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2023年10月26日13:22

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「知の探索」と「変化の常態化」が 企業を変える


セブン銀行は「お客さまの『あったらいいな』を超えて、日常の未来を生みだし続ける。」をパーパスに掲げ、革新的なサービスを次々と打ち出してきた。そんな同社の最前線の取り組みに迫る本企画。第1回は、イノベーティブな企業であるための組織のあり方や経営者の役割について、同社代表取締役社長の松橋正明氏と早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏が語り合った。
「知の探索」を愚直に実践
新サービス誕生のきっかけに
松橋入山先生に初めてお会いしたのは、2016年のことです。世の中の変化の速度に我々の仕事のやり方が追いつかず、成長にも行き詰まりを感じている頃でした。そんな時に入山先生に教えていただいたのが「知の探索」です。

入山よく覚えています。お声がけいただきとても光栄でした。そもそも知の探索は、経営学でイノベーションを起こす基本原理としてよく知られる概念です。イノベーションは、既存知と別の既存知の組み合わせから生まれますが、人の認知には限界があるため、自然に任せていると、新しい知を得ることは難しいものです。なるべく自分から遠く離れた場所にある知を幅広く知り、組み合わせる知の探索が重要というお話をさせていただきました。

松橋当社に必要な考え方だと非常に感銘を受けたものです。そして知の探索の実践として入山先生は、「1週間に3人、まだ会ったことのない人に会う」を推奨されました。私はそれを愚直に実行し、スタートアップをはじめ、多種多様な企業の方とコンタクトをとるようになりました。当初は、なかなか成果になりませんでしたが、継続するうちにネットワークが広がり、今では随所で連携が生まれています。例えば、新型ATM(第4世代ATM)は、顔認証カメラとICリーダー、スキャナーによる「認証機能」が特徴です。こうしたサービスが生まれたのも、新しい知識やテクノロジーを持つスタートアップなどとの連携によるところが大きいです。

入山まさに知の探索がイノベーションにつながる好事例だと思います。

松橋2022年に社長に就任してからは、会社や組織をさらにアップデートするため、知の探索を制度化しました。業務の10%を本来の仕事以外の研究などに充てることを推奨しています。また、新しい学びを得るためのワークショップやセミナーを開催したり、興味のある社内プロジェクトに参加してみるなど、イノベーションにつながりそうな取り組みを組織的に始めました。

入山私が最近、講演でよく触れるキーワードに「経路依存性」があります。これは、制度や仕組みが過去の歴史や経緯などに縛られ、固定化されてしまう現象を示す言葉です。イノベーションを起こす組織であるためには、この経路依存性からの脱却が欠かせません。その点セブン銀行は、伸び盛りの企業ですし、多彩な人材がいます。知の探索を制度化するなど、新たなことに挑戦しやすい柔軟な環境も大きな強みです。今後の成果が楽しみですね。

イノベーションのためには
「変化の常態化」が必要
松橋社員とのコミュニケーションも重視していて、社長就任以降、平均6〜7人から成るミーティングを定期的に実施し、社員のほぼ全員と対話する機会を持ちました。

入山それはいいですね。知の探索をしたら内省し、誰かと対話することが極めて重要です。対話をする、つまり言語化することで、自分が考えていることを真に理解し、納得できるのです。私は仕事柄、経営者と話す機会が多いのですが、成功を収めているトップは、自身のビジョンを言語化し、それを人に伝えることが得意だと感じます。

入山 章栄
松橋自分自身のマインドセットのためにもいい効果がありましたし、社員から想像を超えるアイデアが出てくることもありました。対話の重要性を改めて感じたところで、今後も続けていきたいと思います。

入山知の探索による成果を実感するまでに、どのくらいかかりましたか?

松橋4〜5年はかかりましたね。1〜2年は助走期間でした。

入山皆同じでしょう。知の探索は、すぐに成果が出るものではありません。失敗は多いですし、無駄に思えることもあります。ただし、その時期にトップがやめないで続けられるかどうかが、ほとんど全てだと思います。

松橋私は日頃から、宣言し、行動し、やり抜くことを意識しています。続けていると、自ずと周囲も同調してくれるようになります。変化のある状態が当たり前という企業文化が生まれているのかもしれません。

入山イノベーションには、変化を常態化させることが重要です。人間の行動に占める習慣の割合は意外と大きいもの。この習慣を変えることが変化を生み出すきっかけになります。そして企業文化とは醸成されるものではなく、意図的に作るものであり、いわば企業戦略であるというのが私の考えです。セブン銀行のように、変化の常態化を企業文化にするには、トップが率先して行動することが重要です。松橋さんのように、知の探索のような取り組みをトップが信じて、楽しんでいることが大きな意味を持つのです。

松橋それはセブン銀行という場所で、常に常識を疑いながら、新しいものを生みだし、それが自己成長や社会課題解決につながっているというポジティブな感覚を持っているからでしょう。これからも当社のパーパスの実現に向けて実践していきたいと思います。

松橋 正明
入山今後の具体的なサービスでは、どのようなことをお考えですか。

松橋9月に新型ATM(第4世代ATM)の機能を活用した口座開設や諸届変更が行える「ATM窓口」と、画面上でメッセージや質問を表示する「ATMお知らせ」という2つのサービスをスタートしたところです。さらにATMによる行政のデジタル化も視野に、将来的には「セブン銀行に行けば、金融サービスから行政手続き全般までワンストップで可能」というのが目標です。もちろん、これらを当社単体でやるのは不可能であり、知の探索を通じた他社との連携もより強化し、イノベーションを実現していきたいと思います。
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