狂った時計のこと

狂った時計のこと


僕は
電波時計を　〈時計〉だと思っていない
時計は　狂うものだ
狂わない時計など　時計じゃない
ぼくの懐中時計は　いつも狂っている
正確な時を刻まない
そして　それが
僕の人生のサイクルになっている
他のひととは大きく違えた
僕の人生に　狂った時計は欠かせないし
時計が狂っているから　僕は平常心でいられる
もし１秒たりとも　時計が狂っていないとしたら
僕はその　正確無比に耐えられず
時計を毀してしまうだろうし
そうできないのであれば
僕の精神は　破綻を来してしまうだろう
というわけで　僕の時計はいつも狂っている
狂った時計が身近にあることで
僕は自分自身を肯定された気持ちになれるのだ
僕はいつも　時計に救われている
この懐中時計の　不正確さに救われている


指田悠志