「プレデター：ザ・プレイ」

Disney+で『プレデター：ザ・プレイ』を観た。アーノルド・シュワルツェネッガー主演の第一作『プレデター』（1987年）、第二作『プレデター２』（1990年）両作品とネイティブアメリカンに対するリスペクトを感じさせる、素晴らしい作品だった。ファンフィクション小説レベルの陳腐な出来に終わった『ザ・プレデター』（2018年）や、プレデター愛に溢れてはいるもののどこか中途半端だった『プレデターズ』（2010年）よりはるかに真面目で、丁寧に「新しいプレデターの物語」を紡ごうとする制作陣の明確な意志が伺えた。ちなみに、邦題は『プレデター：ザ・プレイ』だが、原題は単に「プレイ（PREY:獲物、戦利品）」である。明らかに、「プレデター（殺戮者、捕食者）」と対をなす「プレイ（獲物）」であり、味のあるタイトルだ。

　1719年9月。グレートプレインズ（大平原）で暮らすコマンチ族の少女ナルは、女たちの役目である薬草や山菜採り、子育てには興味がなく、亡き父のように「立派な狩人」となることを夢見ていた。狩りは部族の男たち（戦士）の仕事で、「女は飯の支度をしていればよい」と考えられていたのだ。しかし、ナルは薬草を煎じて色々な薬を作る以外にも、動物の痕跡を追跡する術（トラッキング）に長け、投げ斧（トマホーク）も得意だった。ある時、愛犬サリィと獲物を追ううちに、空に雷鳴を聴き、雲の中から得体の知れない物体が轟音と共に光ながら降りて来るのを目撃。ナルはそこれこそ「雷神鳥（サンダーバード）」のしるしであり、自分が「試練の狩り」に出かけよとの啓示に違いないと兄タアベに告げる。部族で一人前の狩人（戦士）と認められるためには、猛獣を倒す「試練の狩り」に出かけ、獲物の首を持ち帰らねばならない。兄タアベは、「試練の狩りはお前が狩るのと同時に、お前が狩られることでもあるんだ」と相手にしない。

　ある日、部族の戦士がアメリカライオン（ピューマ）に襲われて、連れ去られるという事件が起きる。兄タアベたち戦士は救出するために森に向かうが、ナルも弓矢と槍を持って、兄たちを追う。「女は帰れ！」と仲間達に追い返されそうになるナルを、兄タアベは「妹は動物の痕跡を追うのが得意だ」とリーダーを説得。ナルには、「俺の顔を潰すなよ」と忠告して、救助グループに加える。しかし、その途中、ナルは熊よりもはるかに大きな「謎の生物」の足跡を発見し、兄たちに「森に危険な何かがいる」と伝えるのだが、女の言葉など信用しない。ナルはみんなに狩人（戦士）と認めてもらうために、愛犬サリィを連れ、森の奥を目指すのだったが・・・。

　この先、少しネタバレします。


　第一作の舞台より、260余年前の北米大陸。シリーズ史上、最も貧弱な武器でプレデターと対抗せねばならない人間達の壮絶な戦いには目をみはるものがある。バッファロー狩りの白人たちは先込め式の銃器や鉄製の罠を持っているが、ナルたちコマンチ族は弓矢と槍、投げ斧しかない。しかも、矢じり、槍の穂先、斧の刃は全て石器である。対するプレデターは形状こそ異なるが、シリーズに登場するほぼ全ての先進武器を使っている（肩に装備するプラズマキャノンは未登場）。圧倒的に不利な状況を、主人公ナルは持ち前の鋭い観察力、洞察力を駆使し、知恵と勇気でプレデターに対抗していく。

　この作品が第一作『プレデター』に大きな影響を受け、ナルとタアベが第一作の主人公ダッチ少佐（アーノルド・シュワルツェネッガー）の言動を忠実になぞっている点は非常に好感が持てる。しかも、ナルたちの描写には、大自然に生きるコマンチ族の文化への理解と畏敬の念が感じられる。これまでのシリーズ作品とは一線を画す物語である。

　コマンチ族の少女ナル（アンバー・ミッドサンダー）は間違いなくシリーズ最強の戦士のひとりだと断言できるが、対するプレデターが最強だったとは言いにくい。さらに、このプレデターが何を考え、何を感じているのか全く描かれず、キャラとしての魅力を感じないのも惜しいと思った。1や2のように、好敵手（人間）の善戦を素直に称賛するプレデターはやはり、狩猟（戦闘）民族としての誇り高さがうかがえる。

■過去日記
『 ザ・プレデター 』
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1968538813&owner_id=6007866
『プレデターズ』
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1561478664&owner_id=6007866



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