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2022年12月22日00:30
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ヒンドゥークシュ南北歴史考古学樷攷 I 桑山正進 臨川書店 2022年08月12日
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■“働く”とは何か、“仕事”とは何か、そして“平和”とは？ 映画『医師 中村哲の仕事・働くということ』を各地で上映
(OVO [オーヴォ] - 11月26日 08:20)
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p.382
(38) スィムスーウィリアムズ(Sims-Williams 1998, pp.229-230)曰く、「クシャーンが使った翖侯yaβγuは月氏語というより、元はむしろ中国語である。一方漢文資料にはクシャーンが5の月氏族のうちの一であるとするから、クシャーンという名は純正の月氏語である。同様にクシャーンの王名Kujula Kadphises、Vima Taku、Vima Kadphisesにある「子音の連続」df, kt (consonant clusters)は元々バクトリア語にはない。一方、Tukharistanという名称はエフタル時代、6世紀の交になってはじめて検証される名前で、明らかにトハロイ(Skt. Tukhara)に由来し、鳩摩羅什はTukharaを月氏と訳している」。上の下線部はいかなる漢文資料にも認められない記事である。もともとかれは大月氏クシャーン同一説の信者なのであろう。こう考えないと、df, kt子音群は月氏語だということにはならない。しかしクシャーンが使っていたバクトリア語がクシャーン本来の言語でなくてもよい。クシャーンの本来の言語はバクトリア語以外であって、だからクシャーンは大月氏だというのであろう。本来の言語を忘れて地域共通の言語に変わってしまう例もある。カーブルにいたザーヒルシャーを始めとする旧アフガニスタン国の王族はPashtu語を本来話すべきパシュトゥン族だが、かれらはカーブル在住のタジクやハザラ同様、ダリー語しか話せなかった。また、鳩摩羅什がTukharaを月氏と訳しているのは仏典の訳語の問題である。
…『西域記』卷2縛喝国に、肆葉護可汗は葉護可汗の子と説明するところから、統葉護可汗の子と考えられる。すると、唐代に記録される咥力特勤、すなわち乙毘鉢羅肆葉護可汗だということになる。莫賀咄侯屈利侯毘可汗が甥の統葉護を貞観2年4月から8月の間に暗殺して大可汗を自称すると、かれと統葉護可汗の息子肆葉護可汗との間で紛争となり、貞観4年、後者が金山で屈利侯毘可汗を殺して大可汗となるまで、2年近い内紛は部族間抗争を惹起した。肆葉護可汗には収集能力なく、結局かれは父の根拠地であった千泉地方へ孤騎をもって帰り、貞観6年にそこで死んだ(旧唐書巻194下、通鑑巻193、194参照)。肆葉護可汗は西突厥を混乱に至らしめた張本人であって、そんなかれの時代に玄奘が西突厥の中央アジアを無事に通過できたわけはない。『慈恩伝』が描写するような、大可汗の威勢を肆葉護可汗には到底望めない。なお注意すべきは、バルフのナヴァ=サンガーラーマNava Samgharamaを襲って休止した肆葉護可汗のはなしだ。この話は史書の記録と相容れないどころか、カライェ=ザールにはtaru sadないしはTukhara yaβγuの幕営があって、バルフはその所部であると『慈恩伝』は伝える。それを差し置いて、Tashkent方面にいたはずの肆葉護可汗がバルフを急襲できるとはおもえない。ナヴァ=サンガーラーマを襲うつもりで急死した肆葉護可汗のはなしは、統葉護可汗なきあとの内乱時代、貞観2年から6年までの状況が多分に反映した説話にみえる。『西遊記』の編者弁機が玄奘から受け取った資料にこのはなしがあったとするなら、それは玄奘が帰途に伝え聞いたはずである。
p.383
