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2019年10月13日23:42
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東西ウイグルと中央ユーラシア 森安 孝夫 名古屋大学出版会 2015年1月30日
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少数民族出身で初の快挙！ 中国芸能界”注目度No.1”のエキゾチック美女って!?
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p.34
そうであれば、当然ながら、この態度、換言すれば安史の乱征伐とマニ教導入の功績を牟羽可汗に一本化する方針が、国家ないし王朝からの全面的保護を享受しているウイグル＝マニ教団全体の立場でもあり、ウイグル時代に入ってからのマニ教教会の歴史を述べる公式文献の記載もその方向に統一されたことであろう。
p.35
「和親を請」わねばならなかったのは唐の方であって、絶対にウイグルや吐蕃ではなかったのである。
p.37
安史の乱勢力側には、阿史那従礼や阿史那承慶のような突厥の王族が加わっており、三度目の突厥帝国復興を狙っていた。
p.42
(19) 漢籍では曳落河*iäi-lâk-γâ(GSR338a+766q'+lg)は異民族の言葉で健児(傭兵の意味)や壮士と説明され、また仮子ともいわれる、cf.堀 1951, p.65 & n.22; 羽田 1957a, p.280, n.71; 前嶋 1965. この原語と原義については前嶋の研究がもっとも詳しく、これをソグド語チャーカルchākarの漢字音写語である柘羯の同義語とみなし、その意味は「奴隷・奴僕・私兵・奴隷兵士」であるといい、原語としてアラビア語のraqīqの複数形arqā'/ariqā'(ariqqā'のミスプリか？)を提案する。私は曳落河をchākarと同義語とみなす点には賛成であるが、その意味は奴隷兵士などとは少しく異なり、「仮に親子の関係を結んで主君の側近に侍り、共に死ぬことを誓った忠実で勇敢な兵士」のことであると考える。しかしながら、同氏が曳落河の原語をアラビア語とする点は荒唐無稽としかいいようがない。安禄山勢力の兵士を指す重要な語にアラビア語の入り込む歴史的背景が全く想定できないからである。Cf. 稲葉 2001。
…幸い『遼史』巻46・百官志・北面軍官に「拽剌軍詳穏司、走卒謂之拽剌；旗鼓拽剌詳穏司、掌旗鼓之事」[p.739]、『遼史』巻116・国語解に「旗鼓拽剌 拽剌、官名。軍制有拽剌司、此即掌旗鼓者也」[p.1542]とあり、契丹後に兵士ないし軍官の一種を表わすものとして拽剌*iäi-lât(GSR 272a)という語があるから、多分これと対応するに相違なかろう。
p.43
(25) このqut waxšikを人格を持った「守護霊」と訳してよいことについては、cf.『マニ教史』p.23。
p.44
なぜなら私は吉田豊と共に、牟羽時代も8世紀末の懐信可汗以後も、モンゴリアには一度も慕闍(第一位のモジャク)の本拠は置かれなかったという立場をとっているからである。今や、795年時点におけるモンゴリアのマニ教団のトップは第三位のマヒスタクとする見方が優勢であり[語註v6-7に引用したU168=TIID173a²のコロフォン²³より；cf. Clark 1997, p.105]、カラバルガスン碑文の後半部にアフタダン座が見えるから、我々は795年以降、保義可汗(在位808‐821年)の末年までの間にようやくモンゴリアに第二位のアフタダンが赴任した、と推測している[森安/吉田/片山 1999, p.223]²⁴。一方、保義可汗時代に完成し、20世紀になってトルファンより出土したMahrnāmagには一組のモジャク・イスパサグ(=アフタダン)・マヒスタクが現われるが、彼らは高昌にいたのであって、モンゴリアにいたものではなかろう。
p.45
東方教区の慕闍は1人なのだから、同時にモンゴリアに慕闍がいたはずはない。もちろん、8世紀末から9世紀前半にかけてのウイグルはその勢力を明かに東部天山地方にまで及ぼしていたというのが私の見方[森安 1979; Moriyasu 1981]であるから、その時点でウイグル本国に東部天山地方を包含させるならば、確かにウイグル本国からやって来た「大摩尼」の中に慕闍が含まれた可能性は否定できないが、モンゴリアにいた慕闍という意味にはならない。
