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2023年12月12日14:35

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「働けないんじゃない!働かないんだ!」職場のおじさん、どうする問題

「働けないんじゃない!働かないんだ!」職場のおじさん、どうする問題
相模女子大学大学院特任教授・白河桃子×法政大学教授・田中研之輔対談(上)
ダイヤモンド編集部

宝金奏恵
キャリア・スキル
News&Analysis
2021.3.3 4:35
「働かないおじさんが御社をダメにする」けれど会社側にも責任がある
「働かないおじさんが御社をダメにする」けれど会社側にも責任がある Photo:PIXTA
コロナ禍によって多くの人が働き方に大きな変革を求められている。リモートワークの導入、デジタルトランスフォーメーション、ジョブ型雇用、男女平等…。昭和的な働き方から脱却しなければならないことは明らかだが、時代の変化に取り残されている「おじさん」たちが多い。企業の大部分を占める45歳以上のミドルシニア層はこれからどうしていけばいいのだろうか。『働かないおじさんが御社をダメにする ミドル人材活躍のための処方箋』(PHP新書)を出版したジャーナリストの白河桃子氏と、法政大学でキャリア論を研究し、企業研修などでも多くの企業を見てきた田中研之輔教授の対談を2回に分けてお届けする。(構成/ダイヤモンド編集部 宝金奏恵)

*2021年2月17日に行った音声アプリ「クラブハウス」での対談を取材したものです(事前承諾を得ています)

働けないんじゃない!
働かないように会社に育てられた
白河桃子(以下、白河) コロナ禍で日本の企業・働き方にパラダイムシフトが起きました。そして、「テレワークでは45歳以上のミドルシニア層や変化できない管理職だとかは活躍できない」などという記事が山のように出ました。また、至るところで始まっているリストラのターゲットは45歳以上のミドルシニア層の社員、つまりここでいう「働かないおじさん」たちです。でも、「働かないおじさん」になったのは、会社に都合が良い上意下達で動く人材にした、そういうキャリアを強いてきた企業の責任や社会の構造でもあります。リストラする前にやることがあるんじゃないの? そんな課題があって『働かないおじさんが御社をダメにする ミドル人材活躍のための処方箋』を書きました。女性が「意識が低い」と言われるたびに「それは構造の問題」と言ってきましたが、「おじさん」をおじさんにした構造もあるのです。

 成功事例を書いた本は多く出ていますが、属人的になりえます。だから、キャリアを考える人の羅針盤的な本である『プロティアン―70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』(2019年,日経BP)を書かれた田中先生と話をしたかったんです。

働かないおじさんが御社をダメにする ミドル人材活躍のための処方箋
『働かないおじさんが御社をダメにする ミドル人材活躍のための処方箋』
(白河桃子著、PHP新書)
田中研之輔(以下、田中) 著書を読ませていただきました。「働かない」って良い言葉ですね。決して「働けない」わけではない。「働かない」という言葉には意志がある。希望を持って入社したけれど、年功序列の日本的な組織の中である種のトレーニングを受け、多様性やアイデンティティーを出すことは昇進のブレーキになるという枠組みに生きてきた。だから「働かない」んですよね。

白河 「働かないおじさん」というのは「変化を拒む人」という意味の比喩です。別に年齢や性別じゃなくて、私の中にもそういう部分はあるし、20歳でも30歳でも「おじさん」になりかけている人はいるでしょう。ただ企業の正社員では、45歳以上の女性は極端に少ないのが実情で、多くの企業では40代以上の男性の人数が膨らんでいる社員構成になっています。そこが「粘土層」のような塊になって組織全体の変化を鈍らせます。

 だから働く人の問題を語るとなると、どうしても男性中心になってしまうんですよね。

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家族を人質に取られた「働かないおじさん」

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家族を人質に取られた「働かないおじさん」
「働けないんじゃない!働かないんだ!」職場のおじさん、どうする問題
田中研之輔(たなか・けんのすけ)
法政大学 教授/一般社団法人プロティアン・キャリア協会 代表理事/UC. Berkeley元客員研究員 University of Melbourne元客員研究員 日本学術振興会特別研究員SPD 東京大学/博士:社会学。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。専門はキャリア論、組織論。社外取締役・社外顧問を24社歴任。著書25冊。『辞める研修 辞めない研修ー新人育成の組織エスノグラフィー』『先生は教えてくれない就活のトリセツ』『ルポ不法移民』『丼家の経営』『都市に刻む軌跡』『走らないトヨタ』、訳書に『ボディ&ソウル』『ストリートのコード』など。ソフトバンクアカデミア外部一期生。専門社会調査士。新刊『プロティアン―70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術』。最新刊に『ビジトレー今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』。日経ビジネス、日経STYLE他メディア多数連載。
田中 僕は今、企業のキャリア開発研修をやらせていただいています。企業の人事担当者は、中年男性社員向けの研修で「彼らの凝り固まった考えを何とかしてください」って言う。でも、実際キャリア相談に乗ってみると、「働かないおじさん」たちも自分の意見を持っていたりするんです。なのに、彼らのリアルな声や思いが会社や社会に届いていないっていうのも問題だと思います。SNSなんかを使うことも抑制されていたり、苦手な方が多いのではないかと。