(58) ワフシュとイシュカーシムとは音として類縁ではないが、ここで思い起こされるのは、いまアム河は上流でアーベ=パンジュAb-e Panj、あるいはダリヤーイェ=パンジュDarya-ye Panjと呼ぶことである。漢代は嬀、『魏書』『大唐西域記』には縛蒭として載っている。これをみなwaχšの音写と普通いうが、縛蒭、縛芻はpanjとは復原できないのであろうか。護澡をワフシュwaχšと呼んで、縛芻もワフシュと読めるのであろうか。音韻学的に不明なものには判じがたい。…またプトレマイオスに出てくるKomedaiとKumedhaが同一の土地であったとしても、休密とKumedhaは別所である。
…
(60) 小谷仲男 1966、389-411頁。活はよく現クンドゥズといわれるが、『慈恩伝』『西域記』にあらわれた活は河の南岸にあるというから、ずっと内陸に位置する現クンドゥズには当たらない。クンドゥズ北西約70キロのカライェ=ザールの宏大なバーラー=ヒッサール遺跡こそアム河の南岸に在り、まさしく活にふさわしい。
(61) ターラカーン南部一帯がTakharと呼ばれる地方であることはあまり知られていないが、Tokharaとの関連で注目すべき地名である。
p.384
(72) 『漢書』における『史記』の組み替えについてはまだある。『史記』大夏が「其東南有身毒国」であるのに、大夏を包摂して記述する『漢書』大月氏国は「南与罽賓接」である。おなじヒンドゥークシュ北麓の地域からみて、かたや身毒、かたや罽賓とはなんなのか。ヒンドゥークシュの東南が身毒、インドだといえば、それにはちがいないが、張騫が大夏で四川の竹杖をみて、南まわりで大月氏と通じうると思った程度が、当時のインド理解である。ここでは大夏東南とはヒンドゥークシュ山脈の東南であって、そこがスィンドShindhuだというのは、名の起こりのスィンド(現インダス)河方面をいったにちがいない。カーブル河下流域からインダス東方といった、つまりガンダーラから精々パンジャーブの一部を指している。上述のとおり大夏を含む大月氏国の東南も身毒のはずである。しかし『漢書』はそれを東南とせずに南といい、身毒といわず、罽賓としたのはなぜか。ヒンドゥークシュの南はカーブル河流域である。『漢書』が東に寄った南ではなく、「南」としたのは、カーブル河流域でも上流であるカーピシーを指そうとしたからである。この認識は、大月氏国としての方位が『史記』時代の知識ではなく、『漢書』にはじめて出た情報による証拠である。これは張騫帰国以来大月氏方面に入った使者が将来した情報や、前漢宣帝代に烏塁城に設置した西域都護府が入手した情報のはずである。ヒンドゥークシュ南のカーブル河流域は、山脈横断路のどれが選択せられるかで、東のガンダーラが交通の要衝になるか、西のカーピシーがそうなるか、決まる。両伝の、身毒と罽賓はこの情勢の反照である。
p.385
(88) ラバタク碑文の血脈がそのまま王統であるかどうかは明らかでない。名前の後ろに付くshaoは単なる敬称で、王位なら貨幣銘のようにshaonanoshaoであるはずだとフュスマンは考える(Fussman 1998, 571-651)。
p.386
(105) 桑山正進2004(17頁上段)において私は、タキシラの建築の編年を石積み法から試み、半切石積み建築にはカニシカ貨幣が伴出するが、直前の小ダイアパー石積み建築には伴出しないこと、また後者には西暦70年代中期の碑銘が集中することを指摘した。よってカニシカは70年代よりかなり遅い人と見て、カニシカ二世紀初頭説がよいと思った。しかし、いま再考するに、カニシカが直前の建築期である小ダイアパー時代に遡ることはないとはいえないのである。カニシカがその時期に遡ってもなんら問題がないばかりか、むしろ78年説にとっては助けである。私はしたがって前論を恥じてこのたびの結論に前論を整合させておく。
…
漢代には、翕は翕国の侯をあらわすために「翕侯」がつかわれ、一方yaβγuを写すには翖侯が使われ、二者の使用は明確に区別された。
p.392
滑(『梁書』滑国伝)、活国(『西域記』・『慈恩伝』)、活路(両唐書地理志)、拔底延、『隋書』『北史』の悒怛国都城をすべてつないでGorgo(Procopius)、クンドゥズ(=スルハーブ)流域のGhorにあてて冬営地とし、夏営地を呬摩呾羅(『西域伝』・『慈恩伝』)としてファイザーバード西方においた。…内田吟風(1972、96-101、105)は、『大平寰宇記』に「薄提はいま薄底延と名づける」とあるのを引き、拔底延と同一城だとし、阿緩城、アラブ地理書のWarwalizやアルメニア史書のWaričanと等しく、みなクンドゥズ河北にあったという。