…
(44) "üč mxistak olurmaq"を単純に「3人のマヒスタクが座に着くこと」、即ち3人のマヒスタクの任命・設置と解釈することに対し、強い反論がある。即ちこれをマニ教徒にとって重要なイムキ祭Yimki-festivalと結び付けるヘニング説である, cf. Henning 1936a, pp.14-15; Henning 1945, pp.147-148, 155(fn.3); Asmussen 1965, pp.178,225-226; Rybatzki 2000,p. 260; Tremblay 2001, pp. 32(n.48), 238。確かにヘニング説はある意味で見事であり、これをマニ教学とウイグル文献学の立場だけから覆すのは難しい。支持者が多いのもそのためである。
p.46
しかし、私は歴史学の立場から、本文書のようにトルコ民族史上の大きな事件を列挙したと思しき歴史文献に「年毎に行われるイムキ祭」をわざわざ記述することはありえないと信ずる。ここはやはりウイグル＝マニ教史上にたった一度起こった3人のマヒスタクの同時任命という特筆すべき出来事が記載されているとみるべきである。²⁵
…
(55) βγpwrstn「天子の居所」は中国すなわち唐王朝全体を指している。吉田豊によれば、その根拠は、敦煌出土ソグド語仏典Pelliot sogdien 8の奥書にある仏典が「康姓のCwr'kk及びその一族の廻向のため、βγpwrstnの敦煌で翻訳された」と述べられていることである。
p.55
なお、バザン氏から口頭でKhe-rgedをモンゴル系のケレイトKereit族に比定してはどうかとの示唆を受けた。一方、ローナタシュはKhe-rgedをキリギスQïrγïz/Kirgizに比定している[Roma-Tas 1991, p.110]。
p.58
²⁶ Ga-ra-gan-ligが古トルコ語でQara Qanglï-lïγ「黒い車を持つ者」と復元され、それが民族名「黒車子」に相当するという推定は、Bacot/Pelliot 1956, p.152に萌芽があり、Ligeti 1971,p.184によって明確になった。最近になってツィーメにより発表された東ウイグル＝マニ教史断簡81TB10:06-3aにも地名ないし民族名としてQara Qanglï「黒車」が現れている[本書第14論文・第3節と註30を参照]。黒車子族の居住地については未解決の問題が多いが、胡嶠の『陥虜記』[『契丹国志』巻25,p.239;『新五代史』巻73,p.907]には黒車子が牛蹄突厥と共に見えており、今後の考察材料が増えたことになる。
p.64
それ故'Bug-čhorが突厥(第二帝国)に(17)、そしてBa-smel・Hor・Gar-logがそれぞれ抜悉蜜(バスミル)・回紇(ウイグル)・葛邏祿(カルルク)に対応することには一点の疑いもない。
p.65
'U-yi-kor do-togがUyγur totoq(回紇都督)でYag-le-kerがYaγlaqar〜Yaγlaγar(薬羅葛)であることは一見して明らかである。
p.66
(4)ll.85-86にみえるDu-rgyusとTa-zhigの戦いが、トゥルギシュ(=突騎施)とタジク(=大食)の戦いであることは疑問の余地がない。
p.67
ただし同氏はNe-shagを泥熟(突厥の官称号)と結びつけて考えていたようであるから、やはりまだよくは分かっていなかったらしい。
p.68
Niγošagというのはマニ教の教徒一般を指す言葉で、元来は中世ペルシア語あるいはソグド語であるが、そのままの形でトルコ語に入り、トゥルファンから出土したトルコ語のマニ教関係文書中にしばしば現われる言葉である(29)。母音の後のγ音がy音に変わり、さらに無音化して先行する母音を長母音化するという現象は言語学上はよくみられるものであるから、Niγošagがチベット語でNe-shagと転写されるに至ったとしても何ら不思議はない。
p.70
