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2022年01月30日12:19

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読了2冊 / 川瀬七緒

川瀬七緒さん。
初めて読んだ「ヴィンテージガール ― 仕立屋探偵桐ケ谷京介」が
かなり面白かったので、
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1981386997&owner_id=3102427
追いかけてみた。



「よろずのことに気をつけよ」(2011年8月)
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川瀬さんのデビュー作にして、第57回江戸川乱歩賞受賞作。

被害者は呪い殺されたのか?!
謎が謎を呼ぶ、呪術ミステリーの快作。
変死体のそばで見つかった「呪術符」の意味は?
呪いと殺人の謎に文化人類学者が挑む!

「桐ケ谷京介」は、美術解剖学なる服飾の深奥に精通する人間
という設定だったが、
そういう、小説の切り口の原点は、ココにあったのかぁ?!

主人公「仲澤大輔」は、とある大学の文化人類学の非常勤講師。
ということで、微々たる報酬で暮らす彼は
中野の、廃屋のようなあばら家に住んでいる。
そこに突然「砂倉真由」が訪ねてきた。
祖父が惨殺され、現場の床下に呪術符が!
その意味を知りたくて民俗学の高名な教授を頼ったら、
それなら仲澤が最適、と紹介されたと言う。
その「呪術符」の禍々しさ!仲澤は震えた!!
こうして、仲澤は真由を助けて、というよりは
その呪術符の背景への興味に抗いきれず、
社会の奥底に潜みながら今も蠢く「呪い」の世界に踏み込んで行く。

表題となっている「呪文」の元らしい祈禱念仏、
   不離御願、あたご様
   登りてやしろを拝すれば
   一間四面のお堂ある、扇垂木に茅の屋根
   桐祭壇をば拝すれば、いざなみ神がおわします
   西へ向いては雨の宮
   東へ向いては家難避け
   北へ向いてはみな黙す
   南へ向いてはみな氏子
   三日四日に雨なくば、よろずのことに気をつけよ
やら、神の鳥「鶴」を生贄に使う呪術…
仲澤の、同類の友人たちの助けも借りて
そんな、日本各地に見つかる手がかりを結び、
最後に2人が行きついたのは…
と… ここまでグイグイ読まされるも、
結末はもうひとつだったかなぁ〜?(笑)
ミステリーをそれまでのドキドキを継続させて終わらせるのって
本当に!難しいのね〜
ま、処女作だと思えば立派なもんだったかも。(上から目線失礼!)
なんたって乱歩賞だし!

しかし、超マニアックな、呪術関連の薀蓄の展開が見事!
川瀬さん、何か一点に絞って深く調べていくの得意なのねぇ〜〜。
本当に面白い!興味深い!!





「革命テーラー」(「テーラー伊三郎」2017年12月改題)
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こちらは、ミステリー要素皆無の青春&凄春小説。
楽しくワクワク、イッキに読み上げた。

舞台は福島の、中途半端に田舎な町。
主人公は、とんでもないキラキラネームをつけられた男子高校生
「津田 海色(アクアマリン)」通称アクア。
彼の母はシングルマザーの漫画家。
詳細に時代考証を重ねた、ブルボン朝が舞台の「エロ漫画」を
描いていて、それがそこそこ売れている。
そんなわけで、息子のアクアは
きょくりょく目立たぬよう息を潜めて暮らしていた。(←過去形)

しかし! ある朝!!
さびれた商店街の一角「テーラー伊三郎」のショーウインドウに
18世紀最盛期の物としか思えない見事な「コルセット」が
飾られているのを見てしまった!!!

女の下着!と騒ぐ人々を尻目に
アクアは、漫画の資料収集のため調べた、
パリ「ガリエラ服飾美術館」の写真集掲載作品とも見まごう
その完成度に驚愕した!(こんなのかな?↓)
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そこに現れた製作者「鈴村伊三郎」に、アクアがつい
「コール・パレネ ですよね?これ」と声を掛けたことをきっかけに
アクアと伊三郎爺さんとの不思議な関係が生まれ、
それが、少しずつ周囲を巻き込み、だんだん大きな渦となる。

伊三郎作のコルセットは
かつて、ファッションリーダーだった婆さんたちの
おしゃれ心に火を点けた。
おまけに、爺さんの作る本当に身体に合わせたコルセットは
骨粗鬆症で腰椎圧迫骨折した身体を完璧にサポートしてくれるのだ!
婆さんたちは彼女らの人脈や知識を結集して
爺さんをフォローしていき、
コルセットは下着の域を越え、人に魅せたい作品(↓こんなの?)
に仕上がっていく。
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婆さんたちは、第二の青春=凄春を謳歌し始めたのだ。
そしてそれが、爺さん達に伝染し
瀕死の町の再生への足掛かりになっていく。

と書くと、なんだかありきたりな
老人と少年の暖かい交流の物語になってしまいそうだが
川瀬さんの小説はひと味もふた味も違う。
まず、登場するジジババがみなクセが強〜〜い!
かつ、超マニアックな特技を持っている。
それは、アクアの友人「明日香」や「隼人」も同様だ。
そしてまた、最後まで合い入れないヤツラは存在し
今後どんな反撃をしてくるかという不安要素も残して
とりあえず話は終わる。
続きは読者の想像?妄想?のままに、というところである。

文頭に書いた仕立屋探偵が、
服飾と人体の密接な関係について力説しているが、
本作がその原点だったらしい。
そしてそれこそ、
文化服装学院の服飾専攻を卒業し、
今も子供服のデザイナーをされている作者、川瀬七緒さんが
常々思っている事だろう。
で、仕立屋探偵や本作の登場人物たちの口から溢れ出す
服飾に関する本当に興味深い知識は、
作者が常々語りたいことなのだろうと思う。
こういう深く深く掘り下げられた知識って、私はいくらでも聞いていられるから
これからもますます、「カタッテ」頂きたいなぁ〜。

さて次は、
マニアックのベクトルが「昆虫」に向いた作品
「法医昆虫学捜査官」シリーズ7冊イッキ!の予定なのだけれど、
心底虫嫌いの私。付いて行けるかな〜?げっそりあせあせ(飛び散る汗)

最後に、
「仕立屋探偵 桐ヶ谷京介2」が現在、小説現代に連載中との事。
単行本になる日が待ち遠しい!
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