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2018年09月02日21:35

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〈旭山動物園〉革命[読書日記689]

題名:〈旭山動物園〉革命――夢を実現した復活プロジェクト
著者:小菅 正夫(こすげ・まさお)
出版:角川Oneテーマ21
価格:724円+税(2006年4月 3版発行)
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8月5日の読書日記に書いた『戦う動物園』で紹介されていた本です。

目次を紹介します。
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 はじめに
 第一章 「旭山動物園」復活プロジェクト
 第二章 動物の側になって考える
 第三章 動物から教えられること
 第四章 改革に必要な組織とは何か
 第五章 動物園と日本人
 あとがき

旭川市旭山動物園は、動物の生態をいきいきとお客様に見せる「行動展示」(たとえば、透明なチューブの中をペンギンが泳ぎ、その姿を入園者は下から見上げることができる等)が有名ですが、それ以外にも動物を身近に感じられるようにさまざまな工夫がされているそうです。

たとえば、飼育係が自分で入園者に説明する「ワンポイントガイド」。
動物にまつわるエピソードを話したり、動物のうんこを並べて「キリンのうんこはどれ?」と聞いたり……。
また、チンパンジーと人間で綱引きをさせたり。(17p)
チンパンジーは握力が非常に強く、大人が三人掛かっても、チンパンジー一頭にはかなわないことがわかったそうです(残念ながら、今は飼育員が退職して行なっていないそうですが)。

今は有名になって、月間の入園者が上野動物園を上回る月もある旭山動物園ですが、「動物園(の施設)に使うお金は無駄」と言われ、新しい施設が作れない不遇の時代もあったそうです。
そんな時も、当時の園長の“「いまはお金がないかもしれないが、みんなで話し合って、施設のアイデアを出してみたらどうだ」という助言もあって、それ以来、飼育係が夜な夜な集まっては「理想の動物園」について、話し合いを始めたのである”(43p)
そういったバックボーンがあってこそ、動物の生態を見ることのできる施設ができたということでしょう。

【第二章 動物の側になって考える】から、異種の動物を同居させる「共生展示」(56p)と「「死」を伝える」(68p)を引用します。
1.棲み分け
“ゾウとペリカン、キリンとホロホロチョウ、クモザルとカピパラ、それぞれが、互いの存在を意識しつつも、しかし争わない。(略)
 自然界では、動物園のように、一種類の動物だけで生きているものはない。何かしらほかの動物と共存している。
 一種類だけで固まって生きるというような、変わったことをしているのは人間ぐらいだ。だからいろんなひずみが出る”(58p)

2.「死」を伝える
“最近、聞いた話で驚いたのは、「生物は一度死んでも生き返る」と思っている子どもが少なくないということだ。
 病院で死ぬことが多くなり、死が実生活から遠ざけられているからかもしれない。命の大切さを心に刻むには、身近な生物の「死」を体験することが必要だ。愛していたものが死んだとき、たとえそれが動物園の動物であれ、素晴らしいと感動した動物が動物が死んだときには、死を実感する。
 そうした体験があって初めて、かけがえのない命であることや、命は大切にしなければならないということを認識できるのだ”(67p)
“動物が死んだことを、手書きのポップで知らせる活動である。動物が死んだ年月日、死因、死亡したときの年齢、動物が子どもを産んだことなどが書かれる”(68p)

北海道には、まだ二度しか行っていませんが、三度目の旅行では旭山動物園を見たいと思いました。

追記:
もう一冊、『戦う動物園』で紹介されていた絵本『あらしのよるに』も読みました。
絵を担当している、あべ弘士さんは旭山動物園の飼育係から絵本作家になったそうです。
シリーズの一冊目を読みましたが、二冊目以降の展開を知りたくなるお話でした。

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小菅 正夫(こすげ・まさお)
1948年、北海道・札幌市生まれ。北海道・旭川市旭山動物園園長。
73年、北海道大学獣医学部卒業。旭川市旭山動物園に獣医師として就職。その後、飼育係長などを歴任し、「親子動物教室」、夜9時まで開園する「夜の動物園」などの斬新な企画を連発する。
95年、園長に就任するも翌年には入園者が過去最悪の26万人に激減し廃園の危機となる。
その後、職員、関係者の努力で復活に成功。2004年には過去最高の145万人が来園し、月間の入場者数で上野動物園を上回り「日本一の動物園」としてマスコミで話題となる。現在では経済界からも注目されている。
04年、「あざらし館」が日経MJ賞を受賞。人の暮らし方を考える「石狩川水系淡水生態館」実現が最後の夢である。

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