昔、ソ連のあった時代、日本からヨーロッパに向かうにはソ連上空を通れないため、最短経路としてアラスカのアンカレッジ空港を経由していた。僕も最初の海外旅行であるヨーロッパ行きで、アンカレッジ国際空港に降り立ったことがある(写真)。
シベリア上空が開放されてヨーロッパまで直行できるようになり、日本からアンカレッジに行くことはなくなった。僕も久しく、アンカレッジを忘れていた。
そのアンカレッジの高級ホテルで、バイデン新政権発足以来、米中初の高官会談が開かれた(写真)。
武漢肺炎を世界中に撒き散らして、今も大混乱の渦中に置きながら、自らは感染を封じ込めたと意気軒昂なスターリニスト中国の外交トップが、アメリカの49番目の州アラスカのアンカレッジまで出向いて、バイデン新政権のブリンケン国務長官、サリバン大統領補佐官(安全保障担当)らを相手に勝手を吹きまくったのだ。
◎訪問から外されアラスカまで出向く
18日、19日の2日間にわたって、バイデン新政権要人とアンカレッジで会談したのは、中国共産党政治局員で外交担当の楊潔篪、国務院(外交担当)兼外相の王毅らだ(写真)。
スターリニスト中国の外交担当のツートップが、わざわざアメリカのアンカレッジまで出向いたのは、今回のブリンケン国務長官らの訪日、訪韓で、訪問先から外されたからだ。
通常なら、アメリカの要人の訪日、訪韓の前後には必ず訪中があった。だがそれは、オバマ政権までのこと。民主党のバイデン新政権でも、前政権のトランプ政権時代とスターリニスト中国への敵視・警戒感は変わらないことが、今回、はっきりした。
このままブリンケン国務長官らに帰国されたのでは、バイデン新政権への注文付けができない、メンツが潰れる、と思った習近平が、慌ててブリンケン国務長官らの帰途にアンカレッジ会談を設定したのだ。
◎スターリニスト中国のアキレス腱の人権持ち出されて
ブリンケン国務長官は18日、メディアの前での顔見せ会談で、「新疆ウイグル自治区、香港、台湾。アメリカへのサイバー攻撃と同盟国(オーストラリアを指す)への経済的な強制行為を含む、中国の行動に対して、深い懸念」をぶつけられた。
すると楊潔篪は、前もっての取り決めである2分間の制限時間を無視して、アメリカへの攻撃を口を極めてまくしたてた。ブリンケン国務長官も、退席しようとするメディアを呼び戻してさらに反論、これにまた楊が再反論する異例の展開となった。
ただ、この展開はアメリカも予想していたようだ。発足したばかりの新政権に最初にパンチを食らわすスターリニスト一流の外交テクニックだからだ。
だがスターリニスト中国は、もっぱら不公正貿易と知財窃盗を責め立てた前トランプ政権と違い、バイデン新政権が人権を前面に出してきたのは、予想どおりとはいえこたえたに違いない。不公正貿易と知財窃盗は、どのようにでもごまかせるが、人権問題はラディカル(根源的)で、糊塗しようがないからだ。それは、まさにスターリニスト中国のアキレス腱である。
◎激しい言い争い
アンカレッジ会談までにバイデン新政権は、日本、アメリカ、オーストラリア、インドのクアッド(4カ国)のオンライン首脳会談を行い、さらに初の対外リアル会談である日本との2プラス2会談も済ませ、そこでははっきりと名指しでスターリニスト中国への警戒感を打ち出した。対中包囲網をほぼ完成させて、アンカレッジ会談に臨んだアメリカには余裕があって楊潔篪らとの初顔合わせであった。
翌日の秘密会談で何が話し合われたかは分からないが、双方とも「素直な話し合いができた」と述べていることから、やはり激論が交わされたのは間違いない。外交用語での「素直な」とは友好的とはとうてい言えない激しい言い争いを示すからだ。
注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
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