それだけに、受け手によっていかようにも変容する。
非常に怖い芸術だ。
＜観劇19 08＞
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