⁴⁸ このタルカンを頓莫賀タルカンと見なすガバイン以来の説[Gabain 1949, p.47; Lieu 1985,p.193=Lieu 1992, p.235; Klimkeit 1993, p.366]にクラークは反論した[Clark 2000, p.103, n.52]。私もクラークの考えに同調するが、実は我が国では早くに本文書を活用してウイグルのマニ教史を論じた田坂興道が、「之を新宗教反対派の首領即ち頓莫賀達干に比定するのは無稽である」として退けている[田坂 1940a, p.226]。
p.72
(a)Zha-ma可汗族＝阿史那部
(b)Ha-li族＝頡利部
(c)A-sha-ste族＝阿史徳部
(d)Shar-du-li族＝舎利吐利部
(e)Par-sil族＝卑失部
(f)He-ba-dal族＝?怛部(エフタル部)
(g)Lo-lad族＝奴刺部
(h)So-ni族＝蘇農部
…(b)のHa-li族はむしろ賀魯部に当てるべきではないかと思われるが、それ以外については氏の比定をほぼ承認してよかろう。
p.76
しかし、同時代のバクトリア語にTürk〜Türükに対応するδορκοの異綴りとして新たにδορκοが在証されたので[J. Lee/N. Sims-Williams, "The Antiquities and Inscription of Tang-i Safedak," Silk Road Art and Archaeology 9, 2003, pp.167-169]、もしかしたらなんらかの影響があったかもしれない。
p.80
まず'Bug-čorの東にいるDad-pyiであるが、これがホショーツァイダム碑文にみえるTatabïである(46)ことは容易にみてとれる。従来このTatabïが漢文史料の何に当たるかについて議論があったが、その中で最も有力であった「Tatabï＝奚」説が本文書の出現によって最早決定的となった(ll.12-13)(47)。Heが奚を表わしていることは間違いないからである。カールグレン(B. Karlgren)によれば奚＝γiei、鶏＝kieiであり(48)、一方、漢蕃対音千字文によると鶏がチベット文字でkyeと写されている(49)。然るにチョンゴル(B. Csongor)の研究によれば、漢字中古音の語頭のγ-はチベット語ではh-になったことが分かるから(50)、奚は正しくHeと写されたと推定されるのである。He-tseの-tseについては、確証はないが、恐らくは指小辞「子」[tse…Csongor 1960, No. 123]であって、奚はまた奚子とも呼ばれたのではなかろうか。
Dad-pyi即ち奚(He)の東にいる民族ないし国家はDru-guからはMug-ligと呼ばれ、中国からはKe'u-liと呼ばれているという(ll.15-16)。漢蕃対音千字文によれば「高=ke'u」とあり(51)、Ke'u-liが高麗にあたることには何の疑いもない。問題はMug-ligであるが、8世紀末の書『梵語雜名』には「高麗＝Muquri」とあるから(52)、このMuquriと本文書のMug-ligとは同じものと考えられる。ところでこのMuquriで即座に思い出されるものに、7世紀初頭のビザンチン史料が伝えるMoukriがある。中国に隣接している勇敢な民族であったと言われているこのMoukriに対して、かつては色々な比定がなされたが、これを高句麗に当てた岩佐精一郎の解釈は鉄案であって(53)、今や疑問の余地はない。とすれば当然本文書のMug-ligも高句麗に比定されるべきである。事実すでにヘニング(W. B. Henning)によってMug-ligと突厥のホショーツァイダム碑文に見えるBökliとが同一視され(54)、かつ岩佐によってそのBökliが高句麗に比定されているから(55)、Mug-ligを高句麗とみることは全く正しい。
p.81
Bökliの説明としては、岩佐は「Bö(k)+kli=貊＋句麗」と推定したが(56)、あるいは「Bök+li=貊＋接尾辞の-ligのgが落ちたもの＝貊の国(人)」と考えることも可能かもしれない。…
この渤海の東方のMon-ba Beg-tseのBeg-tseは恐らくペリオが推定したように百済の名残りであろう(58)。漢蕃対音千字文には「百＝peg」とみえている(59)。
