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2019年01月30日18:33
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｢光秀の定理｣／垣根涼介
戦国時代の武将たち。
最近はアチコチ、芝居やドラマはもちろん、
漫画からアニメ､ゲーム､流行の2.5次元の世界でも
よく名前を見掛ける。
（城や刀剣が擬人化されたり､武将が現代に犬に転生したり…）
で、今までの歴史観､武将像も様々に変わり、
まさに百花繚乱､なんでもあり！
そんなんでも､日本史に興味を持つ日本人が増えるのはいいことだな〜
なんて思うこのごろ。
昨年､｢信長の原理｣なる新刊を見つけ、
信長好きな私は早速図書館に発注！
…と、その前に本作｢光秀の定理｣が出ているのを知り、
こういう時は基本発行順で読みたいので順番指定で予約して
手元に届いた。
｢定理｣、｢原理｣、どんな新しい切り口で光秀や信長は描かれるのか？
興味が募る中表紙を開く。
本作、
なんと､山場は永禄11年(1568年)
光秀が南近江観音寺城攻略に功績を挙げ､
後日信長上洛の折､褒美を賜った場面！
そして､
全く｢本能寺の変｣（天正10年(1582年)6月）に触れず、
次の場面は慶長2年(1597)晩春に移る…
小説って､こんな書き方もあるんだね〜
第一章 春 宵
第二章 決 闘
第三章 浄 闇
第四章 択 一
第五章 上 洛
第六章 菜の花
全章を通じて､明智光秀を､少し離れた位置から見つめ続ける男が2人。
1人は怪僧｢愚息(ぐそく)｣
後日分ったその前身は倭寇､肥前松浦党｡
1人は兵法者｢新九郎｣
当初関東から名を挙げようと都にやってきて愚息に出逢い
その生き方を大きく変えた男。
光秀と2人との出逢いは永禄3年(1560年)の春。
新九郎に襲われた光秀は､対峙して即相手の技量を見切り
あっさり太刀と脇差を差し出した。
新九郎が丸腰の人間を惨殺できない男であるとまで見切ったのだ｡
それを見ていた愚息が｢勝負あった！｣と登場。
ここから始まる、
貸借の無い､駆引きもない､上下もない本当の対等で純粋な友情は
最期まで変わることなく続いた。
ある時､自身の剣技に新たな｢理｣を見出した新九郎に､
愚息は言った。
｢わしが師匠なら､今この場で印可を与えておるぞ｡｣
新九郎は愚息の叡智と棒術を心底認めているので､
師匠と自称されても当然と受け入れるのだろうけれど
師匠では無い、あくまで対等の関係だとさらりと言った
この一言が､愚息の生きる姿勢をはっきり新九郎に伝える。
光秀はこんな2人の見返りを求めぬ友情を得て､
命懸けで覚慶(足利義昭)の奪還に成功してから、
イッキに出世！ 信長の寵臣となるも…
永禄11年(1568年)8月観音寺城攻略で功績を挙げ
後日信長に拝謁し､
攻略時､4本ある山道の内1本を選んだ根拠を問われ、
誤魔化しや方便ということのできない光秀は､
正直に答えるしかなかった。
それが愚息の｢定理｣。
伏せたお椀が4つ。
挑戦者には見せず、うち1つに小石を入れる。
挑戦者は入っていると思われるお椀を1つ選ぶ。
入っていないお椀3つの内2つを開ける。
残るは2つ。 いずれかに小石は入っている。
挑戦者はここで､選ばなかった椀に変える権利を与えられる。
＜変えるべきか？変えざるべきか？＞
光秀の友人という2人に信長は興味を持ち
愚息と新九郎は呼び出される羽目に。
そしてその解説で
当り率 最初の椀4分の1 変えると4分の3
という定理を納得。
（これ、実は
18Ｃ.英国人トーマス･ベイズが発見した｢条件付き確立の定理｣
とのこと。
｢モンティ・ホール問題｣として以下(元を3としているが)
https:/
が､わかりやすい説明かと… ）
2人の姿勢と言葉も信長はいたく気に入り、
褒賞を与え、光秀も大いに面目を施した。
という､｢第五章 上洛｣を経て､あっさり光秀は舞台から去り、
｢第六章 菜の花｣に至るのだ。
光秀は､信長を討つことを考え始めた頃から
きっと2人を巻き込むまいと考えたのだろう､
ある時から2人に近づかなくなっていたので、
2人は｢本能寺の変｣の経緯を何も知らない。
しかし､旧知の畏友ながら光秀の懇願にも応えず見殺しにした
細川藤孝の行列に出逢い､
＜許せぬ！＞と､瞬時に想いが燃え上がるが…
3人の目が合った瞬間､藤孝は､なんと会釈した。
会釈した相手を､到底斬れるものではない｡
二人の殺気を､その覚悟を､藤孝は最小限の動き一つで封じ込めたのだ。
さすがの愚息もつぶやく。
｢やはり、つくづく悪党よの｣
｢まあ､ああいう化け物しか生き残れぬのが､武将の道とあれば―｣
｢つくづく十兵衛には､不向きの渡世であったわい｣
さて、光秀の定理とは、
光秀が理解しながら実践できなかった定理なのだろう。
｢4つの椀の理｣を愚息に語らせると、
歴史の表舞台で､その生き様の初志を貫徹しようとする者は､
多くの場合､滅ぶということ。
生き方を変えられぬ者は､生き残れぬ。
4つの椀が2つになったときに､その初手の選択が変わるように、
世の中も変わっていく。
ぬしが変わらなくても、ぬし以外の世の中は変わっていく。
そして、
変わって行く者が生き残る。
｢時代の必然を論理で測っては判断を誤る｣
という愚息の名言は、歴史を俯瞰するのに忘れてはいけない
定理だと思う。
さて､｢信長の原理｣とは？！！
期待が高まる。
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