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2024年03月03日23:36

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原作と映像の幸福な補完。キング的郷愁ホラーに換骨奪胎 『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』

映画『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ(以下“FNAF”)』は、原作ビデオゲームの要素を取り込み映画独自の物語へ換骨奪胎した作品だ。*1

過去に弟を目の前で誘拐され、事件の真実を探し続けるマイクは人生に行き詰まり気味。最愛の妹で自閉症のアビーの親権がうばわれそうになるなか、過去のトラウマのせいで暴行を働き職を失う。

そのマイクが引き受けた仕事が、廃墟となった「フレディ・ファブベアーズ・ピザ」の夜間警備であった。*2

主人公マイクが妹を守り、過去の悪夢と対決するトラウマ退治。映画FNAFの物語はノスタルジーを感覚するスティーヴン・キング的郷愁ホラーだ。そもそも「ジャンプスケアだるまさんがころんだ」のビデオゲームをそのまま映画にはできない。*3

改変が必要だ。

その原作と違う映画が3億ドルの興収を得た理由とは“ただしい原作改変”を好意的にファンたちが受け入れたからだ。

原作つき作品を別媒体化するとき「いかにあるべきか?」の議論が熱を帯びる。*4

本作のアイコンでマイクと対決する恐怖の殺人ロボット――フレディ、ボニー、チカ、フォクシーのアニマトロニクス。

このアニマトロニクスを本当に自作するほど、プロデューサーのジェイソン・ブラムは本作に惚れ込み、何年もかけてゲーム原作者と脚本をリライトした。その情熱と真摯な態度はやはり人々につたわるものなのだ。

原作と映像の幸福な補完とは、このような作品なのだろう。


※1 「まったく原作と違う」と語る一定の人々がいるが、悪夢の要素も行方不明事件の一件も原作に存在する。また映画の最後に存在する続編の気配も原作の要素を踏襲している(そうして実際に続編制作が決定した。3億ドルの興行なら当然だ)。

※2 ちなみにビデオゲームと一緒で映画はマイクの5日間の夜間警備の記録だ。

※3 ※1も参照。インタラクティブなビデオゲームは個人が操作を行う能動体験だ。このため「だるまさんがころんだ」だけでも成立する。だが、映像鑑賞は映像を観客が受け取り続ける受動体験だ。「だるまさんがころんだ」だけでは作品にはならない。物語が必要だ。

※4 原作を改変するなといっているわけではない。人々は「原作が大切/尊重している“精神”の改変はするな」といっているのだ。そもそも、なぜこれほど原作改変に人々が激怒したかは今回の問題と別の部分に存在する。人々は「自身と別の赤の他人が本人の意志を無視して他人の成果を自分のもののように勝手にハンドリングしている」。そこに怒るのだ。これはすべての人々が持つ権利に影響する。これほど単純なこともわからない作り手が原作つき作品を良い形で別の媒体に改変できるわけなどないのだ。
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