Mon-ba Beg-tseの南方にいる二つの民族、即ち人魚族とMon-ba族の国(ll.12-21)は最早伝説上の国であって、Horの使者が実際に行ったものとは考えられない。その内容からみてこれらの伝説は中国人あるいは朝鮮人が九州沿岸〜琉球列島あるいは東南アジアの海洋民族のことを誇張して伝えたものであろう(60)。…
…
また10世紀末に成立したHudūd al-'ĀlamのChīnistān・Wāq-wāqの条に、「住民は黒い膚をしており裸である」と伝えられているのも(62)、この際参考にはなろう。なお、このワークワークWāq-wāqは日本あるいはスマトラ島と考えられている(63)。
第1の報告の最後にはこれら南方の国々の話とは全く逆の北方の住民Da-sre族のことが伝えられている(ll.21-23)。古来魚皮を着る民族としては東流松花江〜アムール河下流域のゴルド(ホジェン)・ギリヤークなどが有名であり(魚皮韃子)(64)、ノン江流域に拠ったと思われる室韋の一部(水室韋)もこれと同じ習慣を持っていた(65)。
p.82
もしDa-sreをこれらの他漏・達魯古・達末婁・鉄利などのいずれかと結び付けてよいとすれば、Da-sreはまた恐らく魚皮韃子とも重なるものと見ることができよう。…だがDa-sreは魚皮だけでなく、魚の肋骨をもテント材として用いたという。それゆえここにいう魚とは、あるいは鯨やアザラシなどの海獣のことを指しているのかもしれない。…
…唐代シルカ河流域からノン江流域にわたる広大な地域は、室韋とかTatar(韃靼)とか呼ばれたモンゴル系民族(あるいはモンゴル種を骨子とし、これにツングース種の混じった民族)であったのに対し(72)、Ga-ra-byi-gir族は-girというツングース種の氏族を表わすのに使われる典型的な接尾辞を有している(73)。
p.83
唐代満州の地に優勢であったツングース種の靺鞨が豚の飼育で有名だったこと(74)、さらにツングースという名称そのものが豚の意(もちろんこれは他称であって自称ではない)であるという説のあることも(75)この際想起すべきである。
…しかしながらこの「五つの部族」からその北方にある「果てしない湖」のほとりに至る地域に住む人々は、その住居も身体つきも'A-zhaと同じであるという(ll.32-33)。'A-zhaが吐谷渾を指し、これがモンゴル系であることは現在ではほぼ定説であるから(76)、ここに見える「果てしない湖」はバイカル湖を指すとみて何ら差し支えない。…
…
文脈から考えてl.55にみえるHir-kisもキルギスに相違なく、この方が音写の形としてはむしろ良い。…私が第3の報告がl.35から始まるとみなしたのは、実はこのキルギスから逆に道順を辿っていった結果である。図Bのような相対的位置関係にある四つの部族ないし部族連合のうち、Khe-rgedとGudはHorに貢納し、七姓Ye-dreとKu-čhu-'urはHorと常に戦っていると言うのだから、これらがHorに近接していることは確かである。
p.84
第3の報告中Gud族に関する記述はとくに注意を引く。この部族の特徴は(1)平地ではなく山間部に草の家を作ること、(2)鹿に荷を積むこと即ちトナカイの使用、(3)百合の根を食用とすること、(4)野鼠やキツツキなどが自分の巣に貯めた物(Mon-bu)を人間が横取りして食糧とすること、(5)衣服(毛皮)に黒い炭を塗りつけること、の五つである。これらの五つの特徴の中の幾つかを同時に備えていた部族として我々が知っているのは都播(都波)だけである。…
…さらに『新唐書』巻217、『唐会要』巻98&100、『通典』巻199の当該諸条を比較してみれば、鞠(裓)というトナカイ使用部族が大漢(大漠)という巨人族の南におり、かつこれら両部族がキルギスと共にイェニセイ河(エニセイ河)上流域に分散していたことが知られる。
p.85
都播がトルコ系あるいはモンゴル系(79)、鞠がサモイェード系(80)、そしてキルギスが主にインド＝ヨーロッパ系とトルコ系の雑種で他に比べて身体が大きかったといわれている(81)ことを考え合わせるならば、この巨人国とは恐らくバイカル湖西北岸からアンガラ河流域にいた大型のコーカソイド種族の国ではなかったかと思われるのである。10世紀に成立した胡嶠の『陥虜記』[『契丹国志』巻25、『新五代史』巻73]にも、嫗厥律と呼ばれた巨人族がキルギスの東方にいたことが伝えられている。