 日頃から新しい情報にアクセスするとかアンテナを立てている人っていうのは、自らキャリアのアップデートを続けます。一方、自分自身を活性化できずに悶々としている人は、組織に依存して自分のキャリアを企業に預けて逃げ切ろうとするんだけど、コロナ禍によって逃げ切れないっていうことが分かったわけです。

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白河 でも組織にキャリアを預けてきたのは、その人たちのせいじゃないんですよ。新卒で専門性を持たずに入社して、会社の指示通りに働いてきた。会社も都合の良い人材として、明日から転勤してくださいとか言ってきた。しかも、今の男性ミドルシニア層の妻は、女性が働き続けるすべがほとんどなかった時代なので、一家の大黒柱が夫1人だけ。家族全員が人質なんです。

 だから長時間労働は当たり前、むちゃブリな転勤やパワハラに遭おうが会社を辞められない風潮で、会社も社員のキャリア選択の自由なんて許してあげなかった。これが、日本企業のメンバーシップ型雇用だと思っています。今頃になって、企業は社員が主体的に自らのキャリアを開発していく「キャリア自律」を唱え始めていますが、さすがに今まで社員を放置し過ぎました。

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今こそ、立ち上がれ!ミドルシニア

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今こそ、立ち上がれ!ミドルシニア
田中 本当にそうですよね。これまで、変革や変化は基本的に若者主体である場合が多く、年をとるごとに保守的になるっていう話があります。だけど今立ち上がるべきなのは、「おじさん」なんじゃないかと思いますね。「今こそ立ち上がれ、ミドルの民たちよ」と伝えたい。

白河 転職だけではなくて、まだまだ会社の中でも活躍できるところはあると思っています。そのためには、これまでのキャリア経験や思考で作り上げられた「重たいよろい」を一度脱がなきゃいけない。それが大変なんですよね。

田中 白河さんはどうすればよいと思いますか?

白河桃子
白河桃子(しらかわ・とうこ)
相模女子大学大学院特任教授、昭和女子大学客員教授、ジャーナリスト、作家。慶應義塾大学文学部社会学専攻卒。中央大学ビジネススクール戦略経営研究科専門職学位課程修了。 住友商事、外資系金融などを経て著述業に。ダイバーシティ、働き方改革、ジェンダー、女性活躍、ライフキャリアなどをテーマに著作、講演活動を行う一方、「働き方改革実現会議」「男女共同参画会議 重点方針専門調査会」「テレワーク普及展開方策検討会」など多数の政府の委員を歴任。近著に『ハラスメントの境界線』(中公新書ラクレ)など。
白河 5つの提案をしていて、「おじさんよ、われに返れ」というのがあります。個人である自分と家庭にもう一度向き合うこと。それが難しいのですが、成功事例があります。サイゼリヤの人事とNLPインスティテュートのCEO(最高経営責任者)である堀口紫さんが共同設計した「コミュニケーション研修」を取材したことがあるのですが、ミドルへの「おじさん化防止研修」でもありました。3日間さまざまな手法で「自らを振り返り伝える」ことをします。最初は3分しか話せなかった人が、3日間やると自分のことを20分でも足りないぐらい長く話せるようになるんです。

 自分の人生を根本から振り返るような体験をして、「家族にありがとうを言った」とか「実家に突然行こうとして驚かれた」など、家族との接し方がかなり変わったという感想が多く、感動的でした。自らに向き合うことが生き方考え方を変えるきっかけになるのだと思います。田中先生の著書『プロティアン」を読んで「これだ!」と思ったのは、仕事だけでなくしっかりとプライベートも入っているところです。

田中 僕は、「働かないおじさん」に現状維持の思考がこびりついているのなら、日常の過ごし方を見直すべきだと思います。新しいことをインプットしたり、何かやってやるぞという意気込みを持ったりすることが必要です。例えば今までは聞くだけだった会議で自分が提案側に回るとか、クラブハウスでルームを作るとか、何でもいいと思うんですよね。

 多くの「おじさん」は、自ら発信することをやってはいけないと言われ続け、自分らしくあることを抑えてきた。言い換えるなら、組織のためにアイデンティティーを殺してきた。だから、アイデンティティーを再生させるには、主体的にキャリア形成していくことをあらためて認識することです。

 SNSでのアウトプットもおすすめです。大企業は実名発信を禁止していたりする場合も多いから、仮名でもいいと思う。経験で凝り固まった「よろい」は言語化によって相対化・客観化しなければ、「成仏」できません。常に、問題意識をもち、自らの解決策を導き出すように心がける。組織にしがみつくのをやめて、明るい未来を目指すために、今を人生の助走期間にした方がいいですね。

>>(下)に続く

>>対談後編『働かないおじさん」の給料高すぎ問題は、若手からはどう見えているのか?』を読む

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