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2023年10月23日15:33

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コラム:グローバル化の反転、新たな勝ち組と負け組が誕生


Francesco Guerrera
2023年10月21日午前 8:01 GMT+92日前更新


オピニオン
Francesco Guerrera
コラム:グローバル化の反転、新たな勝ち組と負け組が誕生


[ロンドン 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 制約のないグローバル化時代の終焉は、世界経済にとっては差し引きでマイナスとなる。景気の悪化、世界的なパンデミック、戦争の勃発が国際的な商取引に打撃を与えた。地政学的な緊迫により新たな関税と国家主義的な産業政策が生み出された。総合的に見ると、脱グローバル化のプロセスは経済の効率性を低下させるだろう。それでも一部の国や、コモディティー分野と製造業の労働者は恩恵を享受しそうだ。

グローバル化は驚異的な結果をもたらしてきた。世界貿易機関(WTO)によると、過去70年間で世界の貿易量は45倍に拡大、世界経済の規模は14倍に膨らんだ。これは発展途上国に恩恵をもたらし、世界の生産における発展途上国のシェアは1980年代の24%から2020年には43%強に上昇した。

一方で先進国は低コスト、より安価な消費財、極めて低いインフレの時代を謳歌した。しかしこの15年間は、このプロセスが停止している。世界の総生産に対する貿易の比率は2008年に61%で頭打ちとなった。オランダ経済政策分析局によると、世界の貿易量は今年7月に前年同月比で約3年ぶりの大幅な減少を記録した。


貿易が減少基調に転じ始めたのは2008年の世界金融危機後の景気後退局面だが、他の要因により新たな障壁も築かれつつある。最初に挙げられるのは米中間の地政学的緊張の高まりだ。米中間の協調はほころびつつある。バイデン米大統領が6月に中国の習近平国家主席を「独裁者」と呼び、中国が新たな反米同盟の形成に注力している現状では、企業やファンドマネジャーが米中貿易について考え直しているのも無理もない。

2018年に始まった米中間の関税戦争により、問題は複雑化した。楽観主義者は、輸入関税の応酬にもかかわらず、米中間の貿易額が昨年に過去最高の6910億ドルに達したと指摘している。だがこの貿易額はインフレにより押し上げられた数字であり、貿易の中身が大きく変わったことを覆い隠している。キャロライン・フロインド氏らエコノミスト4人の共著による最近の論文によると、米国の輸入全体に占める中国からの輸入の比率は2017年の21.6%から22年には16.5%に下がり、現在は07年の水準に戻っている。


外国のサプライヤーに過度に依存することへ不安から、新たな国家主義的な産業政策も広がりつつある。昨年成立したインフレ抑制法とCHIPS・科学法により、米国は技術投資の誘致、グリーン経済への移行、衰退した製造業拠点のてこ入れを目的とした助成金の世界的競争で先陣を切っている。

一方で中国は電気自動車(EV)の生産を強化するために助成金を使い、EV大手の比亜迪(BYD)(002594.SZ), (1211.HK)や車載電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)(300750.SZ)といった企業を支援している。この動きに欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は強く反応し、先月に中国の商慣行について調査すると発表した。

欧州中央銀行(ECB)の調査によると、グローバル化がほぼ全面的に反転すれば、世界の輸入は30%も落ち込む可能性がある。これは非現実的なシナリオだ。輸入の減少は多分、緩やかに起こるだろう。昨年時点で世界の貿易は依然、世界の生産の57%を占めている。ただ、既に新たな勝者は生まれている。


国別の動きを見てみよう。米国の輸入に占める中国の比率が低下するのに伴い、他の国がサプライチェーンに参入した。ハーバード・ビジネススクールのローラ・アルファーロ教授らの調査によると、米国の輸入に占めるベトナムのシェアは2017年から22年にかけて2倍に上昇して4%となった。地理的もしくは政治的に近い国からの製品輸入を増やすという米国の強い方針により、台湾とメキシコも恩恵を受けた。ベトナムは電子製品、アパレル、繊維といった分野で米国の輸入に占めるシェアが拡大し、メキシコは自動車部品、ガラス、鉄鋼などが伸びた。


確かに、こうした分散化は見た目ほど急激には進んでいないかもしれない。これらの新たな製造拠点は依然として中国製品に大きく依存しているためだ。例えばベトナムは昨年、財の輸入に占める中国の比率が40%となり、1994年の9%から上昇した。同じ期間にメキシコの輸入に占める中国の比率は1%から20%に上がった。

こうした世界的なサプライチェーンの再形成により、エネルギー、金属、素材の価格は上昇する可能性がある。グローバル・データ・TS・ロンバードのダリオ・パーキンス氏によると、企業や国家がサプライヤーの選定で価格よりも地理的、政治的な近さを優先するのに伴い、メキシコ、チリ、ブラジルといった中南米のコモディティー生産国が恩恵を受けるかもしれない。同氏は、脱グローバル化が、気候変動に対処するためのクリーンエネルギーへの投資と相まって、多数のコモディティーの価格が長期的に上昇する新「スーパーサイクル」を誘発すると予想している。

こうした状況で優位に立つ企業とその従業員も、産業政策から恩恵を受けている。米国の半導体工場の数は2012年から17年にかけて年平均で0.5%の増加にとどまっていた。米労働省統計局によると、その間の同産業の就業者数は0.4%減少した。その後の5年間では、半導体などの工場数は2.9%増加、就業者数は1.9%増えた。

ところが全体を見渡すと、世界経済がより分断化されれば、多数の企業や消費者の状況はそうでない場合より悪くなるだろう。グローバル化が後退すれば、世界的企業の株主や債権者が損失を被るかもしれない。パーキンス氏によると、米国の貿易額の40%は多国籍企業とその海外子会社の間の貿易だ。購入する商品の価格が値上がりすれば、消費者も苦痛を感じるだろう。

世界経済は地政学的緊張や貿易障壁といった向かい風に立ち向かい、国家と企業、消費者の行く手は険しい。だが、全員の暮らし向きが悪くなるわけではない。

●背景となるニュース

*世界貿易機関(WTO)は5日、今年の世界の財貿易量について、前年比0.8%増にとどまるとの見通しを示し、4月時点の予想(1.7%増)から下方修正した。理由として、根強いインフレ、金利上昇、中国不動産市場の厳しい状況、ウクライナ戦争が影を落としていると説明した。

*WTOは、世界の財貿易量は2024年には3.3%増に回復するとし、4月予想の3.2%増とほぼ同程度の伸びを見込んだ。



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筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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