ハワイの情報誌「ライトハウス」掲載イラスト
『冷い夏、熱い夏』吉村昭著
吉村昭著。主人公の弟は自覚症状なく末期癌で余命1年と告げられる。仲の良い兄弟である主人公は弟に隠し通すと決める。幼い頃や自身の手術の思い出、死生観や医学の考え方の吐露。客観的かつ美的な比喩表現など、辛い闘病記を読ませる力は流石。バサッと終わるのもいい。1984年の出版なので、そのころの施術と倫理観というところはあるかもだが、今は本人告知してるのかな。緩和ケアのデメリットも壮絶な表現だったけれど、今はどうなんだろう。
作中で胃カメラの本の出版記念講演の話があるけれど、その本が「光る壁画」かな。丁度次に読もうとしてた。
「光る壁画」吉村昭著
吉村昭著。カメラメーカーの主人公は東大医師と組んで世界初の実用胃カメラを開発する。菅、照明、カメラ部分と順に課題を解決してゆく様はプロジェクトX。しかしさらっと医師が動物実験や人体実験をするとと言い出し、さらに同僚医師が自分の身体での実験をOKするのに主人公はびっくり。こういう感覚の違和感が面白いところ。でも実行に至っては患者の痛みを長引かせたくないと言う。冷徹ではなく合理的というのかな。その実験の様も具体的に何回も描写。実際に胃カメラを体内に通して解決できることもある。ドラマ化もしてたのね。
「破船」吉村昭著
海辺の貧しい寒村では難破船を誘うため夜間に塩を焼く風習がある。ある日待望の難破船が漂着し村総出で略奪。村は潤うが、次に漂着した船の人々は何故か全員死んでおり。父親がで稼ぎでおらず母親を支える主人公の視点から、季節ごとの村の厳しい生活と残酷な運命を活写。
「雪の花」
吉村昭著。種痘の普及に尽力した江戸後期の医師笠原良策の話。天然痘の数年ごとに猛威を憂う福井の医師良策は、蘭方を学び種痘を知り、種を入手して仲間達と京や大阪で種痘を広める。厳しい山越えをして種を運び福井に種痘を広めようとするが藩医や人々の無理解に苦しむ。この頃の種痘が瘡蓋を腕に植え付けてできた膿を使ってひろめるやり方とは。なので次々種痘をし続けないと種がなくなるという危機感。医療物なので省きそうな苦難の山越え種痘駅伝の様も活写するのが氏らしい。
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