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2023年12月25日13:48

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12月21日 実験落語neoシブヤ炎上FOREVER


 久しぶりに歩く夜の渋谷は平日なのにお祭り騒ぎ。街を行くキラキラまぶしい若者たち、忘年会へ向かう勤め人グループ、スクランブル交差点の真ん中で自撮りして通行人の流れを止める外国人観光客、このところ以前に増して目にすることが多くなった車いす利用者(これは当たり前に良いこと)等々でごった返している。
 
 そんな人の流れをなんとかすり抜けて道玄坂を上がり、昔懐かしい旧ミドリヤビルへ。ここの6Fにある劇場(シブゲキ)でかつて「実験落語neo」が不定期で催されていたのは知っていたが、来るのは今回が初めて。そしてこの4年ぶりの「実験落語neo」、今回の円丈追善興行が最後の公演となっている。
 会場ロビーには味のある消しゴムはんこによる過去の出演者の顔が並べられていたが、権太楼、さん喬はともかく、松鯉まで出ていたとは知らなかった。松之丞、鯉八、昇々、吉笑らも顔を連ねており、こうした面々がプーク常連と繋がるのが、この会の面白さだったんだろうね。舞台上ではかつて円丈門下だったフリー落語家?・はらしょうがウエルカム落語の真っ最中。としまえんの青いタオルを客席に向かって強く振りながら「アウフグース」していた。

●わん丈「喪服キャバクラ」
 昇進を現師匠・天どんから伝えられた時も大きく気持ちは動かなかったが、師匠のおかみさんに電話で報告した際、「あなた、落語がんばっていましたものね」と労わられ大泣きして言葉も出なかったというわん丈。新作派らしからぬ如才のなさに鼻白む向きもあろうとは思うが、この人なりの方法で生き抜いていくのだろうと思う。ある意味新作派の孤高ではある。落語の方は「通夜への参列」というコンセプトキャバクラがあったら・・・のお話。喪服のキャバ嬢が「亡くなった父とはどういう御関係で?」と訊ねてくるというめんどくさいコンキャバの「もしも」ネタだが、こういう店、普通にありそうじゃないですか? 

●百栄「つっこみ根問」「露出さん」
 二つ目になりたての頃なぜか席亭にハマり、寄席で使ってもらっていたが、そのうち声がかからなくなり、悩みながらも出口が見つからない日々・・・。そんな時、円丈とふたり、浅草から帰る人気のない銀座線の車内で「栄助くん、新作落語をやらないか」とオルグ・・・もとい誘われたのが、ぶっ飛んだ設定から始まるツカミと、オチに重きを置かず物語性も希薄なのに、落語という枠組から逸脱しない百栄の創作の始まりだったとは、いまさらながら円丈の慧眼恐れ入る。(百栄なりに)渾身の「露出さん」に胸熱。

●喬太郎「柚子」
 〇〇ハラスメントやコンプライアンス云々への過剰な忖度が世の中をつまらなくしているのでは・・・というマクラからちょっと不思議な親子の物語へ。この噺を聞くと大島弓子の「七月七日に」(これはお母さんが男だったというお話)を思い出す。ちんちん、たまたまをおでん種にみたてて「ごぼてんが」「タマゴが」と子供に話すやさしいのか無神経なのかわからないおばちゃん。喬太郎はこういうキャラクターが好きだね。

<中入り>
 
●ふう丈「タイムパッカー」
 ロビーの似顔絵がいつも通りのキューピー頭だったので、登場してスキンヘッドだったのに驚いた。何かあったのか? 円丈は生前、門下の若い弟子たちも「実験落語」の高座に上がらせてやりたいと云っていたそうで、今回の最終公演はそのふう丈、わん丈にしたら感慨もひとしおだろう。落語は学生時代のバイト経験をもとにしたもの。その当時は人生の岐路みたいに思えて真剣に悩んだ選択も、過ぎてから考えれば悩むだけ無駄だった・・・って人生振り返ればあるある。

 ●彦いち「私と僕」
 末廣亭下席夜の部の主任を終えての参戦で、彦いちがあがって時点で21時半過ぎだったので、終電が気になってしまった。過去の、若くてちょっとイキった自分の話を、人生をちょっといろいろ諦めた現在の自分が聞くという入れ子構造の噺。現在の下北沢から過去の下北沢へ迷い込んでいくときに出てくるお店が、京王線沿線住民だった自分にも懐かしいお店で和む。

 最後「実験落語neo」過去公演の映像をニック・ロウの「Cruel to be kind」が流れる中、ハイライトで上映。こうして振り返ると円丈という人はむっちゃアバンギャルドで、その方法論はほぼ現代美術家のハプニングパフォーマンスに近い。噺にも万人に訴えかける作品あり、一体何を聞かされているのかと苦痛を感じる作品あり、良くも悪くも極北の人。現在活躍している創作落語家の中で、その過激さで円丈を超える人はいないだろう。いや、特に超えるべき壁でもないのだが。だが年齢を考えれば、もう少し活動して欲しかった。晩年認知症ではなく、脳の血腫を取り除けば物忘れも改善すると云われていたそうだが、コロナ禍などマイナスファクターが重なったのも良くなかったのだろうか。
 過去映像の中に「グリコ少年」に合わせて、円丈がはらしょうとふたりで客席にグリコキャラメルを投げる場面があったが、そう言えば「月のじゃがりこ」ネタ出しの会に行った時、カルビーじゃがりこもらったことを思い出した。中島らもの芝居で飛んできたカネテツちくわ受け止めたことはあっても、落語会でタイアップ商品もらった経験は無かったなあ。
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