p.396
紇露の紇は中国語にない音声rの入りわたりを示す文字。よって紇露はRuに対し、悉泯健はSiminjan(Samangan)に対応する(水谷1971、38)。いまのルーイーとサマンガーンであり(Minorsky 1970, 338)、フルム河の上流と中流に位置し、同じ川の流域として合成されて不思議乃両地方である。
p.397
鉢鐸創那の東南には淫薄健があった。これはいまジョルムを中心とするコークチャ流域のヤームガーン地方である。それによって鉢鐸創那の位置を想定できよう。
…吐火羅葉護の名を以て貞観19年正月の朝貢以来しげく朝貢していたトハーリスターンのテュルクは、653年に烏�瓠�氵一幺幺土〕波なる人物が吐火羅葉護になったことを唐に報じた(『唐会要』)。…この設置が単に建て前だけにすぎなかったとしても、完璧に各地に割りふられ、整備されたのは、思結部の俟斤都曼が討滅されたのちの661年(竜朔元年)である。
p.398
またタバリーの記すように、クタイバの攻略に対処しようとしたエフタルの主タルハーン=ニザークTarkhan Nizakがバグラーンに兵をかまえたことからも、当地がエフタルにとって要衝だったことを語っている(Minorsky 1970, 338: Frye 1979, XVIII)。…
p.399
両資料はガズニー・バーミヤーン間の所要日数をほぼ一致させているのに、かたやバルフまでが10日、かたや縛底耶までがその倍の20日である。縛底耶はバルフとは異処である。
…薄提は*baxδiであるが、アヴェスター語のバルフである。4、5世紀はバルフはbaxlといわれた(Witzel 1980, 98)。…『大平寰宇記』186吐火羅国に、いつのこととは知れぬが、「薄提城。今、薄底延城と名づく。国の北に在り」と。…
…だから、縛底耶と『魏書』薄提とは別処だということ、そうして縛底耶・縛底野が同音異記、薄提＝薄提延＝薄底延もそれと同じ原音を写したとすれば、各地にそういった名称の城邑があったことになる。すなわち、これらは普通名詞である。
p.400
拔底延城は「蓋王舎城也」という。薄提、薄底延、縛底耶、そしてこれらと拔底延とがみな同一原音を写したと仮定すると、それは王居のある町を土地の人が指す普通名詞の呼称であったろう。
p.401
玄奘が縛喝国都を小王舎城と記したのも(『西域記』)、ラージャグリハとかエフタル国の拔底延城に対していったというよりも、テュルクにとってそこが活につぐ意味をもっていたからだとも考えられるし、そうではなく、いまカーブルの東南にカーブルとは何ら関係のない小邑Khord Kabulが存在するようなもので、大小とか主副とかの関係から小王舎城をみることは全く無意味だともいえるのである。カーブル周辺の人はカーブルをいまShahrとよぶ。
…エフタルは太汗(Tarkhan？)が統括し、テュルクは吐火羅葉護が統括して、スルハーブの中流下流とによりながら牧民としてのテリトリーを分かって共存した。…『唐会要』99・『唐書』西域伝・『冊府元亀』966継襲1は骨咄禄達度が吐火羅葉護となったことを伝えるとともに、『冊府元亀』964封冊2はかれを吐火羅葉護挹怛王と認めている。…いわゆるNapki(npky[Bivar 1983, 215], nycky[Frye 1979, 116], Nspk[Gobl 1967, 25])から、Tarkhan Nizakに至る編年問題、『唐書』にみえる太汗との関係などはその一端である。
p.402
(1) 薄提b'ak d'iei(『魏書』、『西蕃記』、『大平寰宇記』) これが[Bhakdhi]のような発音を写し、言語の*baxδ(アヴェスタ語baxδi-参照)を表記したものと考えられることについてはWitzel 1980を参照のこと。