…とくにサヤン山脈の南、ケム河上流域には現在でもトナカイ飼養民族が分布しているというから(82)、ここを鞠の住地に当てることに異論はあるまい(83)。
p.86
そればかりか、ポターニンによれば、コソゴル湖の西南地方では「住民達は野鼠の穴からミャキルmyakir(Polygonum viviparum)(86)の根を沢山集める」という(87)。…Gudは即ち都播であり、さらにこの部族がコソゴルの西南を中心とする地域に拠っていたことには最早一点の疑いも存しないのである。…Gud即ち都播の西北にいるKu-čhu-'urが後のナイマン部の一部として『元朝秘史』に現われるGüčü'ütであるというリゲティの解釈(89)には疑問の余地がない(90)。
p.87
それゆえ八姓オグズを後のナイマン(モンゴル語で「八」の意)に比定した前田直典の説(91)は、本文書の出現によってより一層確かなものとなったと言えよう。…一方、『元史』地理志西北地附録の吉利吉思之条によると、ケム河流域にはかって乃満部がいた(93)とも言うから、恐らくKu-čhu-'urはタンヌ＝オーラを中心とする地域に拠っていたのであろう。
…この「五つの部族」がモンゴル系であったこと、Ye-dre族が常にHor(ここではウイグル)と戦っていたこと(ll.37-38)、そしてシネウス碑文(92)から知られるウイグルの主要な敵のうちでその東北方にいたと思われるのがモンゴル系のTatarであったことを考え合わせるならば、白樺の樹皮のテントを持つYe-dre・Kherged・「五つの部族」がすべてTatar即ち中国史料のいう室韋であったことは容易に首肯けよう。
p.89
そこで私は『通典』に、
抜悉弥(中略)在北庭北、海南、結骨東南、依山散居。去燉煌九千余里。
〈『通典』巻200,p.5490〉
とある「海南」は、北庭の北でキルギスの東南という地理的条件からみて恐らく「剣海(ケム河)の南」であろうと考え、かつてのバスミルの最大領域を図Fのように想定した。こうすればP. t. 1283文書の記事も無理なく解釈できるからである。
東方の抜野古とここに見えるBa-yar-bgoを余りにも簡単に同一視してきた従来の説はこうして一旦は覆される。…恐らくこのBa-yar-bgoは東方の抜野古の全部あるいは一部が、何らかの事情で西方に移動したものであろう。
p.90
護雅夫の研究によれば、抜野古の族長は隋代にはイルキンirkinであったのが、唐代に入ってからは一段上位のイルテベルiltäbär/eltäbär号を称している、という(101)。然るに本文書にみえるBa-yar-bgoの族長は依然としてhir-kin=irkinを称している。このことは即ち本文書のBa-yar-bgoが東方の抜野古とは別の集団であることを推測させるのである。
p.91
ll.81-82のGe-zir-gu-shuとGa-ra-gu-shuを、それぞれトルコ語のQïzïl küčik(赤い子犬)とQara küčik(黒い子犬)に還元したリゲティの説は動かすことができない(106)。…
…ただ本文書の伝説のもう一つのモチーフである「男児は犬に生まれ、女児は人間に生まれる」というのと同じ内容の話は、胡嶠(10世紀の人)の『陥虜記』及びプラノ＝カルピニやアルメニア王ヘトゥムの旅行記(13世紀)(110)にも伝えられている。…
…
第５の報告中のBe-ča-nag(ll.89-90)とHa-la-yun-log(l.91)が、それぞれカーシュガリー(11世紀の人)の『トルコ語アラビア語辞典』に西方Oγuz集団の構成部族として列挙されているBečenek()とUla-Yundluγ()に当たることは疑いない(111)。とくに後者が正しくはAla-Yundluγであり(112)、これが「ブチの馬を持つ(民)」即ち「駮馬国」のことを指していることは既にリゲティによって明らかにされた(113)。
p.92
結骨がキルギスであることは論を俟たないから、図のようにしてみると、結骨と駮馬の敵対関係も、キルギスとKäštim(ケシュティム)=可史擔の密接な関係も(116)実に明解に説明される。ただしこの図の中のトゥルギシュの領域は、P. t. 1283文書の時代には既にカルルクの占拠するところとなっている。こうしてみると駮馬国すなわちHa-la-yun-logの住地は自ら明らかとなる。駮馬国の近くにある北海とは勿論バイカル湖のことではあり得ないし、かと言ってこれを北極海までもっていくのも無理なようであるから、恐らく西シベリア低地の大湿地地帯のことを言ったものであろう。
