題名:人生の諸問題五十路越え
著者:小田嶋 隆(おだじま・たかし)、岡 康道(おか・やすみち)、清野 由美(きよの・ゆみ)
出版:日経B
価格:1600円+税(2019年7月 第1版第1刷発行)
----------
マイミクさんお薦めの小田島隆さんと岡康道の対談を読みました。
もう一人の著者:清野由美さんは進行役というか、脱線気味の二人をコントロールする役割でした。
目次は次の通りです。
はじめに
第1章 「令和」に置き去り? 「平成」に生きた「昭和」な僕ら
第2章 五十路に振り返る、僕らを作ったテレビと音楽
第3章 ユーミンの歌から聞こえる、僕らの嫉妬と羨望と本音
第4章 通った高校で考える、同窓会に来なくなったヤツの人生
第5章 大学は"人生リセット"を賭けた僕らの"理想郷"だった
第6章 「そうだよ、ここ、ここ、ここ!」故郷までの50年に笑いながら泣く
第7章 昼酒上等の街、赤羽で、オダジマの母に会いに行く
第8章 突然の入院は、自らのターニングポイントだ
第9章 「50を過ぎたら、人間、半分うつなんです」
第10章 でも「なれた自分」もいいじゃない?
第11章 何不自由ない資産家の夢が「少年野球のコーチ」だったりする
第12章 「五十路のサラリーマンがつらい理由」人生到るところに猿山あり
おわりに
あとがき
----------
印象に残った文章を引用します。
【第1章 「令和」に置き去り? 「平成」に生きた「昭和」な僕ら】から、昔はテレビを祀っていたという話。
小田嶋 いや、これは技術の発達だけでなく、コミュニケーションの核心を突く
問題ですよ。昔、それこそテレビに "神" が宿っていた時代は、テレビ
に緞帳が付いていましたからね。
岡 緞帳、付いていた。
小田嶋 あれは機械じゃなくて、一つの「別世界の入り口」である、というちょっ
と大げさな設定があって、それをみんなで共有することで、茶の間が劇
場であり得た。(16p)
【第2章 五十路に振り返る、僕らを作ったテレビと音楽】から、70年代のドラマのセリフが遅い話。
日本中が(ほぼ)同じ家具を使っていたあのころ
岡 今と昔(70年代)ではセリフのテンポが違う。田宮二郎の「白い巨塔」
(放送開始は78年)なんてさ、今見るともうだるくてだるくてありえな
いよね。
小田嶋 そうそう、とにかく遅い。特に倉本聰のドラマにおいてはそれが顕著で
田中邦衛のセリフの間とかも、「これは放送事故だろうか?」みたいな
感じで。(54p)
【第3章 ユーミンの歌から聞こえる、僕らの嫉妬と羨望と本音】から、ユーミンの話。
――学生当時にユーミンは聴かなかったんですか。
小田嶋 そう。女の子はみーんな好きだった。けど、俺は聴かなかったですね。
岡 聴かなかったというより、聴けなかったですよね。だって(親が破産
して)貧乏すぎて聴けないよ。(略)
小田嶋 「SURF&SNOW」というばかなアルバムがあったでしょう。それで、僕ら
のクリスマスを台無しにしたでしょう。僕ら、何、サンタクロースを
やらないといけないんですか? というふうになったのは、あの人の
せいだよ。(90〜91p)
【第6章 「そうだよ、ここ、ここ、ここ!」故郷までの50年に笑いながら泣く】から、読書感想文の罪について。
小田嶋 俺が文章何とか講座の講師をする時に必ず言う話なんだけどさ、読書
感想文というのは、確実に日本人の文章嫌いのもとになっているよね。
岡 絶対になっているよ。
小田嶋 ほかの国ではライティングみたいなところって、要約から入るんだよ、
『罪と罰』の要約を400字で書きなさい、とかいうのが本来なら最初の
トレーニング課題なんだよ。(168p)
【第12章 「五十路のサラリーマンがつらい理由」人生到るところに猿山あり】から、小田嶋氏がメディア業界を観察してきた結果の定理。
小田嶋 俺もメディア業界のちょっと外側から、同世代の似たようなやつの動向
を眺めてきた。そういう観察を長年にわたって行なってきた結果、出し
た結論は、「一言多いヤツは出世しない」というもので(笑)。
――珠玉の箴言by小田嶋隆。
岡 もう間違いないよ、それは。(340p)
想い出話が大半ですが、なぜか後ろ向きな印象はありません。
【はじめに】で小田嶋さんが
“本書は、誰が読んでも、必ずや心に響く部分を持った書籍だと思っている”(6p)
と書いていらっしゃいますが、そのとおりでした。
---------- ----------
小田嶋 隆(おだじま・たかし)
コラムニスト。1980年早稲田大学卒業。
食品メーカー勤務などを経て、文筆業を開始。
「日経ビジネスオンライン(現日経ビジネス電子版)」の連載コラム「ア・ピース・オブ警句」を執筆。
著書に『その「正義」があぶない』(日経BP)など
岡 康道(おか・やすみち)
クリエイティブディレクター。1980年早稲田大学卒業後、電通に入社。
CMプランナーとしてサントリー「BOSS」などを手がける。99年、クリエイティブエージェンシー「TUGBOAT」を設立。
著書に『アイデアの直前』(河出書房新社)など
清野 由美(きよの・ゆみ)
ジャーナリスト。城西国際大学大学院非常勤講師。
東京女子大学卒、慶応義塾大学大学院修了。ケンブリッジ大学客員研究員。
著書に『新・都市論TOKYO』(集英社新書、隈研吾と共著)、『観光亡国論』(中公新書ラクレ、アレックス・カーと共著)など
ログインしてコメントを確認・投稿する