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2023年10月22日20:52

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東京国際映画祭

 今日は午前中、贔屓にしている理髪店に散髪に行きました。
 店にはラジオ放送が流れているので、散髪されながらそれとなく聴いていると、どうやら明日から東京国際映画祭が始まるようです。
 そこで、帰宅後、今年の上映作品を調べてみると、結構興味深い作品が並んでいました→https://2023.tiff-jp.net/ja/lineup/list.html
 東京国際映画祭には以前はよく行っていたので、ちょっと懐かしくなり、ついでに、昔、同映画祭で自分が観た作品の記録とか、その時のチケットとかを引っ張り出して久しぶりに眺めていたのですが、ある事実を発見して少々驚きました。
 第2回東京国際映画祭(1987)の「ハリウッド100年 回顧上映」という企画において、ジョン・フォード監督の『駅馬車』とセシル・B・デミル監督の『十誡』とが二本立てで同じ日(9月20日(日))に同じ映画館(スバル座)で上映されていたのです。
 なぜ、私が驚いたかというと、フォードとデミルとの間には、次のようなちょっとした因縁があったからです。
 1950年代のアメリカ合衆国では、反共産主義に基づく社会運動、政治的運動(いわゆるマッカーシー旋風)が社会のいたる所で吹き荒れ、「共産主義者である」との批判を受けたアメリカ合衆国連邦政府職員、マスメディアやアメリカ映画の関係者などが攻撃されたのですが、ハリウッドもその例外ではありませんでした。
 デミルはウォルト・ディズニーや当時俳優だったロナルド・レーガンらと共に、その尻馬に乗るような形で、事実上、自分の気に入らない人々を次々と共産主義者と決めつけて告発していました。これに対して、フォードが反対したという逸話が遺っているのです。     
 一説には、ある人(X)を告発しようとしてデミルらが開いた会議で、フォードはデミルに対して「私はあんたの映画は好きだが、今のあんたは大嫌いだ!」と言ったと伝えられています。フォードのこの発言で、Xらの告発は見送られました。
 でも、これはいささかフォードを美化したものであったらしく、当時、フォードはマッカーシー旋風からは局外に身を置いていたようです。フォードの発言で、Xらの告発が見送られたのは事実のようですが、ただ、現実には次のような展開だったようです。
 その会議では、ほとんどデミルらの狙いどおりに告発の方向で議事が進行していたらしいのですが、そこでフォードが発言を求めて、大要、次のようなことをぼそぼそと発言しました。
 「どうも、ジョン・フォードといいます。…西部劇の映画なんかを撮ってます。先ほどから聴いていますと…どうやらXたちが、告発されるらしいんですが…Xたちはそんなに悪いことをしたんでしょうか? まぁ、いいことはしなかったのかもしれませんが…告発するほど悪いこともしてないんじゃないですかねぇ。第一、こんなことで告発されてた日にゃ、私たちは安心して暮らせなくなるような気もするんですがねぇ。本当に皆さんそれでいいんですか?」
 マッカーシー旋風による赤狩りの時代というのは、一種の熱に浮かされてたような時代ですから、フォードのこの発言に出席者は、ハッと我に返り、これは下手をすると明日は我が身ということになりかねないと気づき、会議の方向性が一変したということです。
 まぁ、いずれにせよ、フォードはデミルにとって邪魔な存在となったはずなのですが、そのふたりの作品を二本立てで上映するとは何か皮肉なものを感じざるを得ませんでした。
 もっとも、私自身、この事実は上映時よりも後になって知ったものと思われます。上映時には何も皮肉なものは感じず無邪気に観てましたから。
 今回の東京国際映画祭でも何か観ておいてそれを記録したりしておいたら、後年になって思いがけないことに気づくことになるかもしれません。
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