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2017年08月19日08:20

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命を守る東京都立川市の自治会[読書日記640]

題名:命を守る東京都立川市の自治会
著者:佐藤 良子(さとう・よしこ)
出版:廣済堂新書
価格:800円+税(2012年4月 第1版第1刷)
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自治会の本、第2弾です。
8月5日の読書日記に書いた『“町内会”は義務ですか?』で紹介されていました。

裏表紙から、概要を引用します。
“ふるさとづくり大賞総理大臣賞、全国防災まちづくり大賞を受賞し、「日本で一番住みたい団地」とまで言われる大山団地(東京・立川市)。
 青少年対策、高齢者対策などでユニークな取り組みを実現するこの自治会の根底にあるのが "向こう三軒両隣" の精神。
 命を守り、人を救う自治会のあり方を解き明かします”

目次を紹介します。
 はじめに
 序 章 私たちは東日本大震災にこう対処した
 第一章 私が自治会長になった理由
 第二章 住民に必要とされる自治会を目指して
 第三章 コミュニティビジネスで財政を強化
 第四章 自立した町づくりに必要なことは
 第五章 地域ぐるみで子どもを育てる
 第六章 自分たちで守る防災防犯
 第七章 「向こう三軒両隣」で孤独死を防ぐ
 第八章 いきいきと輝く創年を目指して
 あとがき 

著者の佐藤良子さんは「自治会に不満があるなら(自分が)役員になるしかない」と考えるポジティブな方です。
著者が感じた不満は次の3点でした。
“問題があると感じた点は三つありました。
 ひとつは、自治会主催のイベントが、夏祭りと運動会しかないことでした。年に2回集まるだけでは、住民全体が顔見知りになったり、親しくなることはできません。
 次に、役員に対する会長の人事権が強すぎたことです。制度の上では選考委員がいるにも関わらず、その役割を果たしていませんでした。(略)
 そして、三つ目に、会計の不透明さです。大山自治会の予算規模は現在、年間で1400〜1500万円程度です。(略)
 当時はもっと少ない額でしたが、それでも、マンモス団地だけに小さくない金額です”(35p)
この3点を改善するために、数年かけて組織を変えていったというのですから、頭の下がる思いです。
その後、平成11年(1999年)に会長になってから13年間(本書執筆時点)会長を務めています。

もっとも、最初の頃は嫌な思いもしたそうです。
【第一章 私が自治会長になった理由】から引用します。
“「主婦に何ができるのか」「女だてらに生意気なんだよ”
 私が自治会長になりたての頃には、そんな非難や嫌がらせをよく受けたものでした。
 東京都知事宛に怪文書を送られたこともありました。部屋の郵便受けに蛇が入っていたこともあります”(32p)

著者の自治会に対するスタンスは、【第二章 住民に必要とされる自治会を目指して】に明確に書かれています。
3つ引用します。

1.苦情への対応について:
“それでも私は、どんな人でも、どんなケースでも、まずは双方の話を聞くことを心がけています。
 自分たちの目と耳で事実関係を確認する。難しい問題なら一人ではなく、役員2人以上で事実関係を確認する。
 そして、苦情の実態がないと判断した時には、納得してもらえるまで説明する。これを根気強く続けるしかありません”(52p)

2.イベントを数多く開く理由について:
“また、数々のイベント開催は、「防災」にもつながります。なぜなら、人がたくさん集まる機会をたくさん持つと、地域の皆が顔見知りになり、知り合いも増え、様々な交流も生まれる。
 その交流がいざというときのための「防災」になるのです”(60p)

3.自治会を支えるボランティアについて:
“ボランティアといっても、無償ではなかなか続かないこともあります。金額は小さくても、有償ボランティアであればモチベーションを高く持って続けることも可能になります”(62p)
 もっとも、自治会長の著者自身は“どんなに活動しても私の報酬は会長手当ての年間3万円”(78p)とのことですが。

著者が会長を務める大山自治会は、“世帯数1300、住民数3200人、29棟にも上るマンモス団地”(32p)であり、非常に大きな規模の自治体です。
なお、『“町内会”は義務ですか?』に2006年度の全国の自治体を調査した結果がまとめられており、世帯数の平均は“228.1世帯”(“町内会”は義務ですか? 44p)となっています。

そんな大規模の自治体をまとめるために、著者(会長)は365日24時間自治会専用の携帯電話を携行しているそうです。
著者の取り組みが熱心すぎて、そのまま真似はできませんが、敬遠されがちな自治体という組織に対して、こんなにも前向きに取り組んでいる姿勢に感じるものがありました。

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佐藤 良子(さとう・よしこ)
1942年宮城県生まれ。1989年有限会社エスク設立、取締役専務に就任。
1999年から、東京都立川市の大山団地で、自治会会長として活躍。加入率100%、孤独死ゼロも実現。
自治会葬を手がけるなど、行動派の運営で、日本一の自治会と称される大山自治会を取りまとめている。
2004年内閣府男女共同参画局「女性チャレンジ賞」受賞。2011年地域活動功労者賞を東京都より受賞。

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