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2025年12月05日00:34

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彼女にナニが起こったか2025 その1

少し前に触れたが、職場で面倒な問題が起きている。
部下の女性が休職中なのだが、原因が人間関係だと本人は宣う。
管理職で所属長である僕は本人とも繰り返し面談を重ねてきたが、
本人が本格的に音を上げ始めていた事には夏場には気付いていたにも拘らず、
「もう少し頑張ろうか」
などと結論付けて9月半ばまで頑張らせてしまった。
この点については大いに反省している。

彼女と僕の出会いは、まだ同じ部署の配属になるずっと前の話である。
今の部署の隣にデスクが所在する別の部で仕事をしていた時に
今の部署にアルバイトとして彼女は入社した。
「おはよう」「初めまして」などと声を掛けたのに
ろくに返事もせずに目を逸らすばかりか、
その部署の社員の所在を尋ねても
「分かりません」
と答えるようなおかしな反応を示したので
(嫌われているのかな)
などと思ったのだが、その日の夕方に彼女の好きなジャンルの広告が
乗っている夕刊を読んでいたら
「これ、私、貰っても良いですか」
と気安く声を掛けてきた。
「良いけど。読み終わってからね。というか、これは
会社のある部署のリソースだから、本来は僕がOK出すもんじゃないけど」
と言うと、プイとどこかに去って行ったのである。

またある時は、社員同士でカレーの話題で盛り上がっていた時に
まるで別の人みたいに
「私、ここが行きつけなんです」
と話しかけてくるのである。
「あ、そうなの?この店は開店当時から通ってるから、
既に店で顔を合わせているかもね」
というと、またプイとどこかに去って行くのである。
仕事がらみの話をしても
良く分かったような分からないような反応を示すのだが
特定のジャンルの話になるとパッと明るくなるのが
本当に可愛かった。
今から10年余り前の話である。

しかし、アルバイトであるから、一定期間が過ぎると
雇用期間満了となるので気にも留めていなかったが
それから3年が過ぎたある日、社報を見て驚いた。
彼女が社員になると書かれていたのである。
僕は当時は九州に転勤していて、彼女が大阪でミスばかりしているとか
トラブルを多発させていると伝聞で聴いていたので、
いったい何事が起きたのかと思い、
本人に電話して尋ねたのである。
「社員になるって、本当?驚いたわ。おめでとう」
「そんなに驚きます?」
「だって、挨拶も出来ないし、質問にもろくに答えない人が
社員登用にまで漕ぎつけるって」
「まぁ、あの頃は照れてたんちゃいますか」
「驚いたのは、僕と同じ年という事や。もっと若いと思ってた」
「ええ?そうなんですか」
しこたま惚けた回答である。悪びれないのは悪くはない。
しかし、社員になっても何かズレている気はしていた。

その後、何回か九州と大阪の彼女の部署で連携して仕事をする機会は
何回かあったが、頻繁に彼女はトラブルを起こしていた。
そして数か月後、とうとう彼女は休職してしまった
「いったい何があったんだ」
その部の部長、つまり今の僕の前任者に尋ねると
兎に角、何某かの理由を付けては遅刻を繰り返すばかりか、
間違った内容の成果物を乱発して、得意先にも社内の関連部者にも総スカン状態で
最初は上司筋が守って何とか維持していたが
途中から本人が勘違いして上司の判断を仰がず交渉をしたりして
トラブってしまったのだと
「違うんだ。一目見た時からトラブルメイカーの雰囲気はあったのに
どうして社員登用に至ったのか?と尋ねているのだ」
「それがなぁ」
その質問になると必ず濁さされてしまうのだが
その部長は僕の先輩筋で、問い詰めるまでは出来なかった。

