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2016年09月10日08:39

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小倉昌夫 祈りと経営[読書日記592]

題名:小倉昌夫 祈りと経営 ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの
著者:森 健
出版:小学館
価格:1600円+税(2016年4月第3刷発行)
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ヤマト運輸の元社長で、名経営者として知られた小倉昌夫さんの後半生を描いたノンフィクションです。

小倉さんはヤマト運輸の会長を退いたあと、障害者福祉を目的とした「ヤマト福祉財団」を設立したことで知られています。

「ヤマト福祉財団」の設立について、著者は次のように書いています。
“小倉は1993年、自身が所有していたヤマト運輸の株三百万株のうち時価二十四億円の二百万株を原資にヤマト福祉財団を設立した。1995年からはその活動を障害者の就労支援に絞り、障害者が働けるパン屋「スワンベーカリー」の立ち上げなど、障害者が月給で十万円はもらえるような仕組みづくりの活動に取り組んだ。そして、2001年には保有していた、時価二十二億円の残り百万株も財団にまるごと寄付した。
小倉はこうした福祉への取り組みについて、自著でこう説明している。
<そもそも、私がなぜ福祉の財団をつくろうと思ったのかというと、実ははっきりした動機はありませんでした。ただ、ハンディキャップのある人たちになんとか手を差し伸べたい、そんな個人的な気持ちからスタートしたのです。>(『福祉を変える経営』)”(12p)

しかし、著者は「なぜ彼はほとんどの私財を投じて福祉の世界へ入ったのか」(12p)という疑問を抱き、その疑問を解くために、小倉昌夫さんの後半生を調べていきます。その過程が緻密で感心します。

目次を紹介します。
 序 章 名経営者の謎
 第1章 私財すべてを投じて
 第2章 経営と信仰
 第3章 事業の成功、家庭の敗北
 第4章 妻の死
 第5章 孤独の日々
 第6章 土曜日の女性
 第7章 子どもは語る
 第8章 最期の日々
 長いあとがき

本書の後半から、著者の疑問がだんだん解けてくるのですが、それを引用すると本書を読む楽しみが半減するので、この読書日記では伏せましょう。

小倉昌夫さんはクリスチャンだったそうですが、それに因んで「第8章 最期の日々」に、アメリカの神学者・ラインホルド・二―バーが唱えた『変わるべきものと変わるべからざるもの』が紹介されていますので、ここに引用します。

“その二―バーの祈りは世界的にこう伝えられている。
<神よ
 変えることができるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
 変えることのできないものについては、それを受け容れるだけの冷静さを与えたまえ。
 そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを識別する知恵を与えたまえ。>”(247p)

なお、本書は2015年に第22回小学館ノンフィクション大賞を受賞したそうです。

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森 健(もり・けん)
1968年1月29日、東京都生まれ。ジャーナリスト。
92年に早稲田大学法学部卒業。在学中からライター活動をはじめ、科学雑誌や総合誌の専属記者で活動。
96年にフリーランスに。
著書に『就活ってなんだ』(文春新書)、『勤めないという生き方』(KADOKAWA)、『「つなみ」の子どもたち』(文藝春秋)、『ビッグデータ社会の希望と憂鬱』(河出文庫)、『反動世代』(講談社)など。2012年、第43回大矢壮一ノンフィクション賞受賞。15年、本作で第22回小学館ノンフィクション大賞を受賞。

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