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2023年04月07日11:52

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4月5日 深川江戸資料館ホール「擬古典落語の夕べ 吉笑スペシャル」

 仕事で一日自由が丘からの清澄白河19時開演に滑り込み。結構入っている、というかほぼ満席か。マゴデシ寄席のノリでほどほどを予想していたが、吉笑メインで見たいというコアなファンが多いのか、吉笑の新作を三三が演じるのを見たいのか、NHKの大賞効果なのか。まあ三つ併せての集客なのでしょうね。
 着席してすぐに吉笑が登場。開口一番がない(めくりはなかったが、高座返しの前座はいた)ことと本日の次第、開演を前にして緊張感半端ない楽屋の様子などを説明。
 この「擬古典落語の夕べ」は一年ぶり。去年はナツノカモ作の会だったのだが、古典落語に擬した新作落語という概念は特に新しいものではないよね・・・とその時の感想文にも書いた記憶。ただこの日のトークを聞いて、吉笑がなぜ「擬古典落語」にほぼ特化して新作を作り続けている理由を初めて知った。

  〇落語家になろう。
  →もともと芸人だったので、台本は書いていた。すぐに創作を演じたいが、前座の期         間は古典落語の前座噺をやるのが前提。
  →そもそも古典落語とは何をして古典とされるのか考える。
  →古典に擬した落語を自分で作り、米朝の如く「過去作を掘り起こした」、もしくは「祖父の蔵から資料が見つかった(「ヒカルの碁」?)」と言い張れば、創作が出来る。

 実際談笑に入門してみたら、師匠はまったく前座の通例に拘らない人で、前座の内からガンガン新作OK、前座期間も異例の短期で終わってしまい現在に至る・・・という、もう既に著作や過去インタビューなどでは語りつくされていることなのだろうが、自分は初めて知ったので、そんな段階踏んで後のいまなのか!と驚いた。そして吉笑もまた入口は志の輔なんだね。志の輔がいまどきの若手落語家、特に落研系じゃない転身組に与える影響は大きいようだ。

●九ノ一「ぞおん」
 九雀一門。初めて見る。作者が袖に控えている状況で演じるというシチュエーションでテンションマックスなのか声も大きい。でも、本来この噺ってこう演じるべき噺だよね。ゾーンについて一生懸命解説する定吉のデキる感醸し出す感じ可笑しいが、これは噺への理解を進める為にも必要な部分なんだな!といまさらながら気づく。事前に二度ほど演じていたそうで、一回目はダダすべりだったそうだが、二回目からは結構うけていたのかな。裏拍で入るところとかスンナリ聞けた。

●三三「粗々茶」
 本日の白眉。吉笑自身が「前座時代に作った噺で、最近あまり演じていない。他の三作品は自作の中では代表的なものだと思っているが、果たしてこの噺を三三師匠がどう演じるのか・・・」と云っていたが、これにはさすがに作者も驚いたことでしょう。自分も以前に吉笑本人で聞いたことがあるが、正直言葉遊びで狙いすぎて外れまくっているような噺、という印象しかない。そして聞いた当時はさほど長い噺とは思わなかったのだが、今回の三三版、ずいぶんな長講になっていた(笑)。
 この噺を楽しむためには、まず謙遜の美徳である「粗」を、更に上を行く「祖々」にするというシステムへの確実な理解と説明が必要である。そしてこの、観客への理解を促すための説明役目を担う、周囲から物の見方が独特過ぎて疎んじられているご隠居が、正に三三が日ごろから得意とするキャラクターなのだった。こういうキャラが出てきたら、三三はもはや止まらない。それは傍目には覚えたての新作落語を吐き出すための過剰な暴走にも見えるが、いや、こういうヘンな人を演じるのが好きなんだよねぇ多分。
 となると後半の八五郎のオウム返しの部分は、なんとかオチをつけるための付録であって、この噺の醍醐味は、ご隠居の変態っぷりを楽しむところにあると改めて思うのだった。演じるについては事前に三三から吉笑へ何度か確認メールがあったそうで、さすがというか、なんというか準備を怠らない。三三は自分で作らずとも、最良の演じ手として今後も新作落語と関わり続けるべきだろう。

<中入り>

●昇「ぷるぷる」
 正直これでNHKを取った時、こんな一発芸みたいな噺で・・・と少しがっかりした。ところが今回は、見た目も芸風も愛嬌たっぷりな昇にこれがぴったりマッチ。吉笑がやるより切実な一生懸命さ(覚えたてなんだからそうならざるを得ないが)が響いて、よかったのではないか。最後は棟梁がぷるぷるで「大工調べ」のタンカを切るサービス(途中息継ぎあり)。本日ネタおろしでよくがんばりました。

●雀太「一人相撲」
 雀三郎と昇太の二人会で聞いていたはずだが・・・残念ながらあまり記憶がない。吉笑にとってこの噺を雀太に演じてもらうことは念願だったそうで、確かに上方落語の擬古典として演じるなら、こういう風になるだろう。上手いんだけど面白いんだけど、小佐田定雄作ですと云われたら「さよか」と受け入れてしまいそうな落ち着き方というか。これは吉笑本人が演じた方が。足りない感じがハマる噺なんだろうか。

●吉笑「きき」(ぷるぷるリミックス)
 久しぶりに演じる噺とのこと。かつて腹話術が流行した時代があった・・・という前フリから、上方に来て腹話術で成功しようとする男が一座の前で芸を披露。唯一問題だったのは、男が使っていたのは人形ではなく、自分の右手だったということ。「名前はききです」「なんでききなん?」「右利きだからです!」っておいおい。

 吉笑は今後の一連の活動を「真打計画」として、銀座博品館劇場での連続独演会など昇進へのステップと位置付けているようだが、オープニングトークで早速出たのが落語協会来春真打昇進の話題。「あのお二人(つる子、わん丈)に(NHKで)勝った私は、落語協会なら既に真打ということで」う〜ん、でも自分は優勝はわん丈かなと思っていたし、もし権太楼がいたらどうなっただろうか?まあ変わらないか。権太楼は自分のとこの若手には厳しいものね。協会久々の抜擢真打、よくも悪くもいろいろ話題にはなるんだろう。こちらは見る側なので、面白そうなら足を運ぶ、そうでなければ行かなければ良い。



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