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2023年12月22日14:42

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2023年12月の読書。

 きょうは2023年12月22日。
 山本周五郎「季節のない街」読了。
 東京の街外れの、時代の流れから取り残されたような場所。彼ら住人から「街」と呼ばれた貧民街を舞台にした、様々な人々のものがたり。
 15篇の物語でできているけれども、ひとつびとつの話が完全に独立しており、15篇の短篇小説のように読める読み物で、登場人物の描きこみが緻密かつ複雑で、話そのものも一言では到底表現できない、重層的というのか乱麻のような話が縺れて何処からもほどけないものになっているものもあり、しかも、人情噺の得意な周五郎にしては、渇いた、人情や情愛の感じられない殺伐としたものがあったり、業の深い女の妄執のようなものを感じさせる話があったり、虚栄心と嘘だけで出来上がっている、似非インテリの話があったり。人情というよりは、ユーモアをより感じられるような印象を強く受けました。
 ひとつひとつの作が独立していると書きましたが、登場人物が別の話の登場人物と交わる場面があまりなく、15の話がてんでに時や住む家をたがえただけで、どの話もこの「街」を一歩も出ず、このなかで繰り広げられてゆきます。そのあたり、周五郎のどの時代小説よりも、入り組んでいて面白く感じました。
 この物語の「あとがき」、昭和37年(1962年)12月と明記されています。周五郎は1967年に他界していますから、この作品は彼のかなり晩年の作で、まさに円熟期に書かれたもの。酸いも甘いも噛み分けた大人の文学がここにあります。

 おなじく12月22日。
 きょうから宇佐見りん「推し、燃ゆ」を読みます。もう40頁あたりをうろうろしています。
 12月27日。
 「推し、燃ゆ」。まだ65頁あたりをうろうろしています。
 この小説、現実感が凄いです。殊にバイトの場面。実際に経験しないと絶対に書けない小説。それがひしひしと伝わってくる。いまのところ、そこがまず着眼したところです。
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