(2) 薄底延b'ak tiei ian(『大平寰宇記』) 並母(i.e. b'-)の字はS.では、Skt.のbh・b及びvを音写するために用いられる[跋(b'uat)禄迦Skt. bharuka-(Luders 1922, 258; 但し水谷1971、17-18は異見)、婆(b'ua)羅阿迭多Skt. bala-aditya-、阿湿婆持cf. Skt. asva-jit-]。またこの声母はイラン語の有声摩擦音βを表記するためにも使われる[提那跋cf. Manichaean Parthian, denaβar](Chavannes-Pelliot 1911, 554; 水谷1971、366は異見)。入声の韻尾-kはS.ではSkt.のkあるいはゼロを表わす[至那僕(b'uk)底Skt. cina-bhukti-、索(sak)訶Skt. saha-]。ただし多くの場合、後続の子音の調音点はkのそれに一致する傾向がある。上述の摩尼教文献(M.)でも、この韻尾はイラン語のg(=γ)・x及びゼロを音写している。底はS.ではSkt.のtiの表記に用いられる(左記の例参照)。M.では底が属する斉韻(-iei)の字は、イラン語i、e及びゼロを音写している。一方延はS.では那(na)と結合してSkt. -yana-を表記している[迦多延那Skt. katyayana-]。また漢字によってソグド人の人名を音写した資料では延はソグド語の-yanを写している(Yoshida 1984, 149)。以上を総合すると、薄底延は*b/βa(k/x/γ)t(i/e)yanのような発音を写していたものと考えられる(bβのように文字を上下に重ねたのは、そのうちどちらの読みも可能であることを、括弧はその中の要素が必ずしも読まれる必要がないことを示す)。もしこれが東イラン語の地名であれば、初頭には摩擦音βを推定する方がより適切であろう。
(3) 縛底野b'iwak tiei ia(『唐書』石汗那伝)・縛底耶b'iwak tiei ia(『往五天竺国伝』) 縛の声母は軽唇音であり、この声母の字はもっぱらSkt.のvを写すために用いられている[時縛迦Skt. jivaka-]。従ってこの時期に濁音の無声化が十分進んでいなければ、この声母はイラン語の有声の摩擦音βを表記するものと考えられる。
p.403
M.ではこの声母は無声化し、イラン語のfを写すために用いられている。耶はS.ではSkt.のyaを写すのに使われる[眦那耶Skt. vinaya-、摩訶耶那Skt. mahayana-]。以上を総合すると、縛底野(耶)に対しては、*βa(k/x/γ)t(i/e)yaのような原語が想定されるだろう。
(4) 拔底延b'wat tiei ian(『周書』嚈噠伝) 入声の韻尾tはSkt.のt・d・r及びゼロを表記する[提婆達(d'at)多Skt. devadatta-、遏('at)部多Skt. adbhuta-、達摩Skt. dharma-、戦達羅Skt. candra-]。M.でもほとんど同様でこの韻尾は中世イラン語のd(=δ)・l・r及びゼロを表記する。ゆえに拔底延からは*b/βa(t/d/r/l)t(i/e)yanが推定される。…
…
(5) 遏換*atγuan(『旧唐書』地理志)・阿緩*aγuan(『唐書』地理志等) 匣母の合口一等字でγua-と再構されるものは、S.ではSkt.の音写に用いられていない(水谷1958、60-90)。イラン語を表記する場合にはwaに対応している[鞠和(γua)衍那cf. Quwadhiyan]。水谷(1958、61-62)は漢字のγua-とイラン語のwaの対応をいくらか疑っている。しかしM.の資料はこの疑いを払ってくれる。従って遏換に対しては*a(drl)wan、阿緩に対しては*awanのような形が想定されよう。両者がもし同一地名を表記しているのであれば、それは*awanのようなものであったと考えられる。ソグド語''w'n(h)「河(?)」(Sims-Williams 1983, 46)との一致は偶然だろうか？
(6) 活γuat(『西域記』・『慈恩伝』)・活路γuat luo(両唐書地理志) 活に対しては*wa(d/r/l)のような形が想定される。ちなみにM.では活はパルティア語のwaδ「風」を音写している。路及びこれと同音(ただし声調は異なる)の盧はS.ではSkt.のlu/roに対応する[布路沙布邏Skt. purusapura-、阿縛盧枳低湿伐羅Skt. avalokitesvara-]。また路が属する模韻(-uo)の字はM.ではu・oおよびゼロを表記している。入声の韻尾tと後続の来母のlとの結合はしばしば-l/r-の音写に用いられる[阿闍多設咄(tuət)路Skt. ajatasatru-]。従って活路に対しては*wal/r(u/o)のような形が想定されよう。しかも路が付加されている点を考慮すれば、語末の母音が読まれていた可能性が高い。