それから数年して、僕は九州から再び大阪に異動となり
何の因果か彼女の居る部の管理職として赴任した。
この部は煮ても焼いても食えない輩の巣窟である事は
赴任前から知っていた。
赴任の前の年には、元居た僕の部から追い出された中途採用の後輩が
給料の低さを理由に依願退職。
しかし、本当の理由は
話の通じない彼に周囲が手を焼いており、
あの手この手で転職を唆したのだ。
その彼も同業他社の転職先で再びトラブルを起こし
来月、退職予定だ。
その前の年には、プロパー社員の売り上げの私的流用が発覚。
10年にわたる使途不明金総額は年収を超える額であり、
後から私的補填して示談にしたものの、退職後に
うちの会社を訴訟する動きを見せる(未遂に終わった)など、
トラブルが絶えなかったのだ。
彼女が入社したのはその少し前の事だが、
他にも別部署で休職経験のある中年部員や
ハラスメント事案で配転された部員や
使途不明金社員に売り上げの私的流用を指南したと思われるシニアスタッフ、
更に部署が廃止されたため行き場を失った非デジタルの権化のようなシニアスタッフ、
そして一番厄介なのが
僕より年長で部の在籍年数は30念越えながら、
社内のすべての部署から蛇蝎のごとく嫌われている中間管理職の部下である。
兎に角、多士済々の問題児が集結しており、
彼女の存在などはちっぽけな問題だと思われる程に
「動物園」の職場であった。

それでも二、三人の「まとも」な社員に支えられ、
何とか運営可能であるから恐ろしい。
寧ろアナログな対面業務が多いので、世間的に求められている
業務のデジタル化は「後回し」にしても困る事は無かった。
しかし、デジタル化は出来るものが道筋を見極めて
先々にむけて粛々と進めて行かねばならない。

「お前、この部を良くしようと思ったらどうすればいいと考える」
分かったような顔で当時の上司が僕に尋ねる。
「可能であれば、部員の総入れ替えですね。無理でしょうけど」
「まぁ、現実的ではないな」
「旧時代的なメンターが且つて居て、その影響が色濃く残ってますね」
「ああ、あの人な。しかし、あの人はお前を買って居るぞ」
あの人、というのは当時の取締役で昔、その部署の部長を務め、
部の出身者で初めて誕生した役員でもあった人である。
「あの人が、どう思っているかは知りませんが
あの人の弟子筋はとても出来が悪いですよ」
「お前、口が過ぎるぞ」
「しかし、部の高齢化は顕著で、社が目指す様々な事の障壁になるのは
自明の理ですよ」
「それをどうしたら良いのか、尋ねてるんだ」
「まず、あの部次長を一日も早く降格させて、例の彼を後任に据える」
「それは弟子が可愛いあの人が許さないだろう」
「あの人は、仕事は作ったが人は作らなかった。そのツケを我々が払わされる、という構図の中でやるべき事はそういう事じゃないですか。
次の人事異動で平均年齢を下げて、僕の在籍中に後任候補を
自前の部署から出す。
それが叶わなければ、僕自身を降格させて、管理職を貰ってきて
時間稼ぎをするとか」
「お前は着任早々逃げようとしているのか。ずるいぞ」
話にならない会話である。
その時に、既に彼女が火種になる懸念は大いにあったが
着任したばかりのこの時の僕には
本当に「どうにでもなる捻り潰せる問題」としか考えていなかったのである。

暫くすると、その上司が身体的不調を理由に職務離脱となり
「例の彼」と呼んでいた次期幹部候補は昇格という手土産で
別の部署に異動した。
売り上げの私的流用を指南したシニアスタッフは年齢制限の最初の関門で
契約更新を拒み、
非デジのシニアスタッフも同期全員が契約更新する中、彼一人を更新しなかった。
何しろ、カードで買い物をすることすら出来ないロートルで
元は役員候補だった男だが、アップデートが出来ないのが
最大の難点である事は本人も気付かぬはずはない。
「この業務出来ますか」
「分からんけど、やってみる」
最初の反応は悪くないが、やはり途中で躓く。
「分からなかったら、誰にでも訊いてください。皆、出来るので」
「それは、俺を馬鹿にしているのか」
「そう取られるのであれば、それでも結構です。
ただ、この業務は貴方が以前、現場に指示して始めた業務であって
最初は皆、出来なかったのです。
出来るように色々工夫して且つての指示が実行可能になった事は
ご存じの筈で」
実はその非デジ男はかつての僕の上司で、無理難題を吹っ掛ける上に
酒乱で最低の男だった。僕とは幾度となく衝突し
「今言ったこと、忘れないでくださいね」
と喧嘩を売った事数知れずである。
その男の最大の弱点がデジタルであり、僕は一定の配慮をしていた。
「出来ないと思ったら、早めに助けを求めて下さいね」
「分かった」
「やってみて、ギリギリに、やっぱり無理、となるのが一番困るから」
「分かってるって」
こういう忖度はしないけどサッと手を出して
苦手分野をカバーするのが最適である事は
言わずもがなといった所なのである。

