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2023年03月05日09:31

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愛のアルゴリズム

ケン・リュウ

短編集[紙の動物園]の中の一編。スタートアップ企業の天才設計者が人形を製品化した。約2000の英単語を話し、一般的な接尾辞と接頭語のための意味論的コード化と統語論的コードを備えている。平たく言えば、その人形は耳にした言葉のなかのキーワードに基づいた文章を意味もなく喋り、さらに事前に用意した言い回しを少量持っていて同じようなきっかけで口にできるようになっている、と。この人形は大ヒットし、女性設計者はモデルチェンジをすすめる。最初は子供の玩具だったが、市場は彼女と同じように幼くして子を失った母親の悲嘆を和らげる道具としての価値を見出す。彼女も流産を経て子供を産めない体になっていた。それゆえ次のモデルに心血を注ぎ、あたかも生まれたての新生児のような製品を開発するが、彼女は心のバランスを失って自死を選んでしまう。

近ごろ流行りのChatGPTを想起させる。本作では人形の会話ライブラリは女性設計者がスタンフォード大の意味論データベースと手を組みながらも独力で仕上げたとされていることに対し、ChatGPTはビッグデータの機械学習で、そこは違うもののアウトプットはそのうち似てくるだろう。失った愛するひととの会話をAIとの会話で模擬できるなら心の慰めになるだろうか。ヒトとしての物理的な温かみや重さ、外見を伴わなければそういうことにはならないだろうか。子供を失った親の悲しみには有用ではなかろうか、副作用はあるにしても。ChatGPTのこの先について、ケン・リュウ氏の見解を聞いてみたい。
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