(7) 滑γuat(『梁書』) 黠韻(-at)の字はS.ではSkt.のaを写している[薩裒殺(sat)地(Skt. sarpa-ausadhi-、婆羅絶(女黠反nat)斯Skt. baranasi]。M.ではこの韻に属する字は見出されない。
p.404
γua-が上述のγua-と同様イラン語のwaを写しえたかどうかは今のところ知りえない。S.では匣母の字(γua-を除く)は、イラン語の有声摩擦音γを写すために用いられていることを考慮して(水谷1958、60-90)、*(γ)wa(d/r/l)のような原語を滑に対して想定しておくことにする。
p.410
それは、バルフ東方のフルムより更に東に限定され、バルフ(Balkh)もフルム(Khulm)もトハーリスターンではないのである。フルムは真に興味深い町で、今の町の屋根付きバーザールの天井に、明の赤絵の小皿が嵌入されてあることもさりながら、フルムと西のマザーリ=シャリーフ(Mazar-e Sharif)間、あるいは東のクンドゥズ(kunduz)間は、いわばダシュトばかりでなんにもない。そうすると『フドゥード』にいうトハーリスターンとは、ロバタク(Robatak)峠の東方、つまりスルフアーブ(Surkhab)河から東だといっているのに等しい。
p.411
しかし、范陽はバーミヤーン(Bamiyan)の音写であろうが、バーミヤーン地方をトハーラ東部とみるわけにはいかない。
p.414
呾蜜から東へ、赤顎衍那(Chaganian)、忽露摩(Akharun)、愉漫(Shuman)、鞠和衍那(Kobadiyan)、鑊沙(Wakhsh)、珂咄羅(Khuttal)と並び、珂咄羅の東側がアムの屈曲地帯となり、拘謎陀(Kumedh)は屈曲地帯の北から東にかけてで、南にロウシャン(Rowshan)地方と、更に南が尸棄尼(シグナーンShighnan)とである。…
…達摩悉鉄帝(Dar-e Mastit)、鉢鐸創那(バダフシャーン)、淫薄健(ヤムガーン)、屈浪拏(Kuran)、呬摩呾羅(Dara-ye Im)、鉢利曷(Barigh)、訖栗瑟摩(Kishm)、曷羅胡(Ragh)、阿利尼(Alini)、瞢健(Munjan)、活(War)、闊悉多(Khost)、安呾邏縛(Andarab)、縛伽浪(Baghlan)、忽露瑟泯健(Rui Shimingan/Samangan)、忽懍(フルム)、縛喝(バルフ)、鋭秣陀、胡寔健、呾邏健とバルフ南の掲職国である。
p.416
トハーリスターンは東部がパミールに接近し、バダフシャーンはシェワShewa湖畔が夏の移牧に適し、牧民の産品を冬営に向かう移動中売買するに適した町邑にも富む(Shiwaと書いてシェワと発音する。ガルディーズと書いてガルデーズと言うがごとし。(Adamec 1972: 162-163)をみよ。(松井2011: 40)は誤り)。
p.419
一方、現地ではクシャーンが消滅すれば、トハーラの名を語り継ぐ意味も義理もなく、10世紀までトハーラは元来の地名となってアフガニスタン北東部に残り、ターラカーン(Taloqan)一帯にはいまもタハール(Takhar)あるいはトハールとの地方があるわけである(Adamec 1972: 175-176)。
■“働く”とは何か、“仕事”とは何か、そして“平和”とは？ 映画『医師 中村哲の仕事・働くということ』を各地で上映
(OVO [オーヴォ] - 11月26日 08:20)
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複雑化する社会において、仕事のありようも変化を免れない。より細分化されていく労働のなかで、「エッセンシャルワーカー」や「ブルシットジョブ」という言葉が生まれるなど、仕事の本来的価値とその対価との正しい関係性にも関心が生まれてきた。
