mixiユーザー(id:24575266)

2023年12月15日09:30

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終着駅


そこは、時の止まった部屋。
永遠の夕方4時。

ベッドの枕元には、タキシードサム。
白い壁に、わたせせいぞうのカレンダー。
緑色のアイスフロートに赤いチェリーが眩しい。
その横には、華厳の滝の入った「日光」の、褪色した様なぺナント。
窓際のデスクには、誰かから貰って居処無しと思われる、箱根通行手形。

正方形に近い面を持つ、奥行きあるブラウン管の銀テレビ。
直線基調で、画面前には脱着式のフラットなガラスカバーが付いている。
1チャンネルにつき1個ずつ、四角い数字ボタンが、モダンに並んでいる。
何も映さず、静かに埃を呼び寄せている。

カセット棚からTDKのやつを1本取り出し、
真っ赤なSANYOおしゃれなテレコに差し込む。
四角い再生ボタンをガシャッと押して、
ベッドに横たわる。















窓からはレースのカーテン越しに、永遠の夕方4時の光が怠く滲む。
このまま、ずっと横たわっていたくなる。
もしかするとこの部屋は、木星のはてなのか。
気付けば、この部屋にはドアが無い。

わけも無く、
自分のガラス玉みたいな黒目が、水漏れを起こし始める。

その黒い水は次第に溢れて行き、
白基調だった部屋を闇にした。




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