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2022年12月31日13:32

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創作


仮面太郎は帰りのタクシーのシートに沈み、
車窓のおなじみの夜景が過ぎて行くのを眺める。
電池の切れた人型ロボの様に。

自宅。倒れ込む。
BGMがわりに23時台のニュースをつける。
何もする気が起きない。
時にはそのまま気を失う。

朝はこの世の終わりの様に目覚めるが、
鉄かも知れない心臓はオイル切れを起こさずに動き、
無気力の仮面太郎に歯を磨かせ、
シャワーを浴びさせ、髭を剃らせ、
服を着替えさせ、簡易な朝食を摂らせる。

無思考。
そのまま家を出て競歩の様に進撃、
電車へ突入すれば職場迄、運んでくれる。
時間ギリギリで間に合わせているので、
遅延等が生じると呼吸数が上がる。

職場到着。
すると職場太郎はペルソナを被り、〇〇さんになり、
「おはようございます!」

〇〇さんのノンストップな1日が始まる。

〇〇さんは職場では、
馬に跨り鬼の様に働く。
時折凍りついた現場には適切なタイミングで冗談を投げかけ、
周囲からも頼りにされる。
無意識は後退し、意識のフル稼働だ。

戦を終え、馬から降りた〇〇さんは、
無人の職場に「お疲れ様でした」と小声で呟き、
職場を出て元に戻った仮面太郎は、
無人の自宅に着くと、無言で倒れ込む。

仮面太郎は倒れながら自問自答する。
「ワーカホリック?違う」

職場には自己開示が大好きな者もおり、
雑談はほぼ私生活の事を嬉しそうに話していたりするが、
仮面太郎はその逆だった。
職場で私生活は一切明かさない。
詮索されようものなら適当に茶化して逃れる。
職場では自ら作り上げてきた〇〇さんを絶対に崩さない。

稀にあるオフの付き合いでも、〇〇さんを崩さない。

仮面太郎の本当の生活は楽屋裏そのもの。

仮面太郎が働く理由。
それはお金の為、食べて行く為。
そして・・・・・・
ありのままの仮面太郎以上に仕事も出来、コミュニケーション能力もあり、
TVドラマの脚本上の人物の様な〇〇さんを職場で作り上げ、
そのペルソナで仮面太郎の虚しく荒涼とした人生を補充する為。

天のビデオカメラがあれば、
きっとそんな自分の姿を映し出すのだろう、
と、気を失いながら仮面太郎は思った。

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