「己が何のために生きているかと問うことは徒労である。人は人のために働いて支え合い、人のために死ぬ。そこに生じる喜怒哀楽に翻弄されながらも、結局はそれ以上でもそれ以下でもない」――アフガニスタンとパキスタンで、病や戦乱、そして干ばつに苦しむ人々のために35年にわたり活動を続けた中村哲医師の言葉である。
映画『医師 中村哲の仕事・働くということ』（製作：日本電波ニュース社/47分）が東京都世田谷区、西東京市、調布市などで上映される。
1984年に医療支援を開始し、干ばつ対策用の用水路建設、農村復興へと活動を広げた中村医師。まず現地の言葉を覚え、現地の人々との対話を通じ、信頼を重ねていく。
「私たちに確固とした援助哲学があるわけではないが唯一譲れぬ一線は“現地の人々の立場に立ち、現地の文化や価値観を尊重し、現地のために働くこと”である」。
用水路建設では自ら設計図を引き、重機を運転し、泥にまみれて一緒に作業する。その作業には貧しさゆえにタリバンに参加していた農民も参加していた。
荒れ果てた大地は蘇り、農作物は実り、65万人の生活を支えている。親子で収穫し、家族で食事をする風景は眩しい。中村医師はいう「これは人間の仕事である」と。
同映画は、11月27日（日）午後3時から世田谷区の松沢教会礼拝堂（アフタートークは松沢幼稚園理事長・今関公雄氏）、11月28日（月）午後2時から世田谷区北沢タウンホール（谷津賢二カメラマン）、11月30日（水）午前10時から世田谷区北沢タウンホール（城南信用金庫名誉顧問・吉原毅氏）、12月2日（金）午前10時から世田谷区成城ホール（世田谷区長・保坂展人氏）、12月8日（木）午前10時より西東京市・保谷こもれび小ホール（東京外国語大学名誉教授・西谷修氏）で上映される。各30分前受け付け・開場。
来年1月14日（土）午前10時から山梨市民会館、1月15日（日）午前10時から調布市文化会館たづくり、2月11日（土・祝）午前に国分寺市いずみホールでも上映される予定。
いずれも参加費が必要となる。問い合わせ先はワーカーズコープ東京三多摩山梨（042-649-8801）。映画の情報は公式Facebookでも確認できる。http://ur0.wor k/DRvl
すでに栃木県の那須中学校での上映実績があるが、「学校でのさらなる上映も企画している。また議員の勉強会でも使いたい」（ワーカーズコープ）という。
この映画は、「労働者協同組合法」が成立したことを記念して作られた作品だ。ワーカーズコープ（日本労働者協同組合）はその産声を上げた時から“失業・貧乏・戦争なくせ”をスローガンとして活動してきた。発足当時から雇う、雇われるという関係でなく、働く一人一人が出資して経営にも参加し、福祉や子育て、公共サービスといった社会に役立つ仕事に取組み、今年10月に施行された同法のもとでの新しい働き方として注目されている。
そのワーカーズコープが中村医師の生き方、働き方に強く共鳴し21年の歳月をかけて中村医師を記録してきた日本電波ニュース社（東京）に依頼し、“働くこと”と“仕事観”に焦点を当てて作られたのがこの作品である。
同社の谷津賢二カメラマンは21年間にわたってアフガニスタンでの中村哲医師の活動を撮影し続けた。谷津氏が取材を始めたのは1998年6月で、最後が2019年5月。アフガニスタンに25回渡り、現地滞在日数はおよそ450日。約1,000時間の映像が残った。
「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る アフガンとの約束」（中村哲・澤地久枝＝聞き手/岩波現代文庫）によると、中村医師は1946年生まれ。84年にパキスタンのペシャワールに赴任、ハンセン病治療やアフガン難民の診療に従事した。PMS（平和医療団・日本）総院長およびペシャワール会現地代表として、アフガニスタンにおける復興事業の先頭に立つ。2003年マグサイサイ賞受賞。2019年12月4日、アフガンで凶弾に倒れ死去。
「ウクライナ、ミャンマー、シリア･･･世界は不安に覆われ、無この民の命が理不尽に奪われ続けている今だからこそ、この映画を全国に届けることを私たちは願っています」（ワーカーズコープ）。
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