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2019年04月27日23:04

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渡部純子 パセオフラメンコソロライヴVol.109

「自分が楽しむよりも、人が楽しんでいるのが好き。フラメンコでみんなが幸せになるといいな」
終演後、さっぱりとした突き抜けた笑顔でそう言った、渡部純子さんが眩しかった。
初っ端から大全開のティエントス。いきなり切り込んで来る。舞台ど真ん中、落っこちそうなくらい前に出て、太陽みたいに圧をかけて来る。トルネードのような回転をした途端、目にも止まらぬ速さでペイネタがぶっ飛ぶ。
ハレオでは、膝上のミニスカートにペタンコ靴、籠を手にしてローズマリーの枝を売る街角の売り子に扮した(パストーラ・ガルバンって言ってた)。アレグリアスは黒いパンツスーツで披露し、ファルーカ的な雄々しい闘牛を踊り、ラストのソレアは、カルメンを想わせる真っ赤なノースリーブのドレスでのびやかにすべてを振り絞った。彼女の中で限界を超えることは当然のことなのだ。情感も身体も、惜しみなくフルにさらす潔さに、私はどれだけ力をもらったことか分からない。

自分自身をすべて投げ出すフラメンコなのに、そこにはまったく自我の主張が無い。彼女の意識は細胞の隅々まで、音楽陣に、観客に、つまり他者に向けられているのだ。渡部さんの溢れるサービス精神、それは“無私”の奉仕精神に他ならない。
“私を見て見て!”という自己主張ばかりのこのご時世、なんて対称的、なんて稀有な存在だろう。
「人のために完全燃焼することに快感を覚える」とも語っていた。彼女の自己実現とは、他者への感謝なのだ。この在り方がかっこいい。側にいるだけで快い。であるならば、なんという素敵な出会いだろう。この出会いに感謝するということは、私もそういう生き方を目指すということだ。
まだドキドキしている。こういう存在に、男も女も惚れる。
プレゼンタシオンを楽しんでもらいたいという純子さんがそっとつぶやいた。
「私はドリフ」
名言だった。

ヴァイオリンの三木重人さんの珍しいソロ、『リベルタンゴ』『枯葉』泣かせる音色だった。勝羽ユキさん、湿度のある伸びやかな声により重心が加わった貫録のカンテ。
今田央さんの寄り添うギター。伊集院史朗さんの空間をつなぐ優しさ。
気付けば、平成最後を締めくくったパセオライヴ、その余韻は最高の気分。

パセオフラメンコライヴVol.109
2019年4月25日(木)
高円寺エスペランサ
バイレ:渡部純子
カンテ:勝羽ユキ
ギター:今田央
ヴァイオリン:三木重人
パルマ&カホン:伊集院史朗

(撮影 井口由美子)


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