そんな元上級役職者の非デジ男に対しても
「何もできないくせに、偉そうに」
と憤慨していたのが件の彼女である。
「お前が出来ない事をあの人は出来るんやで」
「電話応対一つとっても出鱈目ですやん」
「それでも彼は、お前が途中で投げ出した幾つかの業務を
あの年齢で手習いしてどうにかやってる」
実は彼女は他部署からのクレームで幾つかの業務から外されている。
その上、遅刻魔でとんでもないミスを連発して
担当業務を途中で外した事もある。
得意先からのクレームもあったし、色々あった身である。
電話応対も実はその非デジを除いたメンバーの中では最低レベルである。
失礼な発言に激高した顧客に逆に泣かされて
受話器を置いてトイレに駆け込んだこともある。
「私は、悪くない」
それが口癖だった。
「だとしても、あの人を悪く言える身の上だとは思わないけどな」
「私とあの人とどっちの味方なんですか」
「はっきり言おう。どちらの味方でもない。
やるべき事をちゃんと出来ない人に払う敬意も給料もないと思ってる。」
僕はいつもそうやって辛辣に彼女の憤懣遣る方ない感情は
一刀両断にしていたのである。

僕が赴任して最初の夏に配属されたのがその非デジで
翌春に幹部候補の部員が異動で配転
その代替要員で元アルバイトで所属していた社員が配属され
その年の冬にお金の怪しいシニアが退職
翌年の冬に派遣の40代女性を補充した上で
非デジが退職、
翌年の夏に次の40代幹部候補が家庭の都合で自己退職すると
どうしても彼女に仕事を回していく必要が生じていた。

「彼女には無理だと思うんです」
中間管理職の男が進言する。実は最も仕事が出来ないのは
この中間管理職である。
「僕は○○だと考えるが、次長はどう考える?」
と問うても
「部長のおっしゃる通りにします」
と答えるのは構わないのだが
「○○は好きにして良い。任せる」
と任せたら最後、仕事を抱え込んでズタズタにする。
「どうして、ここまでしかやらないのか」
と問い詰めれば
「ご指示が無かったので。これで良いと私が判断しました」
と悪びれず回答するのである。
「そう判断したのはまぁ、良いだろう。
しかし、その結果、部下の彼の仕事に支障を来すことは
予想できたはずだ。
にも拘わらず、事前に情報共有するなり、歩調を合わせて調整するなり
やるべきことがあった筈で、どうしてしなかったのか。
部として目指すことに対して、自分のノルマだけを追うような事をして
部下の仕事にネガティブな影響を及ぼして何故、平気なのか」
「ご指示が無かったので」
「仮にも管理職なのだから、全体を見渡して是非を問うのは当然のことで
『言われなかったから、しない』はおかしい。
仮に気付かなかったとして、今から修正するのは構わないけれども、
そういった『言われなかったから、しない』発言を
部下の前で行うのは人材育成上、大きな問題があるとは考えないのか」
「言われてみれば、そうかも知れません」

ダメだ、こりゃ。。。
その結果、ポンコツな休職経験持ちと彼女もこの中間管理職に
大きく失望するのである。

そして、今年の春
いよいよ最大の事件が起きるのである。

以下、次項。

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