p.93
Ha-la-yun-logの東にいるBe-če-nagがペチェネーグであることは問題ない。…それゆえ本文書はOγuzの西遷以前の中央アジアの情勢やペチェネーグの原住地を伝える極めて貴重なものであるが、今はこの問題に深入りしない。本文書のBe-če-nagは恐らくアルタイ山脈とタルバガタイ山脈の中間に拠っていたのであろう。
p.94
それは第5の報告のGar-logからHa-la-yun-logまでの道順の中で、先行する部族集団からの方角が記されていないのはこのOg-ragと大Ho-yo-horの間だけだからである。そこでこの大Ho-yo-horに関する記述は、本文書の編者が誤ってこの箇所に挿入したものと考え、I-byil-korは大Ho-yo-horではなくOg-ragの北東にいたと解釈すると、全体の道筋と実際の位置とはうまく一致する。
…ペリオはll.92-93のUd-ha-dag-legをトルコ語でUd-adaγliγ＝「牛の足を持つ(民)」と解釈したが、この説には何の疑いもない。古来「山羊の足を持つ人」とか馬脛国・馬蹄国とか言われたものが全て山間のスキー使用民族のことを誇張して伝えたものであることは周知の事実で、また唐代の木馬突厥もこれと同じであるが、何もスキー使用民族は山羊や馬にだけ例えられたわけではない。
20191014
20191016
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少数民族出身で初の快挙！ 中国芸能界”注目度No.1”のエキゾチック美女って!?
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中国の大手インターネットメディア「テンセント」が、2018年にネットで注目された芸能人ランキングを発表。女優のディリラバ（迪麗熱巴）が女性部門の1位に輝いた。
ディリラバは、新疆ウイグル自治区のウルムチ市出身の26歳。彫りの深いエキゾチックな顔立ちと、身長168�僉�体重47kgという抜群のスタイルを武器に、モデルや女優として活躍している。男女問わず支持されており、中国のサッカーチームでプレーする、元ブラジル代表のアレシャンドレ・パトの“お気に入り女優”として、海外でも話題になった。
彼女の中国版Twitter「微博」公式アカウントのフォロワー数は6,000万人を超え、レディー・ガガのTwitterのフォロワー数にも迫る勢いだ。
彼女は上海戯劇学院を卒業後、2013年に地元新疆のテレビドラマで女優デビュー。15年放送のドラマ『克拉恋人』で人気を集めた。その後も話題作に出演し、全国区の人気を獲得していく。18年には、中国のテレビ番組に関する賞『中国電視金鷹奨』で、観客賞と女優賞をダブル受賞した。
ちなみに、少数民族出身の芸能人が中国の人気ランキングで1位になるのは異例なこと。中国の主要民族である漢族が芸能界でも大部分を占めており、制作されるドラマや映画でのメインキャストは基本的には漢族であることが多い。結果的に、人気の俳優も漢族がランキング上位となりやすい。そんな中でのディリラバの1位は、ある意味、快挙なのだ。
中国の芸能界に詳しいライターは、ディリラバの人気の背景についてこう見る。
「以前はドラマや映画がヒットすることで、演じた役柄を通じて女優たちは人気を獲得していましたが、今はSNSに自撮り写真をアップしたりすることで、知名度を上げています。彼女の顔は立体的な美しさで特徴があるし、覚えやすい。SNSなしでは、ここまで人気を獲得できなかったはず」
中国ではこの数年、グーリー・ナーザー（古力娜扎）やトン・リーヤー（佟麗婭 ）など、新疆ウイグル自治区出身の女優が人気を集めている。
中央政府による漢民族との同化政策が強められている同自治区だが、彼らの活躍がウイグル族の地位向上につながることを期待したい。
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