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2024年03月28日16:58

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ゼロゼロ融資で増えた「ゾンビ企業」の生存戦略

資金繰りに苦しむ企業はどうすればいいのか
中井 彰人 : 流通アナリスト

2024/02/27 5:00



帝国データバンク(TDB)が、「『ゾンビ企業』の現状分析」というレポートを出している。ゾンビ企業とは、国際決済銀行(BIS)が定義する「死に体企業」といった意味合いで、業歴10年で(営業利益+受取利息配当金)が金利支払いを下回っている企業のことを指している、のだという。

ざっくり言ってしまうと、借り入れして事業をやっても、利息分の儲けも出ないということであり、貸している側からすれば、返済どころか金利支払いさえ危ういリスキーな企業である、ということだ。

同レポートによると近年、ゾンビ企業が増えているという。その背景として指摘されているのが、コロナ禍で困窮する中小零細企業の資金繰りを支えるために国策として実施された「ゼロゼロ融資」がゾンビ企業の延命にもつながった、ということである。

「ゼロゼロ融資」で延命された企業の資金繰り
「ゼロゼロ融資」とは、コロナ禍という「災害」によって企業活動が制約されたことで、資金繰りに支障をきたすことを防ぐため、一定条件を満たす企業に対して、審査条件を大幅に緩和した制度融資を流し込んで、企業破綻の大量発生を回避したという国策だった。

これにより、コロナ禍によって資金繰りに影響を受けていた中小企業が数多く救済された。だが、平常時なら市場から退場させられるはずの企業が存続できてしまった、というのも確かである。


中小企業庁の「倒産の状況」によれば、コロナ禍の2021年〜2022年には明らかに中小企業の倒産件数が減少し、2023年に元の水準に戻っている。この減っていた部分はゼロゼロ融資によって延命したと解釈してもいいだろう。そして、2023年から返済据置期間付きのゼロゼロ融資の返済開始を迎えており、延命された企業の資金繰りが懸念される時期に至っているのである。


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ゼロゼロ融資は政府系金融機関(日本政策金融公庫、商工中金など)の融資と、民間金融機関の2つのルートがある。民間金融機関ルートについては、政策融資に応じられるよう全国の信用保証協会が100%保証する仕組みになっていた。

これは民間金融機関が貸し倒れを恐れて制度的融資を行わないことを避けるために、回収が不能になった場合は、信用保証協会(保証協会)が100%肩代わり(代位弁済、以下「代弁」)するというものだ。民間の中小零細企業向け融資において、これまでにもあった支援制度なのだが、この保証審査基準を緩和することで、潤沢な資金が企業に提供された。

企業の資金繰りが立ち行かなくなった際の保証協会の代弁の件数を見ても、コロナ禍の減少とアフターコロナの増加の兆候は明らかである。ちなみに、代弁という段階に至る=倒産ではないが、実質的には経営破綻という状況に陥っているとみていいだろう。


予備群の資金繰りが破綻する可能性
この表をみると、2011年から2019年までの平均代弁件数は年間5万件強あったが、2020年以降は、ぐっと減って2万〜3万件で推移しており、単純計算で累積8万5000件弱が平時の件数より少なかったことになる。

残念ながら、市場から退場する企業は一定割合で発生することは避けられない、という前提に立てば、その分の件数が代弁予備群として先送られた状態だ。ゼロゼロ融資の返済が開始時期を迎えたということは、この先送りした予備群の資金繰りが破綻する可能性があることを金融機関としては、想定せねばならない。これは政府系金融機関においても同様であることは言うまでもない。


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こうした3年半分、先送られた予備群に加えて、平時でも発生してきた年間5万件程度の企業の資金繰りが一斉に困窮した場合、金融現場における融資業務にとって大きなしわ寄せが発生する。現場窓口には、返済を延滞する懸念がある企業からの資金繰り、事業継続に関する事前相談が急増するであろうし、ある日突然、延滞したり、倒産してしまうケースも増えるだろう。

資金繰り困窮に関する条件変更対応(返済条件を緩和して返済を少なくしたり、一時繰り延べること)や延滞、倒産といった手続きは、平時に融資を審査し、実行する手続きよりも何倍、何十倍も手間がかかる、というのが実情である。

近年、倒産件数の減少もあって、金融現場では条件変更や企業破綻対応に習熟した人材は多くはない。バブル崩壊直後の金融界では、こうした債権管理回収の熟練者が多数いたのだが、20年たった今、彼らのほとんどが定年を迎えて金融の現場にはいない。特に信用金庫といった地域密着型の中小金融機関は人材が豊富とは言いがたく、元気な企業の資金調達を支援する前向きの余力を失わせる可能性さえある。

ここからやってくる本当の「融資審査」
ここまで聞いていると、ゾンビ企業を産み出したゼロゼロ融資が悪の根源であり、政府の無策が混乱を引き起こしたように聞こえるかもしれない。国が100%保証したことで、金融機関の審査や経営管理が甘くなったからだ、という指摘もあるが、この融資が「災害対応」として緊急的にすべての企業の時間を先送ることを目的としていたのであり、そんなことは当たり前なのである。先送れば、必ずその分の審査や経営管理を、後でまとめてやらねばならない、というだけだ。

中小企業サイドとしても、ここから本当の「融資審査」をクリアせねばならない。借りたときには審査対応で大した手間もかからなかったはずなのだから、かなりの労力がかかったとしても生き残るためには仕方がない。

そして、そのためには、金融庁が定めたルールや、金融機関の論理については、よく把握したうえで交渉に臨むべきだ。みずから調べるなり、対応可能な相談者を探すなり、ここは手間を惜しんではいけない。


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金融機関を監督する金融庁は、現場の機能不全を避けるため、資金繰りに窮する企業に対する相談対応や条件変更に金融機関が柔軟に対応するよう指導が始まっている。

金融庁は、2023年の11月に、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)を公表したが、その趣旨を「令和5年7月以降、民間金融機関において実施した実質無利子・無担融資の返済が本格化しており、金融機関による資金繰り支援にとどまらない、事業者の実情に応じた経営改善や事業再生支援について、一層の推進を図るため」だと明記している。

内容として、ざっくり言えば、資金繰り悪化の兆候を事前に把握し、早め早めに経営改善のための計画策定等について関係機関が総がかりで、中小企業支援を行うことで、経営破綻を未然防止する、ということだ。経済産業省、中小企業庁なども連携して、経営改善に努める中小企業を支援する施策を整えている。

時間的な猶予は得られる可能性
例えば、認定経営革新等支援機関の支援を受ける計画策定に係る費用にも補助金であったり、ゼロゼロ融資の実質返済繰り延べが可能になる「コロナ借換保証」といった制度も用意されている。これもリンクをみればわかるが、合理的な改善計画を添えることが必須条件となっている。逆にいえば、経営改善計画を作りさえすれば、時間的な猶予は得られる可能性がある、と解釈することもできる。

資金繰り破綻の未然防止は、今、中小企業支援の大きな柱となっている。ゼロゼロ融資の返済開始で資金繰りに困っている、困ることが目に見えている企業は早めに、こうした制度を活用するように動き始めたほうがいい、ということだ。

これまで資金繰りについて誰かに相談したことがないのでやり方がわからない、とか、金融機関との交渉事は苦手だ、という企業も多いかもしれないが、国などがこうした体制でなんとか存続のための支援をしようとしているタイミングで、乗っかるほうが得策である。


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ここからはまったくの私見として聞いていただきたい。地域の金融システムを守っていくためには、ここで一斉に倒産されると国も困る。倒産対応という後ろ向きのエネルギーに割かれて、前向きな企業への地域金融システムが支障をきたすようになれば、地域経済には悪影響しかない。

であれば、きちんとした合理的な経営改善計画さえ備えれば、返済条件の変更に応じて少しでも資金繰り破綻を先送りしたいはずだ。その流れの中で、金融機関が相談に応じる可能性はこれまでになく高くなっているはずだ。

とにかく、企業としても返済緩和で時間を稼ぐことができれば、稼いだ時間で事業を再構築できる可能性だけは生まれる。このままでは存続は難しいと感じている経営者もおられるだろうが、ダメ元でやってみる価値はある、と申し上げたい。ただ、少なくとも、計画書という形式を準備しなければ、金融機関が助け舟を出せないルールであることは覚えておいてほしい。

金融機関との関係ができていない場合は…
中小零細企業経営者の方の中には、金融機関との関係ができていない、とか、親しい税理士や中小企業診断士などがいない、という方々も少なくないだろう。そんな時は、各都道府県内に必ず設置されている「よろず支援機関」(各都道府県の拠点)を訪ねてみることをお勧めしたい。ここは国が設置した中小零細企業の無料相談窓口であり、資金繰り問題に限らず、さまざまな相談事に対応する窓口であり、医療制度に例えれば「かかりつけ医」の役割を担っている。

内容に応じて完結することもあるが、かかりつけ医のように相談先を紹介してくれることもある(できれば、金融機関経験のある中小企業診断士などを、指名して相談するのがいいかもしれない)。結果どうなるかはわからないとはいえ、まずは支援制度の扉をノックしなければ、可能性もゼロゼロのままなのである。

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