これは、オーストラリア発、クィアカルチャーや現代社会へのシニカルな風刺を盛り込んだ、異色のSFアドベンチャー・アニメ。
「TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー」、「リミテッド」などに参加したデザイナーでアニメーターのエマ・ハフ・ホブスによる初長編監督作となる。
惑星クリトポリス……そこは、ストレートの宇宙からシールドで護られた、レズビアンの惑星……そこは、伝説の武器〈ラブリュス〉を呼び出す力を持つ“クリトピアン”の一族が統治してきた。しかし、一族の後継者ながら、内気なプリンセス・サイラは未だ〈ラブリュス〉を呼び出す事が出来ずにいた。
23歳の誕生日。サイラは賞金稼ぎのガールフレンド・キキから、突然フラれてしまう……泣きじゃくり引きこもるサイラだが、そこにかつて宇宙最強を誇った“ストレート・ホワイト・メイリエンズ”からの強迫メールが届く。
彼らは、キキを人質にとり、〈ラブリュス〉の引き渡しを要求して来て……
これはなかなか挑戦的なアニメ映画。内気なプリンセスが、冒険の中で本当の自分を見出す、と言う、ディズニーアニメの王道ストーリーを、レズビアンを主人公に、大胆な性描写(サイラのペットはモロに女性器そのまま)を辞さずに描くのだ。
確かに、絵柄としてはシンプルな描線のカートゥーン風ではあるが、これがレイティング上、全年齢公開となっている事には驚いた。
物語は、前述したように定番ものだが、レズビアンの女性を主人公にした事で、価値観は反転、本作における悪役“ストレート・ホワイト・メイリエンズ”とは、異性愛者の白人男性(ただし非モテ)なのだ。彼らの趣味趣向、そして動機については、女性目線でカリカチュアライズされており、女性にとって「理解の出来ない」ものであるのだろう……まぁ、言い方を変えれば、映画「バービー」で描かれた“ケンの世界”の非モテ版だ――ただ、彼らに通じる部分のある男性でもある自分には、理解出来てしまうが故に、痛くもあり、心地悪くもある描写だった。
しかも、サイラに打ち負かされた彼らが、“男性優位の妄想を捨て、女性を同じ人間と見て対等の関係を築く”と言うあるべき結果ではなく、“男同士で慰め合う”と言う、更に狭い世界に閉じこもってしまう、と言うのは、本当に痛い描写だった。
このオチは痛烈だったが、そのクライマックスまでの道程がちょっと中弛みする感じで、ちょっと退屈に思えたのが残念――途中、ノンバイナリーのシンガー・ウィローを出会うなどの工夫もあるのだが……
ただ、本当に大事なのは“自分らしくあること”と言うクライマックスは心動かされるもので、最後、サイラがクィーンとなるのは痛快だ。
これは日本では絶対に出来ないアニメだ、でも、世界の何処かでは、こんなアニメが作られてしまう。だから外国の映画を観るのは止められない。
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