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2021年11月28日05:39

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寄生者と宿主、捕食者と被捕食者の間に繰り広げられる「進化の軍拡競争」(後編):平和共存の中に現れた第3の寄生者を排除する進化

 今回、東京農工大学の仲井まどか教授らの国際研究チームは、1つの昆虫(イモムシ)に寄生する2つの種(寄生蜂と昆虫ポックスウイルス=EPV)との三者の絡み合う進化の軍拡競争の実態を解き明かし、成果をアメリカの科学週刊誌『Science』7月30日号に発表し、注目を集めた(図)。

◎平和共存の昆虫とウイルスの前に現れた寄生蜂という新たな大敵
 昆虫ポックスウイルスは、その名のとおり昆虫だけに感染する。ただ感染歴は長かったらしく、宿主の昆虫にはさほどの悪さはしない。つまり宿主との間に、うまい折り合いをつけて平和共存したわけだ。
 昆虫ポックスウイルスにとって、幼虫のイモムシはできるだけ生き長らえ、成虫になって次世代に世代をつなげてほしい。そうすれば、ウイルスも世代を重ねられ、生き続けることができるからだ。
 ところがそこに第3の、しかし大切な宿主に致命的な寄生者が現れた。幼虫に卵を産み付け、幼虫の肉を食べて成長し、最終的に殺してしまう寄生蜂だ。
 ウイルスに寄生される昆虫の方も、多少は悪さをすることはあるかもしれないが、命までは奪わないウイルスは、許容できる。
 その場合、寄生されるイモムシにしてみれば、寄生蜂の幼虫を殺した方が望ましい。

◎殺蜂蛋白質遺伝子が水平伝播して寄生蜂を殺すように進化
 むろん昆虫とポックスウイルスとの間に談合があったわけではない。それが、進化というものだが、ポックスウイルスの遺伝子に、寄生蜂を殺す毒を産生するコードが備わっていた。
 仲井氏(写真=左から3人目)らのグループは、ポックスウイルスの居るイモムシでは、なぜか寄生蜂が産卵しても、卵が育たないという原因を探していた。その原因は、イモムシに含まれる殺蜂蛋白質であることを突き止めた。
 驚くべきは、その殺蜂蛋白質を作る遺伝子コードは、イモムシに寄生するポックスウイルスのゲノムにコードされていたのだ。
 さらに調べると、その遺伝子は、ウイルスと昆虫との間や、異なるウイルスとの間で遺伝子水平伝播していた。複数種のウイルスと昆虫に、その殺蜂コードが広く分布していたのだ。

◎排除された寄生蜂はいずれは反撃の進化をするはず
 つまり寄生蜂に寄生される昆虫イモムシと、その中で「保育室」を提供してもらっていたウイルスは、「共謀して」殺蜂遺伝子を取り込み、寄生蜂を排除していたのだ。
 だが、寄生蜂がこのまま黙っているはずは絶対ない。完全に昆虫界から排除されれば、自分の遺伝子を次世代に伝えられず、絶滅してしまうから、そのうち必ず、それを打ち破る手段を進化させるだろう。
 それが何かは分からないが、有毒な殺蜂蛋白質に抵抗性を示す個体が現れ、それが選択され、新たな個体は再びイモムシに寄生を成功するようになるだろう。
 まさに「進化の軍拡競争」真っ只中である。

注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
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昨年の今日の日記:「まるで2軍相手のように読売巨人を粉砕したパの王者ソフトバンク、2020日本シリーズが見せた両リーグの超えられない実力差」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202011280000/

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