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2018年07月02日21:01

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イラストと阿部公房「砂の女」「箱男」「壁」

ハワイの生活情報雑誌「Lighthouse Hawaii」掲載イラストhttps://lighthouse-hawaii.com/

「砂の女」
安部公房著。昆虫採取のために砂丘に来た男が村の人々に女と砂穴に閉じ込められる。逃亡しようと画策するが。不条理な設定だが心理描写がすごい。昆虫の世界で蟻地獄に捕まったかのような感覚で。なるほど。海外でも人気な古典なわけだなと

「箱男」
安部公房著。ダンボール箱を頭からすっぽり被った男。匿名性や帰属先を失った者、覗ことなどを巡り登場人物は増え、話はコラージュ的に飛ぶ。短編集的でもあり手記、記事、写真などの形もあり。箱男の話というより、物語自体が箱がいっぱい入った箱のような実験的な小説。色っぽい場面も。娘の読書感想文用には安部公房の「壁」を借りたし。文学は感想文が書きやすいかもよと選んだけれどどうかな。第1部は読んだようで。娘が読み終えたら読もう。
「壁」安部公房。
「S・カルマ氏の犯罪」「バベルの塔の狸」「赤い繭」の三編入り。読書感想文のために娘は最初の話だけ読み、私は読破。娘の感想は不思議の国のアリスぽいということと理不尽な裁判への苛々。現実的具体性がないからこそ純化した感情や事態を伝えられるのが寓話や不条理物かと。「S・カルマ氏の犯罪」は名前に逃げられた男が居場所を失い終わらない裁判にかけられ逃亡する。話が通じずうんざりするが、絶望せず考え足掻くとこが前向き。不条理な事態は誰しも味わう。で、女性は救いにならないのがらしいなと。
「バベルの塔の狸」詩人がとらぬ狸に影を盗まられ透明人間になりバベルの塔に誘われ、目を奪われそうになる。アマチュアから作品や構想を盗み口を封じる。発明や発見でも起こること。そういう話かと。でも作者は分析より共感してほしいかもなと、娘の見方が正しいなと思ったり

例えば「それでも僕はやってない」の冤罪裁判や「私はダニエルブレイク」の役所の不親切な対応など、不条理の苦しみを描いた作品。優れた作品だが、具体例だから、その事態に入り込めず他人事と思えば感情移入できないかもしれない。例えば役所の公務員や裁判官ならそうなるもんだよと不条理に思わないかも知れない。違う設定なら不条理と感じるとしてもこの設定では無理となる。主人公に感情移入してほしい話でも相手にしか感情移入できないと。誰でも主人公に感情移入できるのが寓話であり不条理ものとも。恋愛物でも男女の性差がある以上、自分とは違う方の性別には感情移入しにくい。感情移入したい対象であっても自分には無理かもしれない。もしくはプライドや損得などの濁りと無縁ではいられない。そこをクリアするため性別をなくす。純化した感情は現実にはあり得ないかも知れない。でもそれを見たいなと